(4) 微生物を活用する汚染土壌修復の基盤研究
〔区分名〕戦略基礎
〔研究課題コード〕9601KB197
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕岩崎一弘(生物多様性の減少機構の解明と保全プロジェクトグループ)・兜 眞徳・森田昌敏・内山裕夫・冨岡典子・向井 哲
〔期 間〕平成8〜13年度(1996〜2001年度)
〔目 的〕世界各地でトリクロロエチレン,テトラクロロエチレンおよびPCB等の有機塩素化合物や水銀,6価クロム等の重金属による土壌・地下水汚染が顕在化し大きな問題となっている。これらの汚染を浄化するために,より安価でかつ無害化処理技術である微生物を活用して汚染を修復するバイオレメディエーション技術の開発が期待されている。本研究では,トリクロロエチレン,PCBや水銀等で汚染した土壌・地下水の修復をケーススタディとして取り上げ,バイオレメディエーション技術の実用化に際してブレークスルーすべき課題に関する基盤研究を行う。
〔内容および成果〕
(1)分解能強化微生物の開発
バイオレメディエーション技術を実施するためには,有用な微生物を開発することが重要である。本年度は新たにTCAおよびTCEを同時に分解できるエタン酸化細菌TA27株を土壌中より分離した。本菌はMycobacterium
sp.に属しており,高濃度のTCA(75mg/l)およびTCE(100mg/l)を分解できること,また種々のハロゲン化脂肪族炭化水素を分解できることから,複合汚染した汚染の浄化に有効な微生物であることが判明した。また,本菌の分解酵素はヒドロキシラーゼとリグターゼから構成されていた。
(2)土壌中における微生物の挙動解析
TCEを好気的に分解するメタン酸化菌M株を環境浄化へ適用するためには,環境中での挙動を迅速に定量する必要がある。そこでM株のTCE分解のキーエンザイムであるMMO遺伝子の一部をPCRで増幅することによるM株の検出を試みた。M株を接種した土壌・地下水カラムの流出水試料中のM株を,従来の培養法及び今回開発したPCR法で計数した結果,従来では,計数に1ヵ月を要したものが,本法を用いることにより数時間で計数が可能になった。
(3)大型土壌・地下水シュミレータによるバイオレメディエーション技術の適応性の評価
縦,横,高さ,1×2×1.5mからなるステンレス製の大型ライシメータを作成した。本ライシメータは,縦1mの中央に壁があり,2室に分かれている。これらに,川砂及び地下水を充填し,TCE及びM株の挙動さらにM株の浄化効果について検討した。TCEの挙動については,30cm/dayの速度で通水し,TCE濃度の変化を調べた。TCEは,30cmごとの移動で74〜94%の減少が観察され,かなり土壌中に残留することが確認された。M株は30cmごとの移動で,細胞数が57〜90%に減少した。1mlの川砂土壌は3.2X106cellsのM株を吸着することが明らかとなった。ついで土壌・地下水をTCE
0.2mg/lで汚染した後,M株を5X107細胞/mlになるよう添加し,流速0.63m/hの速度で地下水を循環したところ,12時間後には,検出限界の0.003mg/l以下となった。またメタン,酸素,窒素,リンを含んだ地下水を通水することにより,地下水・土壌中でM株は生存し続けることが確認された。1gのM株は0.1gのTCEを分解でき,TCE汚染土壌・地下水の浄化に有効であることが判明した。
〔備 考〕
研究代表者:矢木修身(東京大学)
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