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研究成果物



 

(2) A流域環境管理に関する研究


〔区分名〕重点特別
〔研究課題コード〕0105AA270
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.5 東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理プロジェクト
〔担当者〕渡辺正孝(東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理プロジェクトグループ)・村上正吾・林 誠二・中山忠暢・亀山 哲・徐 開欽
〔期 間〕平成13〜17年度(2001〜2005年度)
〔目 的〕中国内陸部の経済発展のため長江・黄河の上流域において西部(内陸)開発に伴って,三峡ダム建設,長江から黄河への導水事業(南水北調)など地球規模での水循環の人為的変化をもたらす事業が進んでいる。この水循環変動が流域生態系,農業生産及び水資源保全に与える影響を予測することが,持続可能な流域の発展を考える上で必要である。本年度は,水資源管理・保全に必須である流域水収支の推定モデルの開発を行った。
〔内容および成果〕
 流域内での水の流動は,降雨が土壌表面に浸透する過程を第一段階として,鉛直方向には土中層に降下浸透し,地下水流を涵養する。流域斜面方向には表面流,土壌層では飽和・不飽和浸透流として流動する。従って,土壌表層での浸透を規定する土壌水分量の推定が先ず必要とされる。一方,土壌層内での水の流動は,基本的に斜面の急勾配線方向に規定されるため,必然的に3次元的に取り扱うことが必要とされる。また,流域斜面から河道への流出水は河川水系を通じて,流域内を移動する。すなわち,流域内の水収支モデルを構成するためには,次の4つのサブモデル,(1)陸面過程モデル,(2)土中水の飽和・不飽和浸透流モデル(Richards方程式),(3)地下水流動モデル,及び(4)河道流のネットワークモデルの数理モデル化が必要である。以下で,それぞれのモデル化の方向と検証結果を提示する。
(1)陸面過程モデル
土壌水分量は被覆植生の状況に大きく依存するため,これを陽に表現しているモデルが必要であり,本研究ではNASAにより開発されたSiB2(Simple Biosphere model 2)を用いることした。SiB2には衛星データ(FPAR及びLAI)から植生状態の季節的変化を空間的・時間的により現実的に表現するようなモジュールが組み込まれており,衛星データとしてはMODISデータを入力条件として北海道苫小牧のフラックスタワー地点での土壌水分量を推定し,実測データと比較した結果,陸面過程モデルとしての精度を検証した。
(2)飽和・不飽和浸透流モデル
 SiB2は植生を2層(キャノピー層,地面),土壌を3層(表層,中間層,最下層)で表現した1次元モデルであり,本研究では植物根が存在する中間層を多層化し,根による吸収などを考慮したRichards式に基づくモデルへの拡張を行うことで根分布の影響を取り入れ,飽和・不飽和浸透現象の再現性を高めたモデルを開発した。
(3)地下水流動モデル
 地下水流動モデルとしては準3次元モデルである地下水モデル(MODFLOW)を採用した。ところで,流域内の水賦存量評価のためには,地下水流動層への涵養量を正確に見積もる必要がある。ここでは地下水モデルの上部境界条件である涵養量を陽に与えるのではなく,(2)のRichards式の解として与えられる土壌層から地下水層への流出成分を未知量とする,2点境界値問題としての定式化を行った。モデルの検証は,北海道の釧路川流域を対象として,降水量と地下水貯留量との再現計算を行い,量的な応答特性については妥当な結果を得た。
(4)河道流ネットワークモデル
 グリッドボックスで区切られる部分流域を斜面での単位とし,そこでの流域内部の陸面過程モデルから得られる地表面からの水分蒸発,土壌層内からの水蒸気輸送及び土壌水分変動に伴う貯水容量の空間分布を考慮した流出モデルを用いて河道への流出量を算定する。得られた流出量を入力とする河道流れの追跡モデルは,河道網kinematic waveとするモデルを開発した。モデルの検証は地下水モデルと同様に,釧路川流域で行った。
 本年度は流域水収支モデルの根幹をなす4つのサブモデルの開発を主に進めた。今後は,統合化の過程でより高精度モデル化を目指す。
〔備 考〕
外国共同研究機関:劉紀遠・庄大方(中国科学院地理科学与資源研究所)・昊秋華(中国科学院遙感応用研究所)・徐保華・翁立達(中国水利部長江水利委員会)・陳中原(中国華東師範大学環境科学院)


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