(4) 廃棄物最終処分場における微量汚染物質の長期的挙動とその制御方策に関する研究
〔区分名〕環境-公害一括
〔研究課題コード〕0002BC241
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.2.1.3 資源循環・廃棄物管理システムに対応した総合リスク制御手法の開発に関する研究
〔担当者〕大迫政浩(循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)・井上雄三・山田正人
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕最終処分場の安全性に対する住民不安から施設整備が進まない現状の中で,処分場に存在する微量汚染物質の長期的挙動の把握とその制御方策の確立が喫緊の課題として要請されている。そこで本研究では,重金属類などの無機汚染物質とダイオキシン類などの疎水性有機汚染物質(hydrophobic
organic pollutants, HOPs)の埋立層内における超長期的挙動モデルを構築し,長期的にリスクを制御するための技術システムを提案する。
特に本年度においては,埋立層での焼却残渣の物理的・化学的変化の可能性を調査するために,ある実際の埋立地のボーリング調査および充填後5〜7年経った大型模擬埋立地(ライシメータ)から試料を採取して,腐植化・鉱物化に関する分析を行う。この結果を無機・有機汚染物質の長期的挙動モデルに反映する。また,制御技術として,焼却施設内で発生する二酸化炭素や焼却熱を用いて焼却残渣中の有害物質を固定化・安定化させるとともに,エージングによる鉱物化の促進,排水の効率的処理を効果的に行うハイブリッド型システムである洗浄型促進エージング法についての検討を行う。特に,蒸気養生による重金属類およびダイオキシン類の溶出防止効果について基礎的な検討を行うとともに,エージング効果による鉱物学的な安定化について各種の分析を行い評価する。
〔内容および成果〕
実際の産業廃棄物処分場の2ヵ所の埋立区画で数十メートルの深さまでボーリングを行い,コアサンプル採取するとともに,焼却主灰が入った大型模型槽(ライシメータ)の深さごとに試料を採取し,その試料の腐植化および有害物質の溶出ポテンシャルに関する検討を行った。その結果,焼却残渣を充填した大型模型槽では,より表層で腐植化が進んだことが分かり,深くなるにつれて腐植化が遅れることが分かった。腐植化の進行は表層で植物の繁茂がみられた模型槽ほど顕著であり,植物の繁茂がみられなかったばいじん単独の充填槽では腐植化は進んでいなかった。腐植化の進行が顕著であるもので,表層から50cm程度まで植物の根毛が侵入していることが観察され,植物の根毛から放出される有機物によって中性化と腐植化が促進されるものと考えられる。また,コンポストなどの有機物と混合して埋め立てた焼却残渣は,単独で埋め立てた焼却残渣より腐植化・鉱物化などの土壌化がより速く進むことが確認され,埋立時に生物学的に安定化されたコンポストなどの有機物を存在させることによって極めて短期間で土壌化を促進させる可能性を見いだした。土壌化が進行した焼却残渣は,重金属やダイオキシン類などの溶出ポテンシャルも大きく低減されており,腐植物質による捕捉効果が影響していると考えられた。一方,産業廃棄物処分場のボーリングでは,燃え殻,汚泥,シュレッダーダストと考えられるサンプルを採取できた。埋立層内は嫌気状態であり,ほとんどのサンプルで安定化は進んでいなかったが,一部の層では腐植化による安定化も認められた。安定化が進んでいない層では生物分解性の溶解性有機物質も多量に残存しており,有害物質の溶出挙動も複雑であった。
このように,ボーリング調査のコアサンプルおよびライシメータの試料分析の結果から,腐植化に大きく影響する因子の一つは,ある程度の有機物の存在であることが分かったが,その濃度(量)に関してはさらに検討が必要であると考えられる。
つぎに,HOPsの溶出試験に関する様々な文献のレヴューを行った。その結果,溶出試験に係わる一般的な条件因子以外にも,有機・無機質のような固体質によるHOPsの溶出特性,溶媒のマトリックスの組成,溶解性として見なす粒径範囲と固液分離法などの検討が必要であることが分かった。特に,様々な溶出因子の中で温度および共存物質が溶出能を高め,イオン強度は溶出能を下げた。pHは,無機汚染物質と異なって有機汚染物質には直接的な影響はないと認められた。共存物質の一つである溶存性フミン物質の場合,HOPsの溶出因子に対して各種実験を行い,固体質(焼却残渣)−HOPs−溶存性フミン物質の系での溶出モデルに関する基礎的な検討を行った。この系において溶存性フミン物質の固体質への吸着特性を調査し,その結果,同一試料においては吸着係数KSDHM,は高い温度,高いpHの条件で低下,すなわち遊離状態の濃度が高くなり,試料の有機炭素量が多くなると吸着係数KSDHM,も高くなることが分かった。この溶存性フミン物質は,超長期間に渡って埋め立てられた焼却残渣の腐植化によって生成される可能性があると考えられる。
ハイブリッド型システムである洗浄型促進エージング法の検討においては,焼却施設の蒸気利用を想定して,焼却残渣の蒸気養生による重金属およびHOPsの溶出低減効果および各種エージング法による重金属の鉱物学的安定化による溶出低減効果について実験的に検討した。蒸気養生の効果については,最適条件など,さらに検討が必要である。エージングによる効果については,X線回折による分析などによって安定な鉱物が生成している可能性が見いだされたが,さらにデータの蓄積が必要と考えられた。
最後に,埋立地で汚染物質の超長期的挙動に関して,埋立セル単位で各種の生物反応や物理・化学反応を考慮した移流・分散モデルを設計し,計算プログラムを作成した。本モデルは,固体マトリックスとしての焼却残渣の腐植化による性状変化,媒体として水の移動に影響する透水係数などの長期的な変化を考慮している点が特徴的である。しかし,それらの変化の時間特性に関するパラメータについては知見に乏しく設定が困難であり,パラメータ設定のための検討がさらに必要であると考えられた。
〔備 考〕
本研究は,北海道大学工学研究科 田中信寿教授および九州大学工学研究院 島岡隆行教授の研究グループとの共同研究である。
先頭へ