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研究成果物



 

(6) 野生生物の生殖に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影響に関する研究


〔区分名〕重点特別
〔研究課題コード〕0105AA166
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.3.1 内分泌かく乱化学物質の総合対策に関する研究
〔担当者〕堀口敏宏(化学環境研究領域)・白石寛明・白石不二雄・高木博夫・春日清一・鑪迫典久・早川洋一
〔期 間〕平成13〜17年度(2001〜2005年度)
〔目 的〕我が国に生息する巻貝類,淡水魚類,海産魚類,鳥類などの野生生物における個体数減少,性比の変化あるいは生殖器の奇形などの生殖に関する種々の異常の有無並びにその程度について多角的に検討し,何らかの異常が認められる場合にはそれがその種の個体群に及ぼす経世代的影響を推定して評価するとともに異常をもたらした原因の究明に努める。
〔内容及び成果〕
 本年度の「野生生物の生殖に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影響に関する研究」の中で得られた成果は,主としてアワビ類の内分泌かく乱現象に関するものであり,そこでは有機スズ化合物(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPhT))がアワビ類に内分泌かく乱現象を引き起こすことを室内実験によって確認した。その概要を以下に述べる<CODE NUM=00A1>
 1)有機スズ化合物に曝露されたメガイアワビの生殖巣における組織学的変化
 筆者らは1970年代以降のアワビ資源の減少に再生産をめぐる何らかの異変(内分泌攪乱現象)が関与しているとの仮説を立てて1994年から野外調査と移植実験を継続してきた。その結果,漁獲量激減海域(B海域)で漁獲されたマダカアワビとメガイアワビにおいて雌雄間での性成熟盛期の不一致や卵巣での精子形成が見られ,また組織中の有機スズ濃度が対照海域(A海域)のそれよりも有意に高いことが明らかとなった。さらに,A海域のメガイアワビをB海域の造船所近傍に移植して7ヵ月間のin situ曝露試験を行ったところ,組織中有機スズ濃度の顕著な上昇とともに約90%の雌で精子形成などの雄性化が認められた。
 本研究では,これらの知見に基づいて,メガイアワビに対するTBTとTPhTの2ヵ月間の流水式連続曝露試験を実施し,体内への有機スズ化合物の取り込みを化学分析(プロピル化/GC-FPD法)によって明らかにするとともに,卵巣において精子形成が引き起こされるかについて生殖巣組織標本を作製(ゲンドル液固定,パラフィン包埋,HE染色)して精査した。またその他の組織学的異常についても生殖巣組織標本を精査して検討した。
 その結果,曝露群では曝露したTBTもしくはTPhTの有意な蓄積が見られ(TBTについてp<0.01,TPhTについてp<0.05),特に神経中枢である神経節を含む頭部においてその濃度が高かった(TBT及びTPhTについてp<0.001)。またTBTもしくはTPhT曝露群において卵巣における精子形成が有意に認められた(TBT及びTPhTについてp<0.01)。本実験期間中,供試個体に疾病によると思われる所見はなかった。対照群では卵巣における精子形成が見られなかった。なお,TBTもしくはTPhT曝露群の卵巣における精子形成量は少なかった。これは供試したアワビが発生初期のものや稚貝ではなく成貝であったにもかかわらず,曝露期間(実験期間)が2ヵ月間と比較的短期間であったためと推察された。またTBTもしくはTPhT曝露群では萎縮した初期卵母細胞も有意に見られた(TBT及びTPhTについてp<0.01)。TPhT曝露群では2種類の不明細胞群も有意に観察された(Type Aについてp<0.01,Type Pについてp<0.05)。またTBTもしくはTPhT曝露群の雄の精巣においては有意な組織学的変化が見られなかった。TBTもしくはTPhT曝露によるメガイアワビの卵巣での精子形成は,中腹足類や新腹足類のインポセックスと質的に同等の雌の雄性化現象であると考えられた。腹足類の神経中枢である神経節からは生殖を制御する種々の神経ペプチドが分泌されていることが知られているため,頭部における高濃度の有機スズ(TBT及びTPhT)の蓄積がこれらの神経ペプチドの分泌等を攪乱して上述の組織学的変化の誘導に帰結した可能性が示唆された。
 2)閉鎖性水域や湖沼等に生息する野生生物における内分泌かく乱の実態解明
 霞ヶ浦や諏訪湖等のワカサギやヒメタニシ,東京湾のコノシロ等に対する内分泌かく乱の実態解明を目指したフィールド調査を実施し,生殖巣組織標本の作製及び検鏡,種々の試料に含有されるビテロジェニンや性ホルモン,内分泌かく乱化学物質に関する化学分析を行った。
 このうち,東京湾の羽田沖で2000年3月に漁獲されたコノシロでは,雄73個体中の3個体で精巣卵が観察された<CODE NUM=00A1>東京湾でも富津沖で漁獲されたもの(41個体)や相模湾の逗子沖(34個体)あるいは浜名湖(62個体)産のコノシロでは精巣卵が観察されなかった<CODE NUM=00A1>これまでの調査の結果,東京湾産マコガレイの一部の個体においても精巣卵が観察されてきたことから,内湾域に生息する雄の魚類に組織異常を伴う内分泌かく乱現象が発生してきた可能性がある。
〔備 考〕


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