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研究成果物



 

(11) トランスジェニックマウスを用いた環境発がんにおける酸化的ストレスの関与の解明


〔区分名〕文科-原子力
〔研究課題コード〕9903CA068
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕遠山千春(環境健康研究領域)・佐藤雅彦
〔期 間〕平成11〜15年度(1999〜2003年度)
〔目 的〕一般環境中ではヒトは放射線などの物理的因子と多種類の有害化学物質に曝露されており,ヒトがんの原因として環境発がんが問題となっている。これらの環境有害因子により誘発される腫瘍発生には個体差が認められていることから,人間集団における環境発がんのリスク評価の際には,個々人の感受性要因を解明する必要がある。また,放射線や種々の有害化学物質による発がん過程には,生体内で発生する酸化的ストレスの関与が指摘されている。そこで,本研究では,酸化的ストレスの除去に関与するタンパク質を過剰発現あるいは欠損したトランスジェニックマウスを用いて,放射線発がんや化学発がんにおける酸化的ストレスの関与を明確にすることにより,発がん感受性要因としての酸化的ストレスの重要性を明らかにし,その影響評価のための基礎的知見を得ることを目的とした。
〔内容および成果〕
 抗酸化作用を有するメタロチオネイン(金属結合タンパク質)のT型およびU型の発現を抑えたメタロチオネイン遺伝子欠損マウスを用いて,放射線による酸化的DNA損傷並びに胸腺リンパ腫の誘発に及ぼすメタロチオネインの影響を検討した。
 1)放射線による酸化的DNA損傷に及ぼすメタロチオネインの影響
 8週齢雄のメタロチオネイン遺伝子欠損マウスおよびその野生型マウスにX-ray(0.1-2.0 Gy)を1回全身照射した。その24時間後に血清および尿(24時間尿)を採取し,酸化的DNA損傷の指標として血清並びに尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)量をELISA Kitを用いて測定した。その結果,X-ray照射によってメタロチオネイン遺伝子欠損マウスおよび野生型マウス共に,血清並びに尿中8-OHdG量が照射量に依存して増加した。この増加の程度は,両マウスを比較すると,メタロチオネイン遺伝子欠損マウスの方が,野生型マウスに比べて有意に高い傾向を示した。
 2)放射線による胸腺リンパ腫の誘発に及ぼすメタロチオネインの影響
 5週齢雌のメタロチオネイン遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスにX-ray(0.5,1.0,1.5 Gy)をそれぞれ1回/週,連続4週間全身照射した。メタロチオネイン遺伝子欠損マウスを用いたX-rayによる胸腺リンパ腫の誘発の検討は,本年度中にマウスへのX-ray照射が終了したものの腫瘍の発生まで6ヵ月以上の期間を要するため,現在も実験を継続中である。
 以上の結果より,メタロチオネイン遺伝子欠損マウスは野生型マウスに比べて,放射線による酸化的DNA損傷に対して高い感受性を示すことが明らかとなった。従って,メタロチオネインは放射線による酸化的DNA損傷の防護に重要な役割を果たしていることが示唆された。
〔備 考〕


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