(9) アジアオセアニア地域における分類学イニシアティブと分類学情報基盤構築に関する予備的調査研究
〔区分名〕環境-地球推進 FS-5
〔研究課題コード〕0101BA253
〔代表者〕志村純子(環境研究基盤技術ラボラトリー)・渡邉 信・笠井文絵
〔期 間〕平成13年度(2001年度)
〔目 的〕地球環境の変化は生物の生息域にも急速にその影響を及ぼしつつあり,科学的な根拠に基づく保全計画の策定が必要である。そのための基本となる生物群の生息実態に関する情報,バイオ技術の開発のために基盤となる知識情報として,地球スケールの生物多様性情報が必要とされている。しかし,言語や国境を越えて,多国間地域において必要な基盤情報を構築するためには,1)正確な生物種の分類 2)生息域と生息種のモニタリングデータにおける分類学的正確性の確保 3)地域規模・地球規模の網羅的・統合的生物情報基盤の構築と共有 4)環境保全をめざした情報解析ツール開発,等が不可欠である。このため,第五回生物多様性条約締約国会議では,国・地域および地球規模の分類学イニシアティブ(Global
Taxonomy Initiative 以下,GTI)を展開するよう決議した。締約国は分類学の研究推進と,分類学情報共有化へむけての支援体制を構築するため,分類学イニシアティブフォーカルポイントを設けて,国および地域の実態調査と情報構築および共有化のパイロットプロジェクトを実施することとなった。本調査研究ではGTIの日本およびアジアオセアニア地域での展開における,ニーズとシーズを調査し,エコシステムの正しい理解に必要とされる生物多様性情報構築のための具体的なデータベース共有システムを提案することを目的とする。
〔内容および成果〕
生物多様性条約事務局における世界分類学イニシアティブ調整機構会議の結果を踏まえて,作業計画策定を同条約の5ビューロー代表ならびにDIVERSITAS等の生物多様性研究にかかわるNGOと協力して実施し,同条約の科学技術諮問機関会合において提案し,勧告として採択された。作業計画の実施を想定して,生物多様性研究における標本管理とデータ管理に関するワークショップを開催し,世界分類学イニシアティブについて分類学研究者に周知をはかるとともに,国内の分類学振興におけるニーズならびに既存の研究機関における研究者数,分類学研究基盤に関する調査を実施し,結果をナショナルレポートとして,同条約事務局に提出した。データベース共有システムに関する国際動向を調査し,ネットワーク上の分散オブジェクトシステムによる情報の共有化に必要な要素データベースの仕様を明らかとした。一方,国内の聞き取り調査の結果,植物園ならびに博物館の収蔵動植物標本に関する情報の電子化が遅れており,このような情報資源の不足が世界分類学イニシアティブ実施におけるデータ共有の実現を妨げる要因となっていることがわかった。データ電子化の遅延をまねいた原因として,データ入力の支援ツールに学名参照,多言語入力,分類体系の多様さに対応していないデータ入力インターフェース,などの問題点があることがわかり,これらの問題解決を図ることが,データ共有にむけた準備のうち,最初の段階であると考えられた。そこで,アジアオセアニア地域におけるデータの電子化を視野にいれながら,まず,国内の収蔵標本のデータ電子化を支援するツールの試作を実施した。同地域で一般的に用いられているWindows
PC上で稼動するように,MS Access runtime
versionを利用し,特に新たなアプリケーションソフトウエアの購入を必要としない,入力用のツールを開発した。このツールの特徴は,学名参照系として,記載種の約25%が網羅されている地球規模学名カタログシステムSpecies
2000 Catalog of Lifeを利用し,PC上使用する言語のインプットメソッドを反映し,ユニコードに変換してデータベースに格納する機能を保持している。
〔備 考〕
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