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研究成果物



 

5.4 湖沼・海域環境の保全に関する研究
東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理プロジェクト
(1) B東シナ海における長江経由の汚染・汚濁物質の動態と生態系影響評価


〔区分名〕重点特別
〔研究課題コード〕0005AA271
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.5 東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理
〔担当者〕渡辺正孝(東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理プロジェクトグループ)・村上正吾・木幡邦男・徐 開欽・越川 海・牧 秀明・張 継群
〔期 間〕平成12〜17年度(2000〜2005年度)
〔目 的〕渤海・東シナ海は世界でも代表的な大陸棚であり,生物生産・生物多様性が高い海域である.長江を中心とした流域の開発により,河川を通じて流入する懸濁物質,栄養塩および有害化学物質等の陸域からの環境負荷の量・質的変化が,海洋生態系機能および生物種多様性に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。一方,長江流域から東シナ海に流入する汚濁負荷の予測手法についての研究は皆無に等しく,本研究では長江経由して,東シナ海に流入する淡水量から汚濁負荷を推定する手法の開発を行った。
〔内容および成果〕
 長江流域の主要観測ステーションで収集された1987・88年の流量と水質(SS,COD,NO2-N,NO3-N,NH4-N)に関するデータベースを構築した。また,栄養塩TPとTNについては,当研究所が1998年と1999年秋に長江本流重慶から上海まで実施した水質調査結果をデータベース化した。
(1)SS,CODおよびDINと流量との相関
 1987年と1988年の水質データから長江下流域(主に武漢から南京まで)の各断面のNO2-N,NO3-NとNH4-N濃度の合計 DIN(溶存態無機窒素)を求め,各断面の平均SS,COD,DINの汚濁負荷量フラックスと流量Qとの相関図を作成した結果,汚濁負荷量Lと流量Qの関係は,
  L=a Qb^t(1)
と表示可能であることが認められた.ここに,L:単位時間の汚濁物質負荷量(g/s),a,b:経験定数,Q:流量(m3/s)である。
(2)TPとSS,TNとDINの相関
 河川におけるTPとSSにはある一定な線形関係があることが知られている.特に長江流域のようなSS濃度の高い河川では,この関係が顕著に表れるものと考えられる。また,TNとDIN間にも線形関係があり,TPとSS,TNとDINとの関係は以下のように書ける。
  TP=m SS+n^t(2)
  TN=j DIN+k^t(3)
ここに,TP,SS,TNとDINはそれぞれの濃度(g/m3)で,m,n,jとkは経験定数である.
(3)汚濁負荷量と流量の相関
 上記の関係式(1),(2)と(3)から,SS,COD,TPとTN濃度は以下の流量の函数で表すことができる.
  SS=a1 Qb1^t(4)
  COD=a2 Qb2^t(5)
  DIN=a3 Qb3^t(6)
  TP=m・a1・Qb1+n^t(7)
  TN=j・a3・Qb3+k^t(8)
 ここに,a1,a2,a3 と b1,b2,b3は定数であり,1987,1988,1997,1998年の汚濁負荷量と流量データベースに基づき決定した結果は,
 a1=1.7632x10−4,a2=0.7487,a3=0.1501,b1=1.3705,b2=0.1089,b3=0.1708,m=1.5869x10−7,n=0.0115,j=0.2259,k=−0.2132,となった。
(4)相関式に基づく汚濁負荷加量の推定
 以上の関係式の妥当性を検証するために,1998年とし1999年秋に調査した瀏河地点での汚濁負荷量を予測,実測値との比較検討を行った.なお,瀏河地点は上海市上流に位置し,上海からの都市排水の影響が少ない地点である。
 1999年の予測値と実測値とを比較すると,SS,TPとTNについてはその差(絶対値)は5%以下とよく一致した。DINについては21.6%,COD濃度は38.5%であった。一方,1998年については,TNで12.9%,DINで14.6%,他の項目については50%程度の誤差が認められた。この原因は,1998年の調査は,20世紀に2番目の大洪水の後に行った観測結果で,水質濃度が比較的低く,また,同一観測地点での濃度分布の不均一性もあったためと考えられる。
 以上の結果から,本研究で得られたSS,TN,TP及びDINと流量の関係は概ね妥当で,大都市域からの排水の影響がなくなった領域での水質濃度を予測することが可能と判断される。
〔備 考〕
外国共同研究機関:劉紀遠・庄大方(中国科学院地理科学・資源研究所)・昊秋華(中国科学院遙感応用研究所)・徐保華・翁立達(中国水利部長江水利委員会)・陳中原(華東師範大学環境学院)


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