<HOME <Index of 年報(平成13年度)

研究成果物



 

(12) 海産無脊椎動物の内分泌撹乱並びに生殖機能障害に関する研究


〔区分名〕経常
〔研究課題コード〕0105AE043
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕堀口敏宏(化学環境研究領域)・白石寛明
〔期 間〕平成13〜17年度(2001〜2005年度)
〔目 的〕いくつかの化学物質により生物の内分泌及び生殖に撹乱が引き起こされることが知られており,一部の野生生物においてはすでに異常が顕在化している。しかし,国内の野生生物における内分泌撹乱や生殖機能障害及びそれに起因する個体数減少については不明な部分が多い。ここでは外因性内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の影響を最も受けやすい生物群と考えられる水生生物,特に海産無脊椎動物を対象に内分泌撹乱の実態把握と原因究明及び機構解明を目指す。
〔内容および成果〕
 船底防汚塗料などとして使用されてきた有機スズ化合物(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPhT))がpptレベルのごく低濃度でも特異的に作用して腹足類にインポセックスを引き起こすことが知られており,筆者らは,1990年以降,邦産腹足類におけるインポセックスと有機スズ汚染に関する野外調査と室内実験を行ってきた。ここでは最近3ヵ年に実施されたイボニシのインポセックスと有機スズ汚染に関する全国調査の結果を報告し,論議する。
 1999年1月から2001年10月までに全国の174地点で採集されたイボニシ試料を用いて既報1)に準じた解剖学的な観察を行い,各地点におけるインポセックスの出現率,相対ペニス長指数(Relative Penis Length Index; RPL Index),輸精管順位指数(Vas Deferens Sequence Index; VDS Index)及び陰門閉塞個体の出現率を算出した。また一部の試料の生殖巣組織から病理標本を作製(ゲンドル液固定,パラフィン包埋,ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色)し,光顕で観察した。さらにイボニシの全組織中に含まれる有機スズ(ブチルスズ及びフェニルスズ)化合物の濃度を既報1)に準じて分析・測定した(プロピル化/GC-FPD法)。また過去の調査結果との比較により,イボニシにおける有機スズ汚染レベルとインポセックス症状の経年推移について検討した。1)Horiguchi et al.: JMBA,74,651-669(1994)
 概して,インポセックスは全国的になお広範に観察されたが,ペニスの発達の程度は小さく,RPL Indexは多くの地点で40を下回った。しかしながら,輸精管の形成及び発達がペニスのそれに先行して進むため,ペニスが小さくても輸精管の形成が完了している個体が多く,VDS Indexが4を上回る地点が多かった。またペニスは短いがVDSが5もしくは6と判定される不妊(産卵不能)個体が,低頻度ながら,各地で観察された。イボニシのインポセックスでは輸精管の発達に伴う周辺組織の増成により陰門が閉塞して産卵不能に至るため,輸精管の発達の程度を詳細に観察する必要がある。また造船所や漁港,養殖場の近傍や船舶航行量の多い複数の調査地点(例えば,神奈川,兵庫,岡山,徳島,愛媛,福岡,長崎など)でVDSが5を上回る不妊(産卵不能)個体がなお多数観察され,卵巣での精子形成を認める重篤な症状の個体も見られた。イボニシ全組織中のTPhT濃度は20ng/g湿重を下回る地点が多かったが,長崎港のほか,瀬戸内海や鳴門海峡,関門海峡などの複数の地点で40ng/g湿重をなお上回った(最高濃度:174.2ng/g湿重)。イボニシの全組織中TBT濃度も20ng/g湿重を下回る地点が多かったが,三浦半島や瀬戸内海,鳴門海峡及び関門海峡,長崎港などの複数の地点で40ng/g湿重を上回った(最高濃度:329.0ng/g湿重)。また,兵庫や徳島,高知,愛媛,長崎などの一部の地点では局所的にTBTの高レベル汚染が見られるなど,いわゆる有機スズ汚染の“hot spot”が各地で観察された。またイボニシ全組織中のTPhT濃度に関しては,概ね,各地点で引き続き経年的に減少する傾向が見られたが,TBT濃度に関してはさまざまであり,多くの地点で経年的に緩やかに低減しつつあった反面,ほぼ横這いと見られる地点もあり,また2,3の地点では経年的にその濃度が上昇した。
〔備 考〕


先頭へ

 


HOME

Copyright(C) National Institute for Environmental Studies.
All Rights Reserved. www@nies.go.jp