(6) 廃棄物対策を中心とした循環型経済社会に向けての展望と政策効果に関する定量的分析
〔区分名〕環境-廃棄物対策
〔研究課題コード〕0001BF036
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕増井利彦(社会環境システム研究領域)・森田恒幸・甲斐沼美紀子・井上雄三・大迫政浩・山田正人
〔期 間〕平成12〜13年度(2000〜2001年度)
〔目 的〕本研究の目的は,1990年より中国,インド等のアジアの主要国と共同して,地球温暖化対策の効果分析のために開発してきた大規模な計算機シミュレーションモデル(AIM2.0)を用いて我が国の循環型経済社会に向けての展望を,廃棄物対策や温暖化対策への効果を中心に定量的に解析するとともに,循環型社会への転換を進めるいくつかの政策や取組をデザインし,その効果を定量的に明らかにすることである。特に,廃棄物の最終処分地の減少や二酸化炭素排出量の削減,さらには廃棄物ライフサイクルだけでなくプロダクトサイクルをも含めた有害化学物質の環境への排出の削減等の環境制約がもたらす経済構造の変化や財及び物質のフローを定量的にとらえることにある。さらには経済的な視点からとらえた循環型社会の枠組みの評価とともに,人の健康,環境へのリスク評価・管理を行うモデルを構築・統合し,経済活動や廃棄物管理事業から生じるリスクを総合的に評価することによって作り上げることができるリスク削減のための施策が経済活動及び経済構造,マテリアルフローに対してどのような影響を与えるかを定量的にとらえることも本研究の目的とする。
〔内容および成果〕
本研究課題では,(1)廃棄物処理業の経済評価とそのマクロ経済への影響に関する定量的分析 (2)マテリアルフロー及びサブスタンスフローからみた廃棄物のリスク評価・管理モデルの開発 (3)政策デザインとその実施のための定量的分析の3つのサブ課題からなる。サブ課題(1)では,将来の経済発展とともに廃棄物処理がどのように行われ,財の循環がどのように変化するかをマクロ的視点から評価するために,AIM日本モジュール拡張版である応用一般均衡モデルを改良する。サブ課題(2)では,材料や製品の流れ(マテリアルフロー)やそれらに含まれる化学物質の流れ(サブスタンスフロー)を統合的にとらえ,生産段階をも含めた廃棄物処理ライフサイクルにおいて重要な有害化学物質を対象に,人及び生態系への作用量の調査・解明,環境への漏出量などの評価を行い,リスクを考慮した循環型経済社会の評価を行う。また,リスク評価の視点をAIM日本モジュール拡張版に反映させたシミュレーションを行う。サブ課題(3)では,循環型社会の構築に向けた政策をデザインし,これらの政策をAIM日本モジュール拡張版に反映させ,それぞれの政策の効果を経済発展及びリスク評価の視点から定量的に評価する。
サブ課題(1)では,トップダウンモデルであるマクロ経済モデルと,ボトムアップモデルである下水汚泥処理モデルの統合を行い,マクロ経済全体の整合性と個々の汚泥処理技術に関するリアリティの両面を考慮に入れた分析を行った。その結果,下水汚泥の溶融処理といった現在では未導入の技術が,廃棄物最終処分制約が厳しくなると想定したシナリオでは導入されるようになり,2010年において環境制約により生じる1.8兆円のGDPロスが100億円程度回復され,さらに再生品の需要を増加することにより,GDPロスは緩和される。また,マクロ経済モデルそのものについても,部門・財の細分化を行った。特に,化石燃料は詳細に取り扱うことができるようになり,ガソリン及び軽油に対する課税(道路特定財源)を暫定税率から本則税率に変更した場合,2010年の二酸化炭素排出量が約9MtC増加するという結果を得た。このほか,各部門の投資が経済活動に及ぼす影響を評価するための固定資本マトリクスの導入,税の徴収に関する政策評価を行うための政府部門の最終需要部門からの分離,一般廃棄物処理技術のデータベース化とその選択に関するモデルの構築,産業廃棄物のフローについてより詳細な調査の実施など,より実態を反映させたモデル構造,データの更新を実施した。
サブ課題(2)では,平成12年度において以下の研究を実施した。従来の優先化学物質ランキングモデルを改良した。主な改良点は,ランキング対象化学物質選定(スクリーニング)および4つの評価項目の2項目(EP:環境存在性,Q/P:生産や処理施設の分散性)のである。また,4つの評価項目の等価重み(Case1)およびアンケート調査による重み(Case2)の2つの評価法でスコアリングを行った。その結果,トップ10のランキング物質は,Case1ではベンゼン(75.6),ダイオキシン類(70.8),鉛およびその化合物(67.5),フェノール(64.4),フタル酸ビス(2-エチルへキシル)(66.4),フタル酸ジ-n-ブチル(61.9),テトラクロロエチレン(61.0),四塩化炭素(57.5),クロロホルム(56.9),1,2-ジクロロエタン(56.0)となった。また,Case2では,ダイオキシン類(76.9),鉛およびその化合物(73.7),フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(73.5),フタル酸ジ-n-ブチル(71.3),フタル酸ジ-n-オクチル(66.6),フェノール(65.2),カドミウムおよびその化合物(65.0),チオりん酸o,o-ジエチル-o-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジン)(64.3),ベンゼン(61.6),クロロホルム(61.2)となり,評価項目の重み付けでランキングに違いが出ることが示された。前年度のサブスタンスフローモデルを実際の社会に対応でき,政策シナリオの変化を評価できるように@製品寿命(時定数)の導入 A製品別のフローが表現できるモデルの再構築 B部品単位での詳細なパラメータの設定Cリサイクル段階でのコンパートメントの導入を考慮して改良を行った。その結果,前年度の各コンパートメントへの鉛の分配と大きな違いを示した。特にリサイクルコンパートメントへの蓄積が著しく,結果的には産業廃棄物処分場への蓄積に取って代わったことになった。一方,政策シナリオ:@家電リサイクル法の評価 A鉛基板の回収の評価 B無鉛はんだ導入の評価による鉛のフローへの影響を評価した。その結果,廃棄過程における鉛蓄積量に着目した場合,家電リサイクル法の導入が鉛蓄積量の軽減に最も大きな効果を与えたが,鉛基板の100%回収と無鉛はんだの導入は,蓄積量の差がほとんどなく,また削減効果もそれほど大きくなく,的確な評価のためには溶出量等の指標の導入が必要となった。最終処分場のリスク管理のための早期警戒システム開発のための基礎作業として,バイオアッセイによる毒性総合評価手法のプロトコルを進めた。
サブ課題(3)では前年度にデザインした政策を,経済モデルを用いて評価した。政策として取り上げたものは,課税政策,廃棄物発生抑制等の技術進歩,環境投資の拡大,環境産業の育成,情報技術の進展,脱物質化などである。主な分析結果として,以下のことが明らかとなった。環境負荷の高い部門への課税は,環境負荷の低減には効果が見られる一方で経済的なロスも大きくなるが,環境負荷を緩和するような活動への減税により,経済活動のロスを回復することができる。製造段階等での廃棄物再生品の利用を拡大する政策は,環境制約の緩和を通じて経済活動の回復をもたらす。また,廃棄物の発生抑制や処理効率の高い技術についても同様の効果がもたらされる。環境投資の拡大は,限界削減費用の高い環境問題に対して行う場合は有効であるが,限界削減費用の低い環境問題に対する環境投資は,環境投資分だけ精算投資が減少することから生産能力を低減させる結果となり,環境投資の対象とその投資水準についてのバランスが必要となる。また,環境投資という需要面だけではなく環境産業の育成という供給面を配慮することで,経済的な効果はさらに高まることが明らかとなった。脱物質化として,経済活動のサービス化をモデルで表現し,シミュレーションを実施したが,製造部門の縮小は廃棄物の受け入れ先を縮小させることになり,廃棄物最終処分の限界削減費用は増加する結果となった。このことから,廃棄物処理の受け入れ先を確保した上での経済活動のサービス化が重要であるといえる。また,サブ課題(2)で評価した鉛のフローを経済モデルに組み込み,鉛の環境中への排出量を現状の水準に抑える場合の経済影響を評価した。
〔備 考〕
共同研究者:松岡 譲(京都大学大学院)・棟居洋介(東京工業大学大学院)
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