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研究成果物



 

1.3 化学物質等の環境リスクの評価と管理
3.1 内分泌かく乱化学物質のリスク評価と管理に関する研究
(1) 内分泌かく乱化学物質の新たな計測手法と環境動態に関する開発


〔区分名〕重点特別
〔研究課題コード〕0105AA165
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応調査・研究名〕V.1.3.1 内分泌かく乱化学物質の総合的対策に関する研究
〔担当者〕白石寛明(化学物質環境リスク研究センター)・白石不二雄・多田 満・鈴木規之・彼谷邦光・高木博夫・柴田康行・田中 敦・畠山成久・菅谷芳雄・鑪迫典久・John Edmonds・滝上英孝・西川智浩・磯部友彦
〔期 間〕平成13〜17年度(2001〜2005年度)
〔目 的〕環境中の化学物質を内分泌攪乱物質(環境ホルモン)としてを定性定量にするには,新たな有機化学物質の微量分析の開発とともにその活性を評価するシステムの構築が必要である。化学物質の微量分析とバイオアッセイスクリーニング法を環境分析に適用することによって環境中における環境ホルモンの種類と量が把握できるようになる。本研究では,1)環境ホルモンの微量計測法の開発に関する研究 2)環境ホルモンの新たな生物検出法に関する研究の2分野により環境ホルモンの環境中における汚染実態を明らかにする。
〔内容および成果〕
 1)環境ホルモンの微量計測法の開発に関する研究
 自動濃縮装置を用いノニルフェノール,ビスフェノールAなどのフェノール類をC18固相カラムによる吸着,洗浄,ジクロロメタンで溶離したの後,トリメチルシリル誘導体化し,GC/イオントラップMS/MS法による分析法の検討を行った。実試料の測定では,誘導体化前にアミノカラムによる精製が必要であったが,NCIを用いたガスクロマトグラフ質量分析法や電気化学検出法を用いた高速液体クロマトグラフィーと同様に,水中の10pptレベルのアルキルフェノール類が容易に検出でき,ルーチン的に利用できるものとなった。また,LC/MS/MS法を用いた環境ホルモンの定量分析手法にで,天然の女性ホルモンである17β-エストラジオール(E2)・エストリオール・エストロン及びその抱合体の一斉分析法を検討した。アミド構造を有する固相カラムを用いることにより,検討した物質では親物質と抱合体ともに良好な回収が得られること,酢酸エチルを溶離液とすれば親物質と抱合体を分離できることが見出された。妨害物質の影響を除くためアルカリ性の溶離液を用いた負イオンESI-LC/MS/MS法により実際の都市河川でE2とその代謝産物を測定した。エストロンはE2の約10倍程度(10-数10ng/l)存在したが,エストロン硫酸エステル(数ng/l)を除き抱合体は殆ど検出されなかった。
 E2の高感度分析は非常に煩雑な前処理が必要である。一方,ELISA法によりば,迅速な分析が可能であるが,市販キットによって測定値が異なることや,またかなり高い値が報告される場合があった。このため環境測定用として開発されたE2およびエストロゲンのELISA法とNCI-GC/MS法,LC/MS/MS法の比較を行った。ELISA法とNCI-GC/MS法,LC/MS/MS法とはよい相関性を示し,注意深く設計されたELISA法を用いれば,環境水中のエストロゲンの測定がELISA法で可能であることを示した。
 環境ホルモンの選択濃縮法をとしてMolecular Inprinting法を用いたビスフェノールAの選択的吸着高分子を合成した。またこの樹脂を用いた選択的な吸着法やクリーンアップ法について検討を行った。
 2)環境ホルモンの新たな生物検出法に関する研究
 新たに樹立した2種のモノクローナル抗体を用いてメダカビテロゲニンのELISA法による全自動分析法およびプレート法を確立した。また,陸水系のバイオモニタリング手法の構築のため,ワカサギの卵巣からイオン交換クロマトフィによりビテロゲニン画分を分取し,これを免疫源として抗ワカサギビテロゲニン抗体を作成した。精製品の分子量は,SDS-PAGEによる測定では120kDaであり,リポビテリンが主成分と思われた。ウエスタンブロッティングの結果から,本抗体はE2曝露した雄ワカサギの血漿中に特異的に誘導される免疫原と同一分子量のタンパク質,および雌に発現するビテロゲニンと反応していることを確認した。メダカビテロゲニン全自動EIA測定法と同様の方法で,肝臓ホモゲネートをサンプルとするワカサギビテロゲニンの測定系を構築した。測定範囲は0.3-60.0ng/ml再現性は測定内の変動口2.7〜9.0%,測定間の変動は3.5-5.3%と良好であり,希釈直線性試験の結果は93.9-103.4%であった。本法におけるビテロゲニン最小検出濃度(2SD法)は0.08ng/mLとなった。また,3つの湖沼において産卵時のワカサギを採取し,肝臓ホモゲネート中のビテロゲニン濃度を測定した。1つの湖沼で雄のワカサギに検出例が見られたが,産卵期の雌の影響である可能性も報告されており,今後,雌雄のビテロゲニン量のベースラインやその季節変動に関するデータの収集と解析が必要であると考えられた。
 イーストを用いたTwo-Hybrid Systemによるエストロゲンアッセイでは,その簡便化,高感度化のための改良を行ない,96ウェルマイクロプレートと化学発光法を組み合わせることにより,多試料を迅速かつ高感度に測定できる手法(YMCE test)を開発した。本年度は,リガンドであるE2と試験化学物質のエストロゲンレセプターへの競合反応を行い,E2の強いアゴニスト作用(転写活性化)を試験化学物質がどの程度抑えるかを調べる,エストロゲンレセプター遺伝子を導入した酵母を用いるエストロゲン・アンタゴニスト試験法を検討した。アンタゴニスト試験においてはウェル内の培地にあらかじめE2を600pM(163ppt)になるように添加した。試験化学物質,E2,及び酵母浮遊液の入ったプレートは4時間培養し,試験化学物質とE2との競合反応を行った。濃度に依存したβ-ガラクトシダーゼ量の抑制が認められる試験化学物質について,40%以上の抑制を示した物質をアンタゴニスト物質として,その50%抑制(影響)濃度(EC50)を求め活性値とした。酵母への毒性作用によってβ-ガラクトシダーゼ量が抑制されたのではないという証明のために,レセプター非依存でβ-ガラクトシダーゼを発現する遺伝子組み換え酵母を用いた酵母毒性試験法(YTOX testと略す)を開発し,アンタゴニスト試験と同じ試験濃度領域で試験することにより,評価を行った。また,併せて,試験化学物質をラット肝S9により代謝して試験する代謝化試験(+S9testと略す)も行った。YMCE testによるアンタゴニスト試験システムの有効性について,乳癌の抗癌剤としても知られ,エストロゲン・アンタゴニスト作用があるタモキシフェンの水酸化体である4-ヒドロキシタモキシフェン(HTx)を用いて試験を行った。HTxは,そのままの試験(−S9test)では試験した濃度の5,000nM以下で,濃度に依存したアンタゴニスト活性が認められた。50%抑制(影響)濃度(EC50)は1,100nM(430ppb)であり,この試験濃度領域では酵母に対する毒性は認められなかった。一方,代謝化試験(+S9 test)では試験した500nM以下で,濃度に依存したアンタゴニスト活性が認められ,EC50は230nM(89ppb)であった。酵母アッセイによるアンタゴニスト試験においては,HTxを陽性対照として利用できることがわかった。環境省が優先的にリスク評価を行うと選定した化学物質17種類について,酵母によるエストロゲンアゴニスト活性とアンタゴニスト活性,およびER-ELISA法による受容体結合能を試験した。アゴニスト活性が認められた試験化学物質はフタル酸ブチルベンジル,4-ノニルフェノール(NP),p-t-オクチルフェノール(OP),及びビスフェノールA(BPA)の4物質が−S9testで陽性を示し,BPAは,+S9testでは−S9testより弱い陽性を示した。一方,アンタゴニスト活性はトリフェニルスズ(TPT),フタル酸ジシクロヘキシル,トリブチルスズ(TBT)の3物質が−S9testで陽性を示し,TPT,NP,OP,及びBPAの4物質が+S9testで陽性を示した。
〔備 考〕


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