(10) 有害化学物質による地球規模の海洋汚染評価手法の構築に関する研究
〔区分名〕環境-地球推進 D-2
〔研究課題コード〕0002BA047
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕刀正行(化学環境研究領域)・原島 省
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕有害化学物質(農薬,残留性有機汚染物質,重金属等)による地球規模での海洋汚染の実態を把握する手法として,商船を利用した有害化学物質の濃縮捕集システム,試料採取システムおよび連続観測システムを構築し,広域を繰り返し観測する。また,より広汎な有害化学物質を対象とするために構築したシステムより得られた試料の多成分・多元素同時分析手法を確立する。これらの観測結果および分析結果を用いて,有害化学物質による地球規模での海洋汚染地図の作成を検討し,汚染物質の起源,移動,分解過程などの行方や動向を明らかにする。
〔内容および成果〕
残留性有機汚染物質による地球規模での海洋汚染の動態を把握するためには,まず地球規模での汚染状況を観測する必要がある。しかし,海洋上での観測は,観測を実施するための足場すなわち観測プラットフォームが必要であるが,現在これは圧倒的に不足している。本研究では,このプラットフォームとして,我が国が世界各海域に展開している商船を海洋汚染観測プラットフォームとして確保し,それに最適な商船搭載型有機汚染物質捕集観測システムを構築することにより,地球規模での海洋汚染観測態勢を確立する。捕集した試料からより多くの情報を引き出すために多成分一斉分析手法を検討する。
また,有害化学物質による地球規模での存在状態及びその時間的空間的な変動を把握することにより,その負荷状態,輸送過程,滞留などを明らかにする。さらに,海洋表層での太陽光励起活性酸素種を調査し,それと溶存有害化学物質との反応性を明らかにすることにより,各種有害化学物質の分解性,分解量等を推定するとともに残留性についても明らかにする。
前年度使用した固相抽出剤は,一部の化学物質に関し回収率が十分でないこと,本年度実施の太平洋外洋ではより低濃度であることが予想されることから,新たな固相抽出剤の検討を行った。新たに検討した固相抽出剤は,ハードタイプのポリウレタンフォーム(以下PUFを略す)およびより吸着能の高い活性炭素を繊維状にしたものである。また,前年度使用した固相抽出剤(米国SKC社Type129および131)は,ブランク値が比較的高かったため,洗浄方法についても検討した。最終的には次の4種類の固相抽出剤を用意し,実際に現場で使用した上で決定することとした。PUFのみの場合は,1次洗浄としてアセトン溶媒によるソックスレーにて24時間,2次洗浄として1次洗浄済みのPUFをガラス容器に詰めた後,溶媒としてアセトンまたはジクロロメタンを用い,それぞれソックスレーにて24時間の洗浄を行った。真空乾燥後,アルミホイルにてラップしステンレス容器に入れ,さらに真空パック保存により保存時および運搬時の汚染を避けた。
より広範囲な化学物質を対象とするために,新たにPUFと活性炭素繊維フィルター(以下ACFと略す)を用いた複合カラムを検討した。フェルト状のACFをまずアセトンを溶媒として超音波洗浄を行い,微細な繊維やゴミを取り除いた。その後1次洗浄としてジクロロメタンを溶媒とし,ソックスレーで24時間処理した。洗浄済みのACFは汚染をさけるためステンレス缶を用いジクロロメタン内で保存した。1次洗浄済みのACF2枚と1次洗浄済みのPUFをガラス容器に詰め,2次洗浄としてジクロロメタンあるいはトルエンでそれぞれ24時間ソックスレーにて処理した。処理後の保存はPUFのみの場合と同様である。
回収率の評価は13C同位体レベルの試薬を,洗浄済みの固相抽出剤に添加し,同一の固相抽出剤を用いたカラムを2本直列し配し,清水を1l/minの流速で300L通水した後のそれぞれのカラム中の濃度を分析することにより行った。PUFのみを固相抽出剤とした場合の回収率は,約80%〜60%弱と若干低めであった。一方,PUFとACFを組み合わせた固相抽出剤の回収率は,多くの物質でほぼ100%であったが,一部クロルデン類では80%弱であった。
今後,保存時の汚染および現場での回収率試験の結果から,主に用いる固相抽出剤を決定する予定である。
本年度は,昨年度実施した油輸送船による日本−ペルシャ湾間の観測ルートに引き続き,電力用石炭運搬船による日本−オーストラリア間の太平洋を南北に横断する航路を用いた観測態勢の構築を行った。
電力用石炭運搬船「新地丸」は,福島県相馬港とオーストラリア東岸の数カ所の石炭積出港間をほぼ月1往復で航海しており,太平洋をほぼ南北に横断する航路であることから,赤道をはさんだ広い海域を対象とすることが可能である。また,本船は不定期であるが,北米西岸への航路も使用しており,この場合は太平洋を東西に横断する観測が可能となる。「新地丸」の定期ドッグ入りにあわせて,有害化学物質観測システムの設置のための配管工事および設置プラットフォームの整備を行った。前年度開発した商船搭載用海洋汚染観測システムに,その後得られた成果を盛り込み改良した新しいシステムを制作し,2002年1月の相馬港入港時に搬入,設置を行った。設置後直ちに2002年1月28日〜2月22日の日本−オーストラリア間往復航路において,機器の試運転を兼ねて乗船観測調査を実施した。先に述べた4種類の固相抽出剤を用い,またデータの質の確保と回収率の確認のために全ての濃縮捕集サンプリングはカラムを2本直列に配置して実施した。観測地点は往復で44カ所,採取試料数は88本である。航路とサンプリング地点を図1に示す。
〔備 考〕
共同研究機関:東京大学・愛媛大学・東京薬科大学
共同研究者:大久保明(東京大学)・田辺信介(愛媛大学)・藤原祺多夫(東京薬科大学)
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