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研究成果物



 

(2) 遺伝子組換え生物の生態系影響評価手法に関する研究

 
〔区分名〕重点特別
〔研究課題コード〕0105AA210
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.4 生物多様性の減少機構の解明と保全
〔担当者〕内山裕夫(生物多様性の減少機構の解明と保全プロジェクトグループ)・中嶋信美・岩崎一弘・玉置雅紀・冨岡典子
〔期 間〕平成13〜17年度(2001〜2005年度)
〔目 的〕遺伝子組換え技術が1973年に米国で開発されて以来,医学,農学の分野で急速に進展し,近年では地球規模での課題である人口,食料,環境,エネルギー,医療等の問題解決に不可欠な技術である。有用な遺伝子を異種生物に導入した各種遺伝子組換え体が作成され,実用化の段階に入っている。例えば,除草剤耐性能等を付与された組換え作物は既に50種以上あり,また,窒素固定能を増強した組換え微生物も実用化され,環境浄化に有用な組換え微生物の野外試験もなされている。これら組換え体は開放系で使用されるため,環境への影響を考慮する必要がある。一方,生物多様性の減少が新たな環境問題となっており,遺伝子組換え生物もその破壊要因となる可能性があり,生態系に与える影響に関し科学的な知見を蓄積する必要がある。従って本研究では,遺伝子組換え生物の挙動を解析するための遺伝的マーカーを検索・作成するとともに,遺伝子組換え生物の生態系影響評価について,既存の安全性評価手法の再検討並びに新たな検査手法の開発や,モデル実験生態系の基本構造の設計を行う。また,育種作物等の自然界への侵入・拡大をレビューし,地図情報モデルを開発する。
〔内容および成果〕
 遺伝子組換え植物の挙動調査用マーカーを探索する目的で,葉の形態異常を引き起こすホメオボックス遺伝子と植物体から蛍光を発生させるGFP(緑色蛍光タンパク)遺伝子について,そのマーカーとしての有用性を検討した。まずこれらの遺伝子をCaMV-35Sプロモーターにつないでタバコやシロイヌナズナに導入し,これらを過剰発現する組換え体を作成した。その中からマーカー形質がはっきりと識別できる系統を複数選抜し,それらの遺伝的・生理的性質を調べた。その結果,ホメオボックス遺伝子を導入した組換え体は,肉眼で容易に識別できるというマーカーとしての優位性がある反面,遺伝子発現量に応じて植物の生育が低下し,繁殖能にも影響が現れることがわかった。一方GFP遺伝子を導入した組換え体は,その識別に励起光の照射と蛍光観察用フィルターを必要とするが,植物の生育に対する影響は小さいことが明らかになった。
 遺伝子組換えダイズ3系統とその近縁野生種であるツルマメの種を7系統入手し,栽培・収穫して今後の研究に必要な量の種の確保を図るとともに,それらの開花期を調査した。その結果,2系統の遺伝子組換えダイズはほぼ同時期に開花したのに対し,ツルマメの開花期は系統により大きく異なるものの,組換えダイズと開花期が一部重なるものが4系統見いだされた。
 自然環境中に導入された組換え微生物の挙動を追跡するため,有効な遺伝的マーカーを検索した。この結果,塩化第二水銀を無機化する水銀還元酵素遺伝子が検出感度,測定操作に優れていたため,Pseudomonas属細菌等の土壌細菌数株に導入し,安定に保持される有効な検出マーカーである事を確認した。次いで,作成した組換え体の一つであるPseudomonas putida PpY101/pSR134を水系マイクロコズムに導入し,光照射条件下にて生残性を検討した。この結果,全菌数は一定で不変であるが,水銀化合物を含んだ平板培地を用いて組換え体を計数すると明らかな減少が見られた。自然環境中に導入された遺伝子組換え微生物の生態系への影響を評価する際には,導入された微生物の挙動を把握する事が有効であり,これまで環境中での挙動の基盤となる生残性の判定には上述した平板寒天培地を用いた培養を伴う手法が主であった。しかし近年,生きてはいるが培養できない新たな状態(VNC; viable but non-culturable)の存在が示唆され,微生物の安全性評価手法の再検討が表面化し,上記実験からも組換え体がVNCに陥ったことが示唆された。このため,下水道処理場から分離した細菌のうち優占する菌株をモデルにして過塩素酸による化学物質ストレスを与え,その挙動を解析した。この結果,供試5菌株のうち4株はエステラーゼ酵素活性,膜透過活性を保持するものの平板培地上ではコロニー形成をしないVNC状態をとることが明らかとなり,VNCは細菌に普遍的に起こることが示唆され,改めて生残性評価法の再検討が示された。
〔備 考〕


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