(4) 内湾域における底生生態系による物質循環
〔区分名〕経常
〔研究課題コード〕0105AE213
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕木幡邦男(東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理プロジェクトグループ)・中村泰男・牧 秀明・越川 海・樋渡武彦
〔期 間〕平成13〜17年度(2001〜2005年度)
〔目 的〕海底には様々な底生生物が生息している。特に,富栄養化した内湾において,底生生物の生物量が多く,水質浄化や物質循環に大きく影響している。本研究では,現場における一次生産と合わせて解析することで,底生生物が栄養塩や汚濁物質の物質循環にいかに寄与するかを明らかにすることを目的とする。
〔内容および成果〕
前年度までに,底生生物が水質浄化に大きく貢献することを報告してきた。特に,海水をろ過しながら摂食する二枚貝が,海水中の懸濁粒子を除去することに着目してきた。
本年度は,アサリ漁業が盛んに行われている松川浦で,アサリのろ過形態について検討を加えた。松川浦は福島県の北東部にあり,幅80m程度の細い水道部で太平洋と海水交換を行っている浅い海域である。松川浦の中に,ビニールシートで海面を囲い,幅1m,長さ30mの水路を2基製作し,片方の水路にアサリを高密度で移植し,他方からアサリを取り除いて,実際の海域におけるアサリのろ過の様子を調査した。また,ビデオカメラを設置して,アサリの入水管・出水管の開閉に見られるろ過の様子と,潮の流速・懸濁物濃度・有機物濃度などとの関連を調査した。これらの結果から,アサリは一日中,同じようにろ過を行っているのではなく,環境変動により,その入・出水管を開閉していることが明らかになった。松川浦では,引き潮時に流速が大きくなるため,懸濁物質の濃度が高くなる。このようなときはほとんど閉じていた。一方,上げ潮時には,懸濁物濃度の低い海水が満ちてくるため,入・出水管を開けている個体が多く見られた。その開閉の程度をモニター画面上でノギスを用いて定量した結果,入・出水管の開口面積は,特に海水中の懸濁物質濃度と顕著な逆相関の関係にあった。
浅海域における生物の浄化量の評価を行う際に,今までは実験室で得られたろ過速度などを基に浄化量を推算してきた。しかし,本研究で得られた成果から,このような推算を行う際に,現場の環境要因の変動を考慮すべきとの結論が得られた。
〔備 考〕
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