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研究成果物



 

(8) 東シナ海における長江経由の汚染・汚濁物質の動態と生態系評価に関する研究


〔区分名〕環境-地球推進 D-1
〔研究課題コード〕9901BA268
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕渡辺正孝(東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理プロジェクトグループ)・内山裕夫・高松武次郎・越川昌美・渡邊 信・広木幹也・河地正伸・村上正吾・徐 開欽・越川 海・牧 秀明・張継群
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕経済発展の著しい長江流域から東シナ海に流入する大量の汚濁・汚染物質の海洋生態系への影響が危惧されている。豊富な水質資源に恵まれた東シナ海は,我が国の漁業資源確保にとって重要であり,生物多様性も豊富である。また,今後,長江流域の経済発展に伴う流域の土地利用変化あるいは三峡ダムの完成は,当該海域に流入する淡水量,流砂量,栄養塩類,農薬等有害化学物質などの汚染・汚濁負荷の量・質に大きな変化を与えると考えられ,本研究では流入量の推定法の開発を目的とした。
〔内容および成果〕
 1997・98年の水質調査は,東シナ海に流入する汚濁負荷を精度よく推定するためには,長江河口域に位置する上海市からの汚濁負荷の汚濁物質濃度とその排水量の把握が必要不可欠であることを示していた。従って,本研究では上海の上流に位置し,上海からの汚濁負荷の影響がない瀏河地点での汚濁負荷量と上海市からの汚濁負荷量の推定値の合計値をもって東シナ海への流入負荷推定量Lと仮定し,1998・99年の調査時における長江河口域最下流点(上海からの汚濁負荷の影響を受けた後)呉松口地点での汚濁負荷量Lbと比較し,その有効性を検討した。
(1)東シナ海への長江経由の汚濁負荷量推定
 長江の流量Qと汚濁負荷量との関係は,これまでの研究により次のような相関式で表示可能である。
  SS=1.7632x10−4Q1.3705
  COD= 0.7487 Q0.1089
  DIN= 0.1501 Q0.1708
  TP=1.5869 x 10−7 Q1.3705+0.0115
  TN=0.2259 Q0.1708−0.2132
ここに,SS,COD,DIN,TP,TNの単位はmg/l(g/m3),Qの単位は(m3/s)である。
 上式を用いると,上海上流の瀏河地点での汚濁負荷量Laが推定される。
(2)上海市からの汚濁負荷の推定
 上海市からの汚濁負荷量は,工業廃水量Wiと生活廃水量Wdの排出量,濃度と除去率を考慮した次式により推定される。
  Ls=Wi・{Cii・(1−Ri)+Cio・Ri}
   +Wd・{Cdi・(1−Rd)+Cdo・Rd}
 ここに,Wi:工業廃水量(ton),Cri:工業廃水の原水濃度(mg/l),Cio:工業廃水の一次処理水濃度(mg/l),Ri:工業廃水の処理率,Wd:生活廃水量(ton),Cdi:生活廃水の原水濃度(mg/l),Cdo:生活廃水の一次処理水濃度(mg/l),Rd:生活廃水の処理率である。
 計算に当たって,上海市の1998年と1999年の工業排水と生活排水の排出量とその一次処理率,中国での平均都市生活廃水濃度,一次処理後の主な汚濁物質(BOD,CODMn,NH4-N,TN,TP)排出濃度及び除去率についての公表データを用いた。また,工業廃水の原水及び一次処理水の濃度は業種などによって大きく変化するが,ここでは平均的に都市生活汚水と同じ値を仮定した。
(3)計算結果
 上海市から一日当り排出するCOD,TN,TPの負荷量は,98年では448.0,238.2,26.5ton,99年では437.0,232.1,25.8tonと推定された。CODの値は上海市政府が発表したCODCr排出量(98年,年間36.54億トン,99年34.98億トン)の一日当たりのCODMn換算値で約334トン,319トンの値より25%,27%高い値であったものの,ほぼ妥当な値と考えられる。瀏河地点での汚濁負荷量Laと上海からの汚濁負荷量Lsの推定値と,呉松口地点での汚濁負荷量の観測値を比較した結果,計算値と観測値果は98年と99年のCOD,TN,TPいずれの結果についても,5〜22%の誤差範囲であった。従って,流量と汚濁負荷量との相関式と大都市からの負荷量を推定モデルを連立させることで,長江での汚濁負荷量を推定することが可能と考えられる。
〔備 考〕
外国共同研究機関:劉紀遠・庄大方(中国科学院地理科学与資源研究所)・昊秋華(中国科学院遙感応用研究所)・徐保華・翁立達(中国水利部長江水利委員会)・陳中原(華東師範大学環境学院)


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