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研究成果物



 

(7) 湖沼における有機炭素の物質収支および機能・影響の評価に関する研究


〔区分名〕特別研究
〔研究課題コード〕0103AG112
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕今井章雄(水土壌圏環境研究領域)・松重一夫・木幡邦男・冨岡典子・林 誠二・野原精一・佐野友春
〔期 間〕平成13〜15年度(2001〜2003年)
〔目 的〕琵琶湖北湖で注目された湖水中の難分解性溶存COD濃度の漸増現象は,その後,十和田湖,霞ヶ浦,印旛沼,さらに内湾の富山湾と遍在的な広がりを見せている。湖沼での溶存有機物(DOM)濃度の上昇は,植物プランクトン増殖・種組成を含む湖沼生態系の変化,水道水源水としての湖沼水の健康リスク(トリハロメタン等)上昇および異臭味等,湖沼環境に甚大な影響を及ぼすと考えられる。湖沼環境保全上,緊急に,湖水中の難分解性DOMの漸増メカニズムを定量的に解明する必要がある。
 現在の湖沼有機物指標である過マンガン酸カリウム法COD(CODMn)は,加算性がないという物質収支を取る上で致命的な問題を抱えている。従って,発生源対策をより実効あるものにするには,物質収支の取れる有機物指標,すなわち有機炭素(TOC)を採用した物質収支により湖水中の難分解性DOMの主要発生源を定量的に特定することが重要かつ急務である。
 湖水溶存有機物(DOM)は不均質な混合体であり,その複雑さの故に依然不明な部分が多い。湖水DOMの特性・起源に関する科学的知見の充実・蓄積が重要である。特に,主要な湖内部生産DOMである底泥および藻類由来DOMの特性に関する情報が圧倒的に不足しており,流域発生源対策を不明瞭なものとする原因となっている。湖における有機炭素収支を取る際に,湖内部生産DOMの特性・起源に関する知見は必須である。藻類由来DOMは藻類種やその増殖状態によりその生産量や生分解性が異なる。従って,藻類由来DOMを評価する際に,藻類等の微生物群集構造および増殖状態に関する情報が必要となる。
 藻類由来DOMが藻類種組成に依存するのとは反対に,湖水DOM(特にフミン物質)は微量金属や栄養塩の生物利用性を制御する機能を持ち,藻類の増殖・種組成に大きな影響を及ぼすと報告されている。すなわち,湖水DOMと湖沼の藻類は複雑な相互関係にある。湖沼環境は,近年,急激に変化しており,藻類の種組成変化を含む生態系の変化が著しい。微量金属や栄養塩の生物利用性という観点から,湖水DOMの藻類の増殖・種組成に及ぼす影響を評価する必要がある。
 本研究は,有機炭素(TOC)を有機物指標として富栄養湖,霞ヶ浦における有機物収支をとることを目的とするマクロ的(フレーム構築的,課題1)研究と湖水溶存有機物(DOM)の特性・機能評価,湖沼微生物群集の解析等のミクロ的(知見探索的,課題2)研究に大別される。本研究は,前者において湖沼問題の枠組みを構築し,後者において新たな知見を得ることにより,湖沼における難分解性DOMの主要発生源を有機炭素等の物質収支により定量的に明らかにすることを目指す。
〔内容および成果〕
課題1 湖における有機炭素収支に関する研究
 [モデルの構築]霞ヶ浦湖内モデルとして,Princeton-Ocean-Modelを基本モデルとする3次元流動モデルを構築した。霞ヶ浦全体を水平方向500mメッシュに区分けし,鉛直方向5層に分割して水温および流動変化を計算した。流域発生源モデルとしては,恋瀬川流域(石岡市,八郷町,千代田町,新治村)を対象として地理情報(GIS)データベースの作成に着手した。
[湖水DOMの動態・特性]霞ヶ浦湖心におけるDOM, フミン物質,親水性酸および難分解性DOM, フミン物質,親水性酸の1997-2000年の4年間に渡る動態を明らかにした。難分解性DOMは1997年には増大傾向にあったが,1998年には減少あるいは横這い傾向を示し,さらに1999年には再び漸増傾向に転じた。当該期間における難分解性DOMの増減(動態)は,難分解性フミン物質ではなく,主に難分解性親水性酸の寄与によることが明らかとなった。
課題2 湖水溶存有機物(DOM)の特性・起源と機能・影響に関する研究
 [溶存有機物(DOM)の藻類の増殖・種組成に及ぼす影響]臨湖実験施設取水塔から採取した霞ヶ浦湖水を用いた競合的吸着濃縮ボルタンメトリーの予備実験で,湖水DOMと鉄の錯化反応における条件安定度定数と錯化容量を決定した(各々1025.1 M−1,71.9nM)。得られた条件安定度定数は,前特研で推算された湖水フルボ酸と鉄の錯化反応に対する安定度定数の値とほぼ一致した(1025 M−1)。
 [湖内部生産DOM量の算定]霞ヶ浦底泥間隙水DOMの深さ方向濃度プロファイルからDOMフラックスを算定した。平均フラックスは1997年で2.6 x 10−3 mgC<CODE NUM=00A5>cm−2<CODE NUM=00A5>day−1, 1998年で9.4 x 10−4 mgC<CODE NUM=00A5>cm−2<CODE NUM=00A5>day−1。湖心付近での簡略化した物質収支の結果,底泥由来DOMの寄与は1997年で平均1.3 mgC<CODE NUM=00A5>L−1, 1998年で0.47 mgC<CODE NUM=00A5>L−1となり,年度によって大きな違いを示した。
 [細菌群集構造の解析]霞ヶ浦での微生物群集構造を明らかにするために,霞ヶ浦の5地点に対して1999年2月から2000年1月の湖水に対して真正細菌を検出するPCRプライマーを用いた変成剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)解析を行った。その結果,細菌群集構造は地点による変化はあまり示さず,季節により大きく変動することが明らかとなった。
 [DOMの特性・起源の評価]下水処理水のDOM励起−蛍光マトリックス(3次元蛍光特性)は,霞ヶ浦湖水や河川水等とは異なり,励起波長490 nm,蛍光波長514 nm付近に特異的な蛍光ピークを有することが確認された。
〔備 考〕


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