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研究成果物



 

(11) 中性からアルカリ性の湖沼における溶存アルミニウム濃度上昇のメカニズムの解明


〔区分名〕文科-科研費
〔研究課題コード〕0001CD118
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕越川昌美(水土壌圏環境研究領域)
〔期 間〕平成12〜13年度(2000〜2001年度)
〔目 的〕天然水中に高濃度のアルミニウムが溶解すると,水中に棲む魚や藻類,そしてその水を体内に接取した人間にも毒性を示すことが懸念されている。酸性化した土壌や湖沼では,溶存アルミニウム濃度の上昇が報告され,溶けだしたアルミニウムの挙動やその毒性の現れ方が詳しく研究されている。
 最近,中性からアルカリ性である琵琶湖でも,春から夏にかけて表水層の溶存アルミニウム濃度が上昇することがわかってきた。春から夏にかけて琵琶湖でアルミニウムが溶解するメカニズムには,1)pHが7から9に上昇すると,アルミン酸の濃度が上昇する,2)錯生成能をもつ有機物が増加すると,アルミニウムの有機錯体の濃度が上昇する,の二つの可能性がある。アルミン酸のような無機錯体は,アルミニウムの有機錯体と比べて毒性が高い。琵琶湖のような中性からアルカリ性の湖沼において,溶存アルミニウムの濃度を低く保ち,その毒性を抑制するためには,琵琶湖で春から夏にかけて増加するアルミニウムが無機錯体であるか有機錯体であるかを調べ,溶存アルミニウムの濃度上昇のメカニズムを解明することが必要である。
 本研究では,溶存アルミニウム濃度上昇のメカニズムを解明するために「琵琶湖で春から夏にかけて増加する溶存アルミニウムは,無機錯体なのか有機錯体なのか」を判定することを目的として,(1)琵琶湖の溶存アルミニウムの形態別分析法の検討,および(2)実験室に持ち帰った湖水に無機イオン・有機キレート剤を加えて無機錯体・有機錯体の増加を再現する実験を行った。
〔内容および成果〕
 2001年8月9日及び10月14日に,琵琶湖で採水を行った。採水には京都大学生態学研究センターの調査船「はす」を利用した。北湖南湖盆のIe-1地点(水深73m),南湖中央のNb-5地点(水深4m),およびその間の4地点(Kc-3,Lc-4,Lc-3及びMb-3)で表層水を採取した。Ie-1地点では水深0mから72mまで深度を変えて12層から湖水を採取した。
(1)琵琶湖の溶存アルミニウムの形態別分析法の検討
孔径0.4μmのフィルターを通過する溶存アルミニウムを,アルミニウムのヒドロキソ錯体(Alf),アルミニウムの有機錯体(Alorg),アルミニウムのコロイド(Alcol)に分画するために,以下の操作を行った。ルモガリオン法(試水とルモガリオン試薬を反応させたのち,蛍光強度を測定してアルミニウム濃度を求める)で(Alf+Alorg)を定量した。AlorgはHPLC法(試水をカチオン交換カラムで分離したのち,ルモガリオン法を応用したポストカラム法で検出する)で定量した。さらに,ICP-MS法で(Alf+Alorg+Alcol)を定量した。アルミニウムの有機錯体は全く検出されなかった。アルミニウムのコロイドは,8月9日は全く検出されず,10月14日は全溶存アルミニウムの10〜20%を占めた。琵琶湖の表水層で増減する溶存アルミニウムの大部分は,アルミニウムのヒドロキソ錯体(Alf=Al3++Al(OH)2++Al(OH)2++Al(OH)30 + Al(OH)4−)あるいは非常に弱い(HPLC法で検出できない)有機錯体であることが示唆された。
(2)実験室に持ち帰った湖水に無機イオン・有機キレート剤を加えて無機錯体・有機錯体の増加を再現する実験
 8月にIe-1地点の深度60mから採取した湖水(pH7.0)に,少量のNaOHを添加してpH8.0に調整し,1ヵ月間25℃で振とうしたところ,春から夏にかけてpHが上昇する際に,懸濁態アルミニウムから溶存アルミニウムが溶出する反応が再現された。
 琵琶湖湖水から抽出されたフミン物質(今井章雄氏より提供を受けた)を湖水中濃度の約8倍に濃縮して湖水に添加したところ,湖水に溶存するアルミニウムの約50%が有機錯体となった。琵琶湖でアルミニウムの有機錯体が検出されなかった理由は,湖水に溶存する有機物が錯生成能を持たないためではなく,錯生成能を持つ有機物の濃度が低すぎるためと考えられた。
〔備 考〕


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