(11) モンゴルにおける酸性・酸化性物質に対する植物感受性に関する予備的研究
〔区分名〕環境-地球推進 FS-4
〔研究課題コード〕0101BA005
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕清水英幸(国際共同研究官)
〔期 間〕平成13年度(2001年度)
〔目 的〕近年,産業/経済発展の著しい東〜東南アジア地域における酸性・酸化性物質の陸域生態系に及ぼす影響が懸念されている。このため,日本は関係アジア諸国と共に,東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)を構築し,その活動を支援している。しかし,本活動は緒に付いたばかりであり,地球環境研究者の支援を必要としている。特に,酸性・酸化性物質の陸域生態系影響を評価する上で,重要な因子の一つである植物感受性については,欧米や日本に比較し,東アジア地域においては,未だ十分に検討されていない。そこで,東アジア乾燥温帯の代表的な植生に対する酸性・酸化性物質の影響について,植物の感受性を含めた検討を行うことを目的として,モンゴルを対象に予備的研究を実施した。本研究では,モンゴルのような乾燥・半乾燥地域に生育する樹木や草本植物等の酸性・酸化性物質に対する感受性について,文献等から関連する知見を得ると共に,現地でのフィールド調査,日本国内での予備実験等を通じて,今後の研究の方向性について検討した。
〔内容および成果〕
ウランバートル市の南に位置するボクドカーン山の北斜面を中心に調査地を設定した。この斜面はウランバートル市3号火力発電所のほぼ正面に位置し,北西方向にある4号火力発電所も含めて,大気汚染ガスの移流が懸念されている。具体的には,A:ウランバートル市内,B:山麓の草原,C:同山北斜面,D:同山北西斜面(発電所に面していない)の4地点のカラマツ林および草地で,植生の被害状況,大気汚染物質濃度,土壌化学性等について予備的な現地調査を実施した。
7月下旬に実施した現地調査では,C地点のカラマツに樹形異常や葉量減少等の植生影響が認められたが,草地植生に関しては,可視障害等の顕著な影響はどの種でも認められなかった。なお,数種植物の種子を実験用に採取した。
7月24日〜11月14日に,パッシブサンプラーを用いて,NO2,NOx,O3,SO2を捕集し,1〜2週間毎にフィルターを交換・分析し,暴露期間中の平均濃度を算出した。NO濃度はNOxとNO2の捕集量の差から算出した。O3濃度は,夏季:約40ppb,晩秋季:約20ppbであったが,他の汚染物質濃度は測定期間を通して数ppb程度であった。当初高いと予想されたSO2は,夏季にはほとんど検出されず,晩秋季になって3〜4ppb程度が検出された。地点間の差は明確ではないが,O3,SO2は市内より山間部で高く,NO2,NOxでは逆の傾向が認められた。平均濃度は高くなかったが,風向によっては植生が直接高濃度汚染ガスに暴露されることが予測されたため,今後さらに,風向風速の観測,自動測定機による長期連続モニタリング等も必要であると考えられた。また,O3は比較的高い平均濃度が観測されたことから,植生への影響を考える上で重要視すべきであると考えられた。
山間部の土壌はpH5.8前後で,山麓(pH6.7),市内(pH7.8)よりは酸性であるが,交換性陽イオン,特に交換性Ca2+の含有量が高く,C地点で22.6cmol(+)/kg,D地点で34.5cmol(+)/kgであり,酸性化による栄養塩の流亡等の心配はほとんどないと考えられた。
一方,採取した草本種子は国内で発芽試験等の検討を行った。今後の研究に使用可能な植物種を表1に示す。
これらの植物種に関しては,温度等の環境要因に対する発芽特性を明らかにすると共に,栽培条件等の検討を行い,園芸培土と砂を混合した人工培土を用いて,育成を行っている。
野外調査の結果から,今後は,土壌を介した間接的な影響より,O3による直接影響について,草本植物の感受性,ドースレスポンス等の研究推進が必要と考えられた。
〔備 考〕
共同研究機関:酸性雨研究センター(ADORC)・Central
Environmental Research Laboratory
(CERL), Mongolia
共同研究者:戸塚 績・佐瀬裕之(ADORC)・Bulgan,
T.(CERL, Mongolia)
本研究は,東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)の活動と連携して実施した。
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