(10) 植物の環境応答と形態形成の相互調節ネットワークに関する研究:大気汚染ガス(特にオゾン)耐性獲得機構
〔区分名〕文科-振興調整
〔研究課題コード〕0002CB139
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕佐治 光(生物圏環境研究領域)・久保明弘・青野光子・中嶋信美・玉置雅紀
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕植物の大気汚染ガスに対する反応及びそれに基づく耐性獲得機構の解明は,植物のストレス応答機構の解明に寄与するだけでなく,大気の浄化や汚染物質のモニタリングに植物を有効に活用していくための重要な情報となる。そのために,以下のような研究を行う。植物の大気汚染ガス耐性獲得に関与すると考えられる遺伝子(エチレン合成系酵素の遺伝子,分子遺伝学的に同定される遺伝子等)を探索・単離し,その構造や機能を明らかにする。また,これらの遺伝子を操作することにより大気汚染ガス耐性植物を作成する。
〔内容および成果〕
(1)オゾン障害におけるエチレンの作用の解明
シロイヌナズナの生態型Col-0(耐性)とWs-2(感受性)のオゾン感受性の違いが,オゾンにより誘導されるエチレン発生量の違い(Col-0<Ws-2)に依存していることとエチレン合成誘導に関与すると思われるAtACS6遺伝子の発現に,これらの生態型間で違いがみられることを明らかにした。さらに,シロイヌナズナの20種類の生態型についてオゾン感受性とエチレン発生量を調べた結果,それらの生態型は,T.エチレン高生成でオゾン高感受性のグループ,U.エチレン生成量は比較的多いがオゾン耐性のグループ,V.エチレン生成量は比較的少ないがオゾン感受性のグループ,W.エチレン生成量とオゾン感受性が比例するグループ,に分かれることがわかった。
(2)シロイヌナズナのオゾン感受性・耐性変異体の解析
これまでに単離したシロイヌナズナのオゾン感受性変異体9系統について,二酸化イオウ,低温,強光,除草剤パラコートの各ストレスに対する感受性を調べた結果,これらは,少なくとも8種類の異なった組み合わせのパターンを示すことがわかった。これらの系統と野生型の間でアスコルビン酸含量に顕著な差はなく,既報のオゾン感受性変異体vtc1とは性質の異なるものであることがわかった。また,オゾン誘導性エチレン生成量が野生型よりも高い系統があり,さらに,マッピングにより,1系統の突然変異体の原因遺伝子座は,第4染色体上にあることがわかった。
また,シロイヌナズナの生態型Cvi-0(オゾン感受性)をバックグラウンドとしてEMS処理したM2種子約60000粒から10種類のオゾン耐性変異体を得,オゾンによるPR-1遺伝子の発現変化を指標に3つにグループ分けした。
(3)マクロアレイフィルターを利用したオゾン反応性遺伝子群の探索
0.2ppmのオゾンと12時間接触させたシロイヌナズナ(Col-0)と接触させなかったものの各々からmRNAを調製し,JCAAマクロアレイフィルターを用いた解析により,オゾン処理で発現が変化した遺伝子のスクリーニングを行った。その結果,オゾンによる発現誘導比2倍以上または1/2以下の遺伝子が2099クローン(増加1536クローン,減少563クローン),また発現誘導比4倍以上または1/4以下の遺伝子が171クローン(増加137クローン,減少34クローン)得られた。
(4)シロイヌナズナのアスコルビン酸ペルオキシダーゼ遺伝子ノックアウト系統の解析
シロイヌナズナ(Ws-2)のT-DNAタギング系統から,植物のストレス耐性に関与すると思われるアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)遺伝子(APX1)にT-DNAが挿入されたものを1系統単離した。この系統では,APX1のmRNAやタンパク質が検出されず,APX活性は野生型のシロイヌナズナの活性の約1/3に低下していた。植物体のアスコルビン酸含量は野生型とほぼ同じであったが,その還元型/酸化型比は野生型よりわずかに高かった。植物の生育は野生型よりわずかに悪く,また低温ストレス下においてアントシアニンを野生型より多く蓄積した。
〔備 考〕
研究代表者:岡 穆宏(京都大学)
共同研究機関:英国ニューカッスル大学,ジョンイネスセンター
当課題は重点研究分野W.4.1にも関連
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