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研究成果物



 

(3) 東アジア地域の大気汚染物質発生・沈着マトリックス作成と国際共同観測に関する研究


〔区分名〕環境-地球推進 C-1
〔研究課題コード〕9901BA104
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕村野健太郎(大気圏環境研究領域)・畠山史郎・向井人史・酒巻史郎
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕アジア大陸から日本への越境大気汚染の定量化が研究目標である。そのためには大気汚染物質(硫黄酸化物,窒素酸化物,アンモニア,揮発性炭化水素)の発生量マップの作成が必須である。降水,雲物理過程を含む大気汚染物質の発生,輸送,変質,沈着モデルの開発と同時に,このモデルを1度×1度グリッド別の発生・沈着関係(EMEP型発生・沈着関係)にすることが,定量的に越境大気汚染を記述することになる。また中国国内,日本における大気汚染,酸性雨の実体把握と同時に,大気汚染物質の発生,輸送,変質,沈着モデル検証のための大気汚染物質(硫黄酸化物,窒素酸化物,アンモニア,揮発性炭化水素,エアロゾル)の観測データを複数地点で取得する。
〔内容および成果〕
 沖縄本島最北端の辺戸岬において,酸性・酸化性物質の動態解明のために降水・降下物,オゾン及びエアロゾル成分について検討した。本年度の降水・降下物のpHは4.5〜7.1に分布し,年平均値は5.2で前年度(5.4)に比べ僅かに低い値を示した。また,オゾン濃度は1.2〜87ppbvの範囲に分布し,年平均値は38ppbvで前年度(37ppbv)に僅かに高い値を示した。しかし,何れの年平均値の増加も東アジア領域の気象要因との作用が考えられた。例年,沖縄において季節風の影響を受ける秋から春にかけて降水・降下物中の酸性物質及びオゾン濃度が増加することから,主として移動性高気圧の影響を受ける10月から11月にかけてエアロゾル中の硝酸イオンとオゾン濃度との関連を検討した。硝酸イオン及びオゾン濃度にr=0.68(n=45)の相関関係が見られ,東アジア領域からの長距離輸送が考えられた。
 越境汚染把握のために,日本海側に面した福井県の越前岬で冬季に大気汚染物質の短期観測を行った。兵庫県の日本海側に位置する清浄地域である畑上において冬季に集中的に,4段ろ紙法を用いて大気汚染物質分布変化に関する調査を実施した。
 中部山岳地域の八方尾根(標高1850m)と麓の白馬村の(標高830m)の2カ所で降水とガス・エアロゾルを同時に採取し,ウオッシュアウトによる大気から降水への物質の取り込み過程を調査した。観測は2001年6月から7月にかけて行い,5回の降雨を採取した。しかし,降水中のSO42−濃度は約1000m落下する過程で平均0.28mg/L増加し,これらはウオッシュアウトによる取り込みであると考えられた。SO42−の取り込みに対するウオッシュアウトの寄与は平均33%であり,この値は向井らが中国山地で得た0.35とほぼ同じ値であった。SO42−の洗浄比は幾何平均値が415であり,向井らが九州で得た450とほぼ同じ値であった。
 東アジア地域を対象とした長距離大気輸送モデルに投入するための総合的な大気汚染物質発生源インベントリーの開発を行ってきた。本研究は,SO2,NOx,NMVOC,NH3に関する人為発生源・自然発生源からの排出量を十分な精度のグリッド排出量として把握することを課題としており,前年度まで,最大の排出国である中国を主対象として段階的なデータベース構築に取り組んできた。
 NH3に関して中国,台湾,韓国,北朝鮮,モンゴルにおける家畜排泄物由来の排出量,化学肥料の施肥による排出量,バイオマス燃焼による排出量,人の発汗による排出量を推計した。NH3に関しては,既に1990年を対象としたGEIAの全球1度グリッド排出データセットがあるが,本研究では,その後の農業活動の変化を取り入れ1995年における1度グリッド排出データベースを構築した。また,SO2,NOx,NMVOCの人為起源排出に関して,1995年における各国・地域の発生源データベースを構築した。韓国・台湾については,政府推計による排出量を基礎資料としたが,中国についてはエネルギー消費・生産活動に関する政府統計を基礎資料として,これまでに得られている排出係数に関する知見をとりいれた推計を行った。
 これらの研究結果により,以下のような大気汚染物質発生源インベントリーを構築することができた。
 ○対象物質:SO2,NOx,NMVOC,NH3
 ○対象地域:中国,韓国,北朝鮮,台湾,モンゴル,
       日本
 ○空間分解能:緯度経度1度グリッド
 ○時間分解能:年間値(植物起源NMVOCについて
        は月別・昼夜別推計値)
 ○推計年:1995年
 以上のインベントリーデータおよびドキュメントはCD-ROMに収録されており,内外の研究者が利用可能である。
 シミュレーションモデルを使って,東アジアにおける既存のモデル研究よりも詳細(50区分)なソース・リセプター解析(発生・沈着マトリックス)を行った。1999年1月15日から2月15日におけるソース・リセプター解析によると,対象領域である東アジアを50に区分し,そのそれぞれの区分から排出される硫黄酸化物を区別してシミュレーションすることによってソース・リセプター用シミュレーションとした。ソース・リセプター解析の結果,日本に沈着した硫黄酸化物の約78%が国外で発生したものであるという結果になった。また,東アジアで最も硫黄酸化物を排出する中国のなかでも日本に沈着する割合は異なり,多い地域と少ない地域では約3倍もの開きがあった。
 1995年7月と12月の1カ月間のソース・リセプター解析の結果によると,7月における火山などの国内の寄与が約64%,12月における国内の寄与が約20%と,季節によって寄与が大きく異なった。7月においては西日本で特に火山の寄与が大きく,中国からの寄与は華東(上海,青島周辺)の寄与が大きい。一方,12月においては国内の寄与は小さく,中国からの寄与は東北(大連,ハルビン周辺)の寄与が大きくなっている。中国からの寄与はその時期の季節風の影響を強く受けている結果となった。そのなかでも,華北(北京,太原周辺)からの寄与は7月,12月ともにおおきくなっている。大陸からの寄与を大きく受けると思われる日本海側の地域は,7月と12月で沈着量はさほど変わらなかったものの,その発生源割合は大きく変わった。
〔備 考〕
共同研究者:鹿角孝男(長野県衛生公害研究所)・金城義勝(沖縄県衛生環境研究所)・平木隆年(兵庫県立公害研究所)・外岡 豊(埼玉大学)・神成陽容(計量計画研究所)・大原利眞(静岡大学)


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