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研究成果物



 

(4) 最終処分場管理における化学物質リスクの早期警戒システムの構築

 
〔区分名〕環境-廃棄物処理
〔研究課題コード〕0103BE279
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.2.1.2 廃棄物の循環資源化技術,適正処理・処分技術及びシステムに関する研究
〔担当者〕井上雄三(循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)・山田正人・安原昭夫・酒井伸一・大迫政浩・鈴木 茂・山本貴士・滝上英孝・毛利紫乃
〔期 間〕平成13〜15年度(2001〜2003年度)
〔目 的〕化学物質汚染への関心の高まりによる住民の安全性への不安により,全国各地でごみ焼却施設や最終処分場等の廃棄物管理施設の設置や運営が難しくなっている。多様なモノが流れこむ最終処分場では,リスク管理の視野に入れるべき化学物質は莫大な数にのぼるため,そのリスクの大きさに応じた適正な対策をとるべきである。そのためには,包括的で迅速かつコスト負担の少ないリスクポテンシャルの把握が必須である。従来のリスク評価に対して,予防原則に基づく環境リスク管理手法は,監視が必要な「場」と化学物質の絞込み,予期しない有害物質の積算・複合毒性のカバー,予防的対策発動の判断基準,リスクコミュニケーションにおいて機能を持つと期待されている。
 本研究は,最終処分場におけるより精緻かつ合理的なリスク管理を目指して,循環・廃棄物の分野で優先的に対策を講じるべき化学物質を決定するための基礎資料として,循環・廃棄物の観点から重要な化学物質を順位付け(ランキング)した「循環・廃棄物分野における化学物質プライオリティリスト」を作成するとともに,種々の生化学的,生物学的試験の計測技術を現場監視に適合させ,指標の総合性と不確実性に配慮して監視場所や施設特性,要求に対応した試験の最適な組みあわせ(テストバッテリー)と試験結果の総合化手法を検討する。さらに最終的に予防的かつ合理的な対策発動の基準値(アクションレベル)を設定し,予防的対策と連動する解析評価手法を確立することにより最終処分場における「早期警戒システム」を構築を目的としたものである。これは,規制物質に対する検知・監視手法の総合化であるとともに,未規制物質によるリスクを補完するものである。図1に概念を示す。
〔内容および成果〕
 これまでのランキング手法の改良と,初年度は履歴・構成について情報のある実際の最終処分場浸出水とその処理水を対象とし,一般水質,有機・無機化学分析,表1に示す生物試験を適用し,手法の浸出水監視への最適化,浸出水特有の試験系への阻害物質ならびに,優勢毒性物質の検索を行った。ヒトを含む周辺水環境への影響と地下水,水源を通したヒトへの曝露の想定の両者を対象としている。
 1)「循環・廃棄物分野における化学物質プライオリティリスト」の作成:従来の優先化学物質ランキングモデルを改良した。主な改良点は,ランキング対象化学物質選定(スクリーニング)および4つの評価項目の2項目(EP:環境存在性,Q/P:生産や処理施設の分散性)の二点である。また,4つの評価項目の等価重み(Case1)およびアンケート調査による重み(Case2)の2つの評価法でスコアリングを行った。その結果,トップ10のランキング物質は,Case1ではベンゼン(75.6),ダイオキシン類(70.8),鉛およびその化合物(67.5),フェノール(64.4),フタル酸ビス(2-エチルへキシル)(66.4),フタル酸ジ-n-ブチル(61.9),テトラクロロエチレン(61.0),四塩化炭素(57.5),クロロホルム(56.9),1,2-ジクロロエタン(56.0)となった。また,Case2では,ダイオキシン類(76.9),鉛・カドミウムおよびその化合物(73.7),フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(73.5),などの可塑剤,防黴剤などの毒性指数の高い物質が上位を占めた。
2) 共通試料の分析:履歴,構成の推測可能な4処分場より浸出水6試料,うち3処分場より処理水3試料について化学分析,生物試験を行った。
 化学分析結果:一般水質項目・無機元素・陰イオン及びアンモニウムイオン・イオンバランス・吸着型全有機ハロゲン(AOX)ならびにフェノール,フタル酸エステル,その他有機酸の分析結果より,浸出水でTOCとDOCが100mg/L以上を示し,高濃度の有機性汚濁物質を含んでいることが推測され,無機成分についてはほぼ全体像を把握できた。また,水処理工程では無機元素の大半は除去されない。浸出水原水中の吸着型全有機ハロゲンは処理により約半量にまで低減されていた。
 生物試験結果:両生類初期胚,魚類,藻類,甲殻類の生物個体,ならびに細菌を使用した急性毒性試験で数種の浸出水に検出された毒性は処理により低減しており,感度の差はあるものの結果に類似の傾向が見られた。培養細胞を使用した細胞毒性に関し,浸出水で特に試験系への阻害が懸念される高浸透圧の問題を検討したところ,数種の試料では培地の塩化ナトリウム添加濃度の調整が必要であったが,280mOsm/kgまで対応可能とされた。遺伝子毒性,変異原性試験に関し,生物個体を供試生物とした小核試験,コメットアッセイでは非濃縮試料において有意の毒性が検出され,適用可能であった。ただし急性毒性を示す試料では測定不能なため希釈が必要である。一方細菌試験系についてはAmes試験で非濃縮,umu試験で10倍の減圧濃縮試料の毒性が検出可能であったものの,感度の上でさらなる改良の必要があった(図2)。
 魚類ビテロジェニン誘導能試験では処理水に毒性が検出される傾向があり,今後内分泌攪乱性評価についてバインディングアッセイ等を検討している。
 また,急性毒性,遺伝子毒性,内分泌攪乱性の間に毒性強度の関連は見られなかった。
 以上の多岐にわたる試験結果より,最終処分場のリスク監視のツールとして,試験系そのものの有用性評価,最適化を進め,次年度に検討しているテストバッテリを構成する試験の選定のための基礎情報を得た。
〔備 考〕
研究代表者:井上雄三(循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)
共同研究者:木苗直秀(静岡県立大学)・小野芳朗(岡山大学)・迫田章義(東京大学)・楠井隆史(富山県立大学短期大学)・国本 学(北里大学)・岡村秀雄(岡山大学)・松藤康司(福岡大学)・行谷義治(日本環境梶j


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