(16) アジア域の広域大気汚染による大気粒子環境の変調について
〔区分名〕戦略基礎
〔研究課題コード〕0104KB281
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕畠山史郎(大気圏環境研究領域)・杉本伸夫・日暮明子
〔期 間〕平成13〜16年度(2001〜2004年度)
〔目 的〕本研究は,アジアの大気汚染による大気粒子環境の変調を研究する。この目的のため,アジア大陸からの汚染気塊が輸送されやすい季節に,エアロゾルやエアロゾルの前駆物質(SO2,NOx,NOy)の濃度分布や輸送パターン,雲の変化などを航空機観測,衛星観測,地上観測によって観測し,解析する。
〔内容および成果〕
本研究では(1)エアロゾル前駆物質の観測 (2)衛星によるエアロゾル観測データの解析 (3)ライダーによるエアロゾル雲観測を行うこととしており,(1)では主に海洋上空での航空機によるエアロゾル前駆物質であるSO2の観測,(2)では人工衛星から送られてくるデータの解析による海上のエアロゾルの分布と成分の解析,(3)ではライダーを用いたエアロゾルや雲の空間分布の観測を行っている。
本年度の成果としては,(1)平成12年度に行われたAPEX-E1観測で得られたデータの解析を進めるとともに,現有のSO2計が上空の低圧下では感度が落ちてしまうことに鑑み,より上空までの観測に耐えるよう,SO2計の改修に着手した。
(2)衛星の可視から近赤外波長までの4チャンネルデータを用いて,エアロゾルの光学的厚さと粒径指標,光吸収性の有無を同時に推定するアルゴリズムを開発した。これは,紫外波長により光吸収性エアロゾルの検出が可能なことから,既に開発済みであった可視・近赤外波長からエアロゾルの光学的厚さと粒径指標を推定するアルゴリズムを可視短波まで拡張し,エアロゾルの光吸収性の判別を行うようにしたものである。さらに,主要な4つのエアロゾル種(砂塵性・炭素性・硫酸塩・海塩エアロゾル)は粒径の大小と光吸収性の有無によりほぼ大別できることから,エアロゾル種の分類も可能となった。また,開発アルゴリズムによる準リアルタイム処理システムの構築を行い,2001年3月から5月に実施された集中観測で,衛星画像および解析結果を迅速に提供し,飛行経路など観測計画の決定に貢献した。この期間中,特に3月下旬から5月上旬にかけて,1週間から10日間程度の周期で大陸からの砂塵性エアロゾルが捉えられ,この結果はTOMSのエアロゾルインデックスともよく一致した。黄砂発生時以外は,中国東岸・日本近海でバイオマス燃焼および工業活動起源の炭素系粒子が,遠洋域では海塩粒子が卓越し,それらの境界に硫酸粒子が分布するパターンが見られた。モデルの結果でもほぼ同様の分布が示されているが,モデルにおいて炭素性と硫酸塩エアロゾルが混在しているものの硫酸塩が優位である領域を,衛星では炭素性と判別しやすいことが分かった。これは,光吸収性の有るものと無いものが混在した場合,光吸収する特性が優位となるためと考えられる。実際にどの程度の割合で光吸収性の判別が変わるのかを今後調査していく必要がある。とはいえ,気象庁の報告によると一日に2万トンのSO2を放出している三宅島雄山からの噴煙は,硫酸エアロゾルとして判別されており,種別分類がある程度上手く動作していることが示された。
(3)ライダー(シーロメータ)を奄美大島に設置しAPEX-E2の集中観測期間中(2001年4月)観測を実施した。また,新たに連続自動観測用の小型ライダーを製作し,10月からタイのシ・サムロンで継続観測を開始した。さらに,2月からは奄美大島でも観測を開始した。これらによって,対流圏の雲およびエアロゾルの高度分布を遠隔地で連続観測し電話回線を通じて自動データ転送する技術を実証した。また,継続的に得られる観測データから雲分布とエアロゾル消散係数,偏光解消度の解析を行い,放射計データと合わせた解析に資するとともに,大気境界層の季節変化等について考察を行った。
一方,研究船「みらい」に2波長偏光ライダーを搭載し,西部太平洋上の雲,エアロゾルの分布と光学特性を観測するとともに,雲レーダー(通信総合研究所)との同時観測を初めて行った。同時観測は,5月と10〜12月の2つの航海で行い,観測データから氷雲および光学的に薄い水雲について,雲の粒径や雲水量などの解析を行った。
〔備 考〕
研究代表者:中島映至(東京大学)
先頭へ