(11) ゴールドラッシュ地域における環境管理,環境計画,およびリスクコミュニケーションに関する学際的研究
〔区分名〕環境-地球推進 H-7
〔研究課題コード〕0002BA048
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕久米 博(化学環境研究領域)
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕近年,発展途上国において「スモールスケールマイニング」と呼ばれる採鉱形態が顕著になってきている。これは,採掘用重機や高度な精錬設備を使用せず,人力に大きく依存して行われる鉱石の採取<CODE
NUM=00A5>処理<CODE NUM=00A5>販売活動を指す。ゴールドラッシュは,そのうち金鉱が採掘の対象となったものである。金を鉱石から抽出するには,おもに水銀が用いられるため,場所によっては深刻な水銀汚染が生じている。このようなゴールドラッシュ地域における環境管理,環境計画,そしてリスクコミュニケーションを行うためには,環境試料の分析データを基礎にした水銀汚染記載を正確に行うことが必要である。ここで,環境試料は多様な形態を持ち,また分析すべき検体数も多数に及ぶため,その分析には,高精度であるとともに迅速さが要求される。本研究では,さまざまな形態を持つ試料中に含まれる水銀の迅速分析法として,高エネルギーイオンビームを用いた分析法であるPIXEに着目し,その有用性を検討することを目的とする。
〔内容および成果〕
同一の土壌試料に対して,PIXEと,底質調査方法の公定法となっている還元気化原子吸光光度法とを適用し,両者の分析結果を比較した。分析には,モンゴルで採集した2種類の土壌試料を用いた。この試料はそれぞれ,7あるいは8種類の粒度に揃えたものに分離し,150から200メッシュより大きな粒度のものに関しては,それらを200メッシュ以下になるように細粒化した。
PIXEは岩手医科大学サイクロトロンセンターにおいて行った。粒度を揃えた上記の試料をさらにすりつぶし,平均粒径が数μmになるように調整したものを,厚さ4μmのポリプロピレン膜に固定し,それに2.9MeVのプロトンを照射した。このとき同時に,パラジウムカーボン粉末を試料に混ぜておき,粉末内部標準法によって水銀の定量値を求めた。発生した特性X線は,厚さ500μmのマイラー膜フィルターを通して,Si(Li)検出器によって測定した。
還元気化原子吸光光度法は,所外のふたつの分析会社に依頼して行った。粒度別に分離された試料を硝酸と過マンガン酸カリウムで分解処理をした後に,分析線253.7nmにおける原子吸光を測定して水銀を定量した。
得られた結果を比較すると,2種類の試料いずれに対しても,還元気化原子吸光法による分析値は,誤差範囲内で一致した。2社の分析時期は,ほぼ2ヵ月の間が開いている。この2社の分析値が一致したことは,その間に水銀の蒸発がなかったことを示している。水銀を含む試料については,通常,水銀の飛散を防ぐ対策が必要とされる。今回の試料の場合は,各粒度に分離した後は,単に小型のガラス瓶に常温密閉保存しただけであったが,2ヵ月程度であれば,それだけでも十分であることが示唆された。
一方,PIXEの結果は,還元気化原子吸光光度法のそれとあまり良い一致は示さず,ある粒度では300%ものずれを示した。この不一致の原因としては,試料すりつぶしの際に起こる汚染や水銀の飛散が考えられる。今後,PIXEの信頼度の向上を図るために,試料調整方法の再検討を行い,さらに同一試料についての繰り返し測定を実施する予定である。
〔備 考〕
研究代表者:村尾 智(産業技術総合研究所)
共同研究者:世良 耕一郎(岩手医科大学)
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