(20) 相模湾生物の有機スズ化合物による汚染及び生態影響の実態解明
〔区分名〕文科-科研費
〔研究課題コード〕0002CD054
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕堀口敏宏(化学環境研究領域)
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕相模湾に棲息する生物種とその分布,物質循環を明らかにし,同時に絶滅危惧種や貴重種の調査,環境汚染による生物動態の動向把握を通して,相模湾の環境と生物の流動性を解明し,生物保護区制定に向けて活用することが地域連携推進経費に係る本研究課題の究極の目的であり,その一環として,本サブテーマでは相模湾における有機スズ汚染の動向とともに,それにより引き起こされてきた巻貝類のインポセックスの推移及びそれが巻貝個体群の動態に及ぼしてきた影響を明らかにすることを目的とする。
〔内容および成果〕
船底防汚塗料などに使用されてきた有機スズ化合物〔トリブチルスズ(TBT)および(TPT)〕がごく低濃度でも特異的に腹足類にインポセックスを誘導することが知られているが,本研究では,腹足類の有機スズ汚染と内分泌攪乱現象に関する調査研究の一環として,浅海域の食物網における有機スズ化合物の分布について検討した。すなわち,1996年9月に相模湾のA海域における内湾部及び外海部で漁獲された魚類,甲殻類及び貝類(内湾産魚類10種,甲殻類2種,貝類6種,外海産魚類11種)の筋肉,鰓及び肝臓(もしくは消化腺),並びに同海域で採集された海藻類に含まれる有機スズ化合物の含有量をプロピル化/GC-FPD法により分析し,測定した。また内湾産及び外海産のそれぞれ数種においては,上述の筋肉,鰓,肝臓(もしくは消化腺)に加えて脳(もしくは神経節),心臓,消化管,腎臓,鰾,生殖腺及び表皮に分別し,それぞれの有機スズ化合物含有量を同法で分析し,測定した。
魚類の筋肉中濃度に関して,TBT及び総ブチルスズ化合物は内湾産の種ではマゴチ(それぞれ92.9及び117.0ng/g湿重)で,外海産の種ではアイゴ(それぞれ45.9及び57.0ng/g湿重)で最も高く,TPT及び総フェニルスズ化合物は内湾産の種ではマゴチ(それぞれ242.1及び256.0ng/g湿重)で,外海産の種ではイソカサゴ(32.2及び32.2ng/g湿重)で最も高かった<CODE
NUM=00A1>ただし,TBT及びTPTの一日摂取許容量をはるかに下回る水準であった<CODE
NUM=00A1>また概ね,内湾産の種の濃度が外海産の種のそれより高かった<CODE
NUM=00A1>魚類及び甲殻類における筋肉中のブチルスズ化合物及びフェニルスズ化合物の組成は,ほとんどの種でトリ体(TBT及びTPT)が優占しており,貝類や海藻類のそれとは異なっていた<CODE
NUM=00A1>また食物網を通じた濃縮の可能性について検討した結果,TBTでは食物網を通じた濃縮が不明瞭であり,その蓄積量の差は,食性や遊泳範囲などの生態学的特性の差とともに,代謝能力の種差に起因すると考えられた<CODE
NUM=00A1>TPTに関しては,魚食性が強い上に,遊泳範囲が比較的狭く内湾域に長期に滞留するとみられる種(マゴチ及びカサゴ)の濃度が他種に比べて高いことから,定着性で肉食性の種では食物網を通じた濃縮が進む可能性があると示唆された。またTBTは鰓や心臓,腎臓に,TPTは腎臓や肝臓,生殖巣あるいは脳において高濃縮が見られた<CODE
NUM=00A1>
一方,1990年以降の定点調査の結果から,油壷及び城ヶ島で採集されたイボニシの組織中有機スズ濃度及びインポセックス症状の低減率もしくは改善速度は,全国的な傾向と比べて低いと見られた。
〔備 考〕
本研究は文部科学省科学研究費補助金地域連携推進経費における<CODE
NUM=00A2>相模湾環境保全へ向けての生物保護区制定のための学術的研究<CODE
NUM=00A3>(研究代表者:東京大学大学院理学系研究科教授 森澤正昭)のサブテーマの一つである。
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