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研究成果物



 

(12) cDNAマイクロアレイによる遺伝子発現パターンを指標とした生物への環境影響のモニタリング手法の開発


〔区分名〕奨励
〔研究課題コード〕0102AF198
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕玉置雅紀(生物多様性の減少機構の解明と保全プロジェクトグループ)・中嶋信美
〔期 間〕平成13〜14年度(2001〜2002年度)
〔目 的〕生物は外的環境から様々な形で影響を受けており,それらの影響がある閾値を越えると健全な生育を阻害し,やがてこれが個体(群)の衰退・消失として観察される。したがって,このような生育阻害がどのような環境要因により引き起こされたのかを個体(群)の衰退が起る前に事前に且つ正確に知ることは,個体(群)の保全戦略の構築に大きく貢献すると考えられる。しかしながら,これまでに行われてきた生態学的調査では,環境変化の結果として起こる個体(群)の衰退・消失を見ることはできてもそれを予測することは困難であった。一方,生物は異なる環境変化にさらされた場合に異なる遺伝子を発現することが知られており,また,この遺伝子発現は,個体(群)の衰退に先立って起こる事が知られている。本研究はこの性質を利用して,異なる環境影響を受けている生物での遺伝子発現パターンをDNAマイクロアレイ法により比較し,そのパターンの違いから生物に影響を及ぼす環境要因を事前に特定するモニタリング手法の開発を目的とする。その成果は,外的環境の変化による生物影響の予測的モニタリング手法確立のための新しい手法としてのポテンシャルを秘めていると考えられる。
〔内容および成果〕
 これまでにシロイヌナズナの遺伝子を用いて比較的少数のストレス応答性遺伝子を単離し,これらをスポットしたミニマイクロアレイを作成した結果,オゾンストレス,乾燥ストレス,傷ストレスを区別することに成功した。しかしながら,このマイクロアレイでは,オゾンストレスとUV-Bストレスの遺伝子発現パターンによる区別はできなかった。そこで本年度はオゾンストレスとUV-Bストレスとの間で発現誘導パターンの異なる遺伝子の単離を行った。
 オゾンストレスとUV-Bストレスとの間で発現誘導比の異なる遺伝子の単離を行うために,まずオゾン暴露により発現が変化する遺伝子を大規模に単離し,その後,それらの遺伝子の発現がUV-B暴露により変化するかどうかを検証した。JCAA(シロイヌナズナ アレイコンソーシアム)より手に入れたシロイヌナズナのESTクローン約13,000個がスポットされているマクロアレイメンブレンを用いてオゾン暴露12時間後に誘導される遺伝子の単離を行った。その結果,発現量が比較的高く,オゾンの暴露により3倍以上或いは1/3以下に発現が変化する遺伝子を282クローン単離することができた。その内訳は,オゾンにより発現が増加するもの215クローン,減少するもの67クローンであった。
 これらのクローンのうち発現の増加するクローンから任意の18クローンを選抜し,より精度の高い発現解析手法であるノーザン解析により12時間後のオゾン誘導性に関する追試験を行った。その結果,15クローンについてオゾンによる発現増加を確認することができた。このことから少なくとも今回単離した282クローンの83%にあたる約235クローンはオゾンによる発現変化が起こるであろうと推測された。
 さらにオゾンで発現増加した任意の18クローンを用いて12時間のUV-B暴露によるこれらの発現変化をノーザン解析で調べ,オゾン暴露した時の発現変化パターンと比較した。その結果,これら18クローンのうち7クローンはオゾン暴露した時にのみ発現上昇が観察された。また同時に行った実験によりカルコン合成酵素をコードする遺伝子はUV-Bの暴露に対して特異的に発現上昇することが観察された。以上の結果,今回単離することができたクローン中にはオゾン特異的に発現上昇するクローンが39%程度含まれていることが明らかになった。もし,この比率が今回単離され且つ発現上昇がノーザン解析により起こるであろうと推測される235クローンに当てはまると仮定すると,今回の大規模な遺伝子単離によりオゾン暴露に対しては発現応答するが,UV-B暴露には反応しないと考えられる遺伝子が約92クローン単離することができたと推測される。この数は予測に過ぎないが,今回の大規模なスクリーニングにより少なくともオゾン暴露とUV-B暴露により発現変化の異なる遺伝子がいくつかは取れた結果となった。
〔備 考〕


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