(3) 環境負荷低減のための産業転換促進手法に関する研究
〔区分名〕環境-地球推進 H-2
〔研究課題コード〕0002BA029
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.2.1.1 循環型社会への転換策の支援のための評価手法開発と基盤システム整備に関する研究
〔担当者〕森 保文(社会環境システム研究領域)・森口祐一・原沢英夫・日引 聡・乙間末広
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕事業所の自主管理がはたして環境パフォーマンス向上に結びつくのか疑問視されているが,最近,環境マネジメントシステムという新しい形の自主的管理が普及している。環境マネジメントシステム自体は環境管理の仕組みを作るのであって環境負荷を管理するものではないが,仕組みが働けば,間接的に環境パフォーマンスが改善されることが期待される。また環境マネジメントシステムの代表的なものであり,国際規格でもあるISO14001は審査登録を受けるという手順が必要であり,この点で単なる自主管理とは異なっている。
一方,ISO14001のほかにも,ライフサイクルアセスメント(LCA)などの環境マネジメントに関係する技術が存在し,これらも企業の環境管理に影響を与えると考えられる。また情報公開も,間接的に企業の環境管理に関係する可能性がある。またISO14001の審査登録については,システムの継続改善により,結果として環境負荷が徐々に低減されることが環境面での利点と考えられる。
本研究では,国内のISO14001審査登録事業所およびそれ以外の事業所を対象として,ISO14001への対応,LCAなどISO14001以外の環境マネジメント技術への取り組み,情報公開および環境負荷削減に関するアンケート調査を実施した。この調査から,ISO14001審査登録,それ以外の環境マネジメント技術,および情報公開の連関およびこれらの手法と環境負荷削減の連関について検討した。
〔内容および成果〕
ISO14001を審査登録している事業所数の最も多かった業種である電気機械および化学工業を調査対象業種とし,ISO14001を審査登録していた事業所のすべて及び,ISO14001を審査登録していなかった事業所をランダムに抽出して,アンケート調査を実施した。
環境負荷削減との連関を整理すると,ISO14001審査登録とISO14001以外の環境マネジメント技術(以下OEMと呼ぶ)については環境負荷削減との連関が多く見られ,環境マネジメント要素と情報公開にはあまり多くの連関が認められなかった。ISO14001審査登録と環境マネジメント要素の両方で連関が認められることは少なかったので,ISO14001審査登録における連関のほとんどはラベルとしての働きによると考えられた。環境負荷項目ごとの特徴をみると,エネルギー効率,二酸化炭素,廃棄物については,ISO14001審査登録とOEMにおいて多くの業種・規模で連関が認められた。硫黄酸化物,BOD/CODについては,ISO14001審査登録において多くの業種・規模で連関が認められた。原料の使用量,水消費量,トリクロロエチレンおよびジクロロメタンについては連関のある環境マネジメント関連の技術は少なかった。ISO14001審査登録はOEMや情報公開に比べ多くの環境負荷項目に連関を持つが,いずれとも連関の少ない環境負荷が存在するという結果となった。
多くの環境負荷削減項目においてISO14001審査登録にラベルとしての働きがあるという仮説が支持されたことは,現時点のISO14001の環境マネジメントシステムそれ自体が環境負荷削減を促進する働きを持つというよりは,ISO14001を審査登録することが事業所の環境に対する態度を宣伝するという点で大きな価値を持つことを意味すると考えられる。おそらくISOが環境に関する国際規格であることが,日本において宣伝上の利点を持っていたのであろう。ISO14001審査登録が,エネルギー効率,二酸化炭素排出量および廃棄物のように日本において関心の高い環境負荷削減項目と多く連関を持っていたが,原料使用量のような注目されていない項目とは連関が少なかったことも上記の仮説を支持している。
以上から,ISO14001審査登録は多くの環境負荷項目について連関を持っており,環境負荷削減手段として有効と考えられた。しかしその連関は注目されている環境負荷に限定される傾向があったので,その他の環境管理手法の導入も同時に推進すべきと考えられた。
〔備 考〕
共同研究者:花木啓祐(東京大学)
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