(8) 有機錫化合物の中枢神経毒性に関する免疫神経内分泌学的研究
〔区分名〕経常
〔研究課題コード〕9901AE178
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕今井秀樹(内分泌かく乱化学物質及びダイオキシン類のリスク管理と評価プロジェクトグループ)・兜 真徳
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕いくつかの有機スズ化合物は中枢神経系を傷害し,さらに免疫系および内分泌系に影響を及ぼす。有機スズ化合物による脳・神経傷害のメカニズムは詳細には分かっていない。我々は有機錫化合物のひとつであるトリメチルスズ(TMT)をラットに1回経口投与すると,2−3日後に血液中のステロイドホルモンであるグルココルチコイドの濃度が一過性に上昇することを見いだしている。グルココルチコイドは細胞質内の受容体に結合してその役割が発揮されるが,この受容体にはタイプTとタイプUの2種類があることが知られている。昨年度に引き続きTMT投与によって引き起こされる脳内海馬領域の細胞死におけるステロイドホルモンの役割を2種類の受容体アゴニストをもちいて詳細に解析した。
〔内容および成果〕
ステロイドホルモン受容体の受容体アゴニストであるコルチコステロン(CORT)を含むペレットあるいはタイプU受容体の特異的なアゴニストのデキサメタゾン(DEX)を含むオスモティックポンプをラット(Sprague-Dawlely系雄,5週齢)の皮下に副腎切除術(ADX)を施すと同時に埋め込んだ。ADXの7日後,TMTを8mg/kgの用量で1回ラットに経口投与した。TMT投与14日後に脳を取り出して切片を作成し,神経傷害の指標として活性化アストログリアのマーカーであるビメンチンの増加を免疫組織染色法を用いて観察した。TMT投与によって海馬のCA3a領域からCA3c領域にかけて生じた傷害がADXによってCA1領域にまで拡大した。ここにCORTあるいはDEXを慢性的に投与すると神経傷害の範囲はTMT投与単独によるものよりも縮小した。従来タイプT受容体は海馬歯状回においては神経細胞に対して保護的効果を発揮し,一方タイプU受容体は神経傷害を増悪する方向に働くとされてきたが,錐体細胞層に関してはタイプU受容体がTMT由来の神経傷害を軽減していることが明らかになった。
〔備 考〕
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