(3) 小型合併処理浄化槽によるリン除去及び消毒の高度化に関する研究
〔区分名〕環境-公害一括
〔研究課題コード〕9901BC244
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.2.1.4 液状廃棄物の環境低負荷・資源循環型環境改善技術システムの開発に関する研究
〔担当者〕井上雄三(循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)・山田正人・西村和之・稲森悠平・水落元之
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕平成8年4月の浄化槽の構造基準及び維持管理基準の改正により,窒素を高度に除去する小型合併処理浄化槽に係る基準が追加され,現在,閉鎖性水域等を抱える市町村においてその積極的な普及がなされつつある。しかし,公共用水域中のリンは,下水道や合併処理浄化槽の普及により,汲み取り便所の状態の時よりも増加する場合があり,リンの除去対策が急務である。
また,小型合併処理浄化槽では,簡易で確実な塩素消毒法を採用しているが,放流水について,残留塩素や消毒副生成物による水生生物や生態系への影響を最小限にとどめながら安定性並びに微生物学的な安全性を確保できる技術の開発も緊急を要する課題である。
以上ことから,本研究では以下の課題を検討した。
(1)リンの除去技術と回収技術の開発
小型合併処理浄化槽において,処理水のリン濃度1〜2mg/l以下を得るための吸着剤の適用条件,鉄電解条件,イオン交換膜による電気透析条件について検討し,リン除去装置の開発を行う。また,開発したリン除去装置を窒素除去型の小型合併処理浄化槽に付加し,BOD,SS,T-N及びT-Pのいずれをも除去可能な高度処理型小型合併処理浄化槽の開発を行う。また,除去されたリンの有用資源としての回収及び有効利用に係る技術開発を行う。さらに,これらの能力を安定的に維持するための,現場で簡易に測定できる計測技術の開発を行う。
(2)処理水の有効な消毒技術の確立
小型合併処理浄化槽における病原性微生物の挙動ならびに水生生物への残留塩素の影響を評価するとともに,これらを考慮した塩素消毒技術の高度化について検討し,適正な塩素添加の条件並びにその技術の確立を行う。さらに,生態系の保全を考慮した新たな消毒技術の開発と小型合併処理浄化槽への適用に関して研究を行う。
一方,社会資本整備の高度化は,生活の利便性と快適性をもたらすが,各種の資源やエネルギーが投入されることから地球環境に及ぼす負荷も無視できず,新たに開発される技術・システムは,経済性やフィージビリティーと共に環境負荷等が評価されたもので無ければ実用化されなくなると考えられる。これらのことから,前述の検討において提案された各技術のフィージビリティーについて評価を試みた。
〔内容および成果〕
(1)リンの除去技術と回収技術の開発
破過点に達するまでリンを吸着処理したハイドロタルサイト系吸着剤(HTAL-Cl)カラムに,脱離液(30%NaCl+3%NaOH)をSV=1〜2hr−1で通水し再生液(35%MgCl2)をSV=1hr−1で通水することにより繰り返し再利用できることが確認された。脱離液中のリン濃度は,処理対象水中濃度の10倍以上であり,Ca/P=3でCaCl2を添加することにより98.0%のリンを沈殿物として回収できることが明らかとなった。
ハイドロタルサイト系吸着剤(TPEX)は低〜高濃度の広い濃度域,排水基準であるpH5〜9の中性域において,4meq/g(約60mgP/g)と高いリン酸イオン吸着能を示した。二段階再生法により約80%の再生率で10回の再生が可能であった。粒状体による実排水からのリン除去実験でも良好な除去能力を示し,実用化の見通しは明るい。
鉄電解法によるリン除去と発生するリン凝集物の回収について検討した。鉄電解法は,維持管理の容易性や経済性から,合併処理浄化槽におけるリン除去法として適していると考えられた。ネオジム磁石を用いたリン回収は,対照槽に比べて最高で3倍のリンが回収できたが,リン凝集物の回収率としては約50%にとどまった。今後,回収率を向上させることや磁石の価格の低下が必要であることがわかった。
電気透析法による実験装置で,合併処理浄化槽槽内水を処理した場合の処理性能,維持管理性及びリンの回収性を検討した。その結果,浄化槽槽内水からリンを除去することが可能であり,除去したリンを固体として濃縮できることが明らかとなった。
(2)リンの簡易分析
モリブデン青を利用したミニカラムによるリンの簡易測定法について,より迅速化するための改善法の検討を行った。ポリ塩化ビニル(PVC)を担体とした吸着剤を調整し,それを充填したカラムにモリブデン青溶液を吸引ろ過法あるいは毛管給水法で供給した。これらの方法によって測定時間は短縮できた。吸引ろ過法に比べて毛管給水法では着色帯長さは短いが,着色帯長さのばらつきが小さく,かつ,より低濃度まで測定が可能であった。着色帯長さはリン濃度と直線的関係にはなかったが,精度の高い検量線が得られた。したがって,本法は生活排水中のリンを測定する簡易測定法として有用といえる。
目視によるリン酸態リン比色測定に用いる標準色見本の色分割精度を向上させ,その標準色見本を用いた場合の測定精度に関する検討を行った。その結果,
新色見本を用いた測定は,従来の色見本を用いた測定より測定精度が向上したが,より測定精度を向上させるためには,試験紙と色見本の質感を統一する等,測定条件の改善が必要であると考えられた。
(3)処理水の有効な消毒技術の確立
DSE電極による塩素イオン100mg/l溶液からの遊離塩素発生には,硫酸イオン100mg/lの存在が影響しないことが確認された。連続使用による遊離塩素発生量の低下は,タイマー制御による極性反転で抑制できることが確認された。
下水処理場の流入水在来の野生大腸菌群を対象として,紫外線による不活化及び光回復の程度について検討した。低圧紫外線及び中圧紫外線による消毒及び光回復の定量的評価に関して,DNA上の損傷であるピリミジン二量体の定量方法の応用の可能性が示唆された。
浄化槽におけるCryptosopridiumオーシスト除去について,4種類の小型合併処理モデル浄化槽と1種類の単独処理モデル浄化槽を用いて検討した。単独処理モデル浄化槽と比べると,合併処理モデル浄化槽はオーシスト除去に効果的であったことがわかる。しかし,高度処理型浄化槽である生物膜ろ過方式のモデル浄化槽では,生物膜ろ過槽に捕捉されたオーシストが,処理水中に著しく溶出することが観察された。
合併浄化槽消毒前処理水をセリ水耕栽培池で浄化し,大腸菌とファージを除去することを検討したところ,糞便性大腸菌の除去率は9割以上,DNAファージの除去率は85%程度と高い値をした。
(4)実用化の可能性の評価
ハイドロタルサイト系リン吸着剤によるリン除去・回収技術は,粒状活性炭と類似した利用形態が可能であると共に再生段階でリンを固形物として回収できることが示された。HTAL-ClやTPEXによるリン除去・再生利用システムの今後の課題は,製品化の段階にある粒状化手法の確立とシステムのコストやLCA的評価である。
鉄電解法は,小型合併処理浄化槽に適用が容易なリン除去法であると判断できた。しかしながら,磁石を利用してリン回収率を高める手法は,リン凝集物の捕捉率をより大きくする方法の検討が必要であり,現状では磁石の価格が高いことから,水面積を大きくした沈殿槽によるリン回収手法が実用的と考えられた。
イオン交換膜を用いた電気透析によるリン除去装置は,仕様や運転条件の検討により,高いリン除去機能を有するとともにアンモニア性窒素を同時に除去可能な技術である。今後,実用化が期待される技術である。
モリブデン青を利用したミニカラムによるリンの簡易測定法は,希釈やろ過などの前処理を必要とせず,モリブデン青の着色帯長さとしてリンを定量できることから目視でも従来法より精度の高い測定が可能である。本測定法の実用化には,実排水の測定をさらに繰り返すとともに,維持管理従事者による測定などの課題が残されているが,実用性の高い手法である。
リン酸態リン濃度測定用試験紙によるリン測定手法の精度は,新色見本の導入により測定精度の向上が図れた。さらなる測定誤差の低減には,測定者の色識別能力を養う必要があるものと判断された。なお,今回製作した色見本を使用することにより,1検体当たりの必要経費は,従来法の55円より1円程度の上昇となると評価された。
紫外線消毒における細菌増殖能力の光回復の危険性は,DNA上の損傷度合いにより把握出来ることを示したが,定量性や利用性の向上にはさらなる検討が必要である。
浄化槽内におけるCryptosporidiumは,生物膜ろ過槽に捕捉された後に再溶出することが示されたことから,消毒手法の高度化と共により安全性の高い浄化槽構造への有益な情報提供となった。
浄化槽放流水の安全性に関する魚類等を用いた毒性試験による評価は,より安全な社会に向けた基盤整備において有益な情報提供であった。
〔備 考〕
共同研究機関:(財)日本環境整備教育センター
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