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研究成果物



 

(17) 環境発がんにおけるメタロチオネインの生理学的意義


〔区分名〕文科-科研費
〔研究課題コード〕0002CD066
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕遠山千春(環境健康研究領域)・佐藤雅彦
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕ヒトにおける発がんの原因として,放射線などの物理的因子や多種類の有害化学物質による環境発がんが問題となっており,環境発がん抑制の研究はがんの予防のために重要な研究課題である。種々の化学物質や放射線で誘発される腫瘍の発生が,メタロチオネイン(重金属解毒作用および抗酸化作用を有する金属結合タンパク質)の誘導能を有する金属化合物の投与によって抑制されることが報告されているが,メタロチオネインの直接的な関与については明確にされていない。最近,我らは,メタロチオネインのT型とU型の発現を抑えたメタロチオネインT/U欠損マウスにおいて7,12-dimethylbenz(a)anthracene (DMBA)単独で誘発される皮膚腫瘍の発生が著しく増強されることを見いだし,メタロチオネインがDMBA単独皮膚発がんに対して防御的役割を果たしていることを明らかにした。そこで,本研究では,メタロチオネインT/U欠損マウスを用いて,環境発がん抑制因子としてのメタロチオネインの重要性を明らかにすることを目的とした。
〔内容および成果〕
 環境発がんにおけるメタロチオネインの役割を明らかにする目的で,前年度にはメタロチオネインがDMBA/12-0-tetradecanoylphorbol-13-acetate(TPA)併用による皮膚での腫瘍並びにDMBA単独による胃での腫瘍の発生に対して防御効果を示すことを明らかにした。本年度は,メタロチオネインT/U欠損マウスを用いて,N-ethy1-N-nitrosourea(ENU)による肺発がんおよびDMBAによる遺伝子損傷に対するメタロチオネインの防御効果を検討した。
 (1)ENUによる肺発がん
 妊娠16日目のメタロチオネインT/U欠損マウスおよび野生型マウスにENU(30mg/kg)を1回腹腔内投与して,その後出生して6ヵ月目の子マウスの肺での腫瘍の有無を観察した。その結果,ENUを塗布したメタロチオネインT/U欠損マウスでは野生型マウスに比べて,肺での腫瘍の発生率並びにマウス1匹あたりの平均腫瘍発生数が有意に増加した。
 (2)DMBAによる遺伝子損傷
 8週齢雌のメタロチオネインT/U欠損マウスおよび野生型マウスの背部を剃毛し,アセトンに溶解したDMBA(0.05mg/mouse)をそれぞれ1回塗布して,3日後の皮膚での遺伝子傷害性をp53並びにp21の発現細胞の有無を指標に調べた。その結果,DMBAを塗布したメタロチオネインT/U欠損マウスおよび野生型マウスの皮膚では共にp53並びにp21の陽性細胞が観察され,陽性率はメタロチオネインT/U欠損マウスの方が有意に高かった。
 以上の結果より,メタロチオネインは,ENUによる肺での腫瘍の発生やDMBAによる皮膚での遺伝子損傷に対する生体内防御因子として重要な役割を果たしていることが示唆された。
〔備 考〕


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