(17) 中国における都市大気汚染による健康影響と予防対策に関する国際共同研究
〔区分名〕特別研究
〔研究課題コード〕0002AG073
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕田村憲治(環境健康研究領域)・高野裕久・小野雅司・新垣たずさ
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2004年度)
〔目 的〕近年中国の都市大気汚染には,工場排煙,地域暖房用エネルギーセンターからの石炭燃焼排煙に自動車排ガスによるものが加わっている。このため大都市においても粒子状物質による大気汚染は著しく,重大な問題となっている。住民の健康影響も顕在化しているといわれているが,その実態については調査研究が始められたところである。
そこで本国際共同研究は,中国の大都市をフィールドとして,@都市大気汚染の状況を大気中微小粒子(PM10,PM2.5)を中心に把握し,Aこうした大気汚染と地域住民の曝露実態との関係を個人曝露調査により明らかにし,B呼吸器を中心とした慢性的および亜急性的な大気汚染による健康影響の有無を明らかにすることにより,中国における都市大気汚染の健康影響に関する予防対策に寄与することを目的にしている。
〔内容および成果〕
本調査研究では,大気汚染の原因として工場排煙,暖房用石炭燃焼排煙,自動車排ガスのいずれかを特徴とする大都市を各年度1都市ずつ対象とし,最終年度は初年度の対象都市の再調査(経年変化の確認)とまとめを行う。各対象都市には,大気汚染濃度レベルの異なる3調査地区を設定し,以下の項目について調査し,比較検討を行う。
@大気中微小粒子については粒径別サンプラーを設置し,主要な大気汚染ガスであるSO2,NO2についてはパッシブサンプラーを設置して年間の汚染濃度を評価するとともに,既存の環境測定資料を収集・解析することにより年間の汚染状況を把握する。
A成人を対象として,大気中微小粒子とSO2,NO2に関して,居住家屋内外および個人曝露濃度を測定し,地域の一般環境濃度と住民の曝露量との関係を明らかにする。
B小学生とその父母を対象に標準的な質問紙調査により慢性的な呼吸器影響の有無を把握するとともに,学童に対する都市暖房の亜急性の呼吸器への影響を把握するために冬期の暖房期間をはさむ約半年間のうちに同一児童に対してスパイロメーターで肺機能の変化を明らかにする。
C粒径別に捕集した微小粒子を分析し,粒径,地域,季節による微小粒子の有害性の評価を行う。
さらに,D地域の社会経済状況,大気汚染発生源情報などを収集・解析し,上記の知見を総合して予防対策に寄与する情報を提供する。
平成12年度は中国側の共同研究グループとして中国医科大学公共衛生学院孫貴範院長(遼寧省瀋陽市)を代表として,同大学学校衛生保健科(保健センター),各対象都市の衛生防疫站に協力を依頼し,瀋陽市内に自動車による大気汚染レベルが異なると思われる3調査地区を選定した。
本年度は,7月より瀋陽市内3地区の小学校内にローボリウムアンダーセンサンプラーを設置して微小粒子濃度の測定を開始した。石炭による都市暖房が始まる11月1日の直前に日本側研究者も現地に赴き,3地区の小学生約100人ずつに対する第1回目の肺機能検査を実施した(以後同一児童に対して12月,3月,5月の4回実施)。1月には同じ3小学校において「父母会」の機会に児童及び父母の呼吸器症状等に関する質問票調査(計約1500人)を実施し,現在データの入力,点検を継続中である。また,1月には3地区住民各8人の微小粒子個人曝露濃度,家屋内・外濃度調査を7日間ずつ実施(5月に非暖房期の調査を予定)。調査は概ね計画通りに進行してきたが,携帯用小型ポンプの騒音など,いくつか問題点が指摘された。3月に中国側スタッフ,所外共同研究者が国環研に集まり,次年度以降の撫順市,錦州市における調査実施方法の改善点等を討議した。試料の秤量は一部終わっているが,成分分析等は次年度で実施する。
〔備 考〕
共同研究者:孫 貴範(中国医科大学)
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