(18) 金属発がん抑制因子としてのメタロチオネインの役割
〔区分名〕文科-科研費
〔研究課題コード〕0001CD067
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕佐藤雅彦(環境健康研究領域)
〔期 間〕平成12〜13年度(2000〜2001年度)
〔目 的〕ヒトがんの原因として環境発がんが問題となっており,環境発がん物質には有害化学物質の他に砒素やカドミウムなどの金属化合物が知られている。特に,ヒ素に関しては中国やインドなどでおよそ500万人に中毒症状が認められており,今後,砒素による発がんが懸念されている。生体内において金属毒性に対する防御因子として金属結合タンパク質であるメタロチオネインが知られている。メタロチオネインは,カドミウムや水銀などの重金属の毒性軽減や蓄積および体内における銅や亜鉛などの必須金属の恒常性の維持などに重要な役割を果たしていると考えられている。しかしながら,金属発がんにおけるメタロチオネインの役割については,ほとんど検討されていない。そこで,本研究では,メタロチオネインのT型およびU型の発現を抑えたメタロチオネインT/U欠損マウスを用いて,金属発がんに対する生理的レベルでのメタロチオネインの効果を明らかにすることを目的とした。
〔内容および成果〕
金属発がんにおけるメタロチオネインの役割を明らかにする目的で,メタロチオネインT/U欠損マウスを用いて,無機砒素の代謝物であるジメチルアルシン酸およびカドミウムによる遺伝子損傷に対するメタロチオネインの防御効果について検討した。
1)ジメチルアルシン酸による遺伝子損傷に対するメタロチオネインの効果
8週齢雌のメタロチオネインT/U欠損マウスおよび野生型マウスにジメチルアルシン酸(750mg/kg)をそれぞれ1回経口投与して,その24時間後の全血を利用してコメットアッセイ(DNA
strand break)を行った。その結果,ジメチルアルシン酸の投与によってメタロチオネインT/U欠損マウスおよび野生型マウス共にジメチルアルシン酸の投与量に依存してDNA傷害が認められた。しかしながら,両マウスを比較すると,メタロチオネインT/U欠損マウスの方が野生型マウスに比べてDNA傷害が顕著であった。
2)カドミウムによる酸化的DNA損傷に対するメタロチオネインの効果
10週齢雄のメタロチオネインT/U欠損マウスおよび野生型マウスに塩化カドミウム
(0.5mg Cd/kg)を1日1回2日間皮下投与して,その72時間後の尿中8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG,
酸化的DNA損傷の指標)量を測定した。その結果,カドミウムの投与によりメタロチオネインT/U欠損マウスおよび野生型マウス共に尿中8-OHdG量がコントロール群に比べて有意に増加したが,両マウスを比較するとメタロチオネインT/U欠損マウスの方が野生型マウスに比べて尿中8-OHdG量が著しく増加した。
以上の結果より,メタロチオネインT/U欠損マウスでは,ジメチルアルシン酸やカドミウム投与によるDNA傷害が野生型マウスに比べて増強されることが認められ,メタロチオネインがジメチルアルシン酸やカドミウムによる遺伝子損傷の軽減に重要な役割を果たしていることが示唆された。
〔備 考〕
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