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研究成果物



 

4. 多様な自然環境の保全と持続可能な利用
4.1 生物多様性の減少機構の解明と保全に関する研究
(1) 流域ランドスケープにおける生物多様性の維持機構に関する研究


〔区分名〕重点特別
〔研究課題コード〕0105AA207
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.4 生物多様性の減少機構の解明と保全
〔担当者〕高村典子(生物多様性の減少機構の解明と保全プロジェクトグループ)・福島路生
〔期 間〕平成13〜17年度(2001〜2005年度)
〔目 的〕本プロジェクトでは,流域を構成する様々なランドスケープを客観的に定義し,その質,量,および配置と生物多様性との関係を導き出すことによって,ランドスケープの分断・縮小が生物多様性に及ぼす影響を評価する。そして生態系保全を流域 レベルの空間スケールで行うための生物多様性予測モデルの開発を行う。
〔内容および成果〕
 ため池のトンボの出現(多様性)が景観的要素,池の植生,池中の水質や生物群集とどのような関係を保っているのかを明らかにするため,兵庫県三木市,小野市,神戸市,明石市,加古川市,稲美町,社町のため池35ヵ所を対象に調査を行った。各池での周年を通したトンボの幼虫・成虫の出現調査を行う一方で,トンボ幼虫期での制限要因として,水質,プランクトン,ベントス,魚,植生などを現地調査した。また,トンボ成虫時の要因となる池周辺の景観要素と池の植生は,ヘリコプターによる空中写真を基に画像上で定量化した。池の水質環境(7月)は主成分分析の結果,樹林で囲まれている谷池群が市街地や田園地帯にある池群と異なり,栄養塩レベルが比較的低いという一つの傾向を示した。水質環境は池の中の植生にも大きく規定された。すなわち,景観に関係なく植生のない池の水質は,それ以外の池に比べて,pH,アンモニア濃度,底泥付近の溶存酸素濃度がそろって高い傾向を示した。7月の植物プランクトン種の出現を対応分析で座標付けした結果,主軸は変動の18%を説明し,pH,TN,Chl.aと有意な負の相関を,抽水植物数,浮葉植物数,全水生植物数,水生植物機能数(沈水,浮葉,抽水のいくつが揃っているか)と有意な正の相関を示した。正の方向には,藍藻を除く多くの種が分布したが,負の方向にはアオコを構成する藍藻が分布した。こうした結果は植物プランクトン種の出現が,水生植物群落の有無と関係していること,そのためその分布がリンでなく窒素と相関すると理解でき興味深い。水中のTN:TP比は植生のない池で高く,植生の有無が池の窒素・りんの動態に大きく影響していることが示唆された。定置網に入った水棲動物の出現は景観要素と無関係で,それらの分布は,オオクチバスやブルーギルの有無との関係で決まっているようであった。
 また,北海道日高地方では15河川に計67の調査地点を設定し,魚類調査を行い,淡水魚類の多様性とそれへのダムの影響を調べた。北海道のような高緯度地方には,サケマスで代表される溯河回遊魚が数多く生息し,河川の上流と海洋とを行き来する生活史を送っている。このような魚類にとって,河川を分断し回遊の障害となるダムの存在は,各河川の個体群の存続を大きく左右し,地域個体群の絶滅を導くこともある。67地点で確認された淡水魚類の種数は,標高が数100メートルより高いところでは2種以下と少ないが,河口付近まで下ると10種以上に急激に増加する(図1)。この多様性のばらつきは,標高という変数のみによって75%あまりが説明された。そして問題は,観察された多様性パターン(種数)にダムの影響がどの程度秘められているか,ということである。そこで,ある標高での種数の観測値と図1に示した曲線による推定値とのズレ(残差)を計算し,その値の大小がダムの有無とどのような関係を持っているのか解析してみた。調査地点の中で,その地点より下流側に少なくもひとつはダムが存在する地点のグループと,そのグループと同じ標高の帯域にあり,かつ下流側にひとつもダムのない地点のグループを割り出し,上で述べた残差をそれぞれのグループで求め,その結果をボックスプロットで集計した(図2)。この図から分かるように,下流にダムのある地点のグループは,それのないグループと比べ,淡水魚の種数が全体的に少ない傾向があり,中央値では約1.1種も少なかった(p<0.01,Mann-Whitney U-test)。
〔備 考〕
共同研究者:金子正美(酪農学園大学)・三橋弘宗・田中哲夫(兵庫県人と自然の博物館)・角野康郎(神戸大学)


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