(10) 胎盤の機能異常に着目した環境有害物質による胎仔の異常発育のメカニズムの解明
〔区分名〕文科-振興調整
〔研究課題コード〕0003CB074
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕石村隆太(環境健康研究領域)・大迫誠一郎・青木康展・遠山千春
〔期 間〕平成12〜15年度(2000〜2003年度)
〔目 的〕環境中の汚染物質のなかには,日常生活における慢性的蓄積により,胎児の奇形,発育不全,流産や死産をおこす有害な物質が多く存在する。酸化的ストレス作用を有するカドミウムのような重金属やPCBのような多環芳香属炭化水素は胎仔の発育不全をおこすことが知られている。また,胎盤は,ステロイドホルモンを分泌する器官でもあり,ステロイドホルモン攪乱作用を有する物質の投与により胎仔の子宮内死或いは分娩異常をおこすことが知られている。環境中に存在するこれら極微量の有害物質の多くは胎盤というバリアでまず防御されるため,多くの場合,胎盤機能の変調は胎仔影響に先行すると考えられる。本研究では,リスク評価のための基礎研究として,有害物質による@酸化的ストレス作用とAステロイドホルモン攪乱作用に焦点を当て,胎盤の機能異常の結果引き起こされる胎仔の発育阻害のメカニズムを明らかにする。
〔内容および成果〕
本研究では,1)妊娠ラットに有害物質を投与して,胎仔の発育不全や死亡をおこさせ,胎盤の組織レベルでの観察と,遺伝子の発現変化を調べる。2)胎盤のモデル培養細胞(Rcho-1)を用い,遺伝子の発現変化,子宮内膜モデルへの浸潤能,ステロイドホルモン合成能等を調べ機能を明らかにしていく。3)機能が明らかになった遺伝子について,胎盤特異的な遺伝子破壊モデルを作成し,有害物質の曝露による胎盤・胎仔への影響を評価する。
本年度までの成果として,1)ラット妊娠中期に極低容量のTCDD(800および1600ng/kg)を投与すると,胎仔の死亡がおきることを観察した。このTCDD曝露ラットの胎盤組織を観察したところ,胎盤を構成する一つの細胞種であるグリコーゲン細胞に変化が生じていた。さらに,胎盤のグリコーゲンレベルが上昇すること,および胎盤のグルコース輸送にかかわるタンパク質,GLUT3の発現量が上昇することが明らかとなった。以上の結果から,TCDD曝露により胎仔の死亡に先行して胎盤のグルコース動態の異常がおきていることが初めて示唆された。2)現在,Rcho-1細胞の形態変化を指標に,分化を促進する内分泌かく乱物質を明らかにしている。
〔備 考〕
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