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研究成果物



 

(4) 環境負荷軽減のための複合的インセンティブの効果に関する国際比較の予備的研究


〔区分名〕環境-地球推進 FS-6
〔研究課題コード〕0101BA027
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.1.2 統合評価モデルを用いた地球温暖化のシナリオ分析とアジアを中心とした総合対策研究
〔担当者〕日引 聡(社会環境システム研究領域)
〔期 間〕平成13年度(2001年度)
〔目 的〕温室効果ガスの排出抑制のために,排出規制,環境税,排出量取引制度,自主協定の導入などさまざまな対策の導入が検討されている。しかし,これらの対策の導入の有効性について,計量経済学的手法を用いた実証分析は必ずしも十分に行われていない。
 本研究は,研究の実行可能性を模索し,また,研究計画を立案するためのフィージビリティスタディである。本研究は,研究手法をレビューしするとともに,本格的研究実施に向けて,分析のためのデータの利用可能性や国内だけでなく,海外の事例(アメリカのSO2排出権取引制度やCO2に関する自主協定など)を対象にした実証研究を実施するための国際的研究体制の整備方向を検討することを目的とする。
〔内容および成果〕
 本報告では,主に,研究手法のレビューについて説明し,最後に,データの利用可能性,国際的研究体制の整備,本格的研究の実施に向けた研究計画の見直しについて簡単に触れる。
 本フィージビリティスタディでは,環境政策(以下では,環境税,規制,SO2排出権取引制度など,CO2,SO2などの大気汚染対策を念頭においている。)の有効性に関する計量経済学的実証研究において用いる研究手法について検討した。
 環境税や排出権市場の分析に関する従来の研究においては,環境税や排出権制度の導入が,排出者の行動にどのような効果をもたらしたかについては,次のような理由から,必ずしも厳密な定量分析は行われていない。
 第一の理由は,脱硫装置などの汚染物質削減投資は,離散的かつ不可逆的な投資という動学的行動であり,従来の静学的な分析を中心に扱う計量経済学的な分析になじまないのである。
 第二に,端点解の存在可能性による燃料転換のモデル構築の難しさにある。たとえば,石炭発電所を例にとると,高硫黄・低硫黄と両方の石炭をミックスして使用する発電所もある一方で,高硫黄石炭の使用をやめ,低硫黄石炭に転換した発電所もある。企業行動の定量分析には,生産関数や費用関数を用いるのが,従来のアプローチであるが,それらは端点解を念頭においていない。このことが,分析を困難にしてきたもう一つの理由であると考えられる。
 第一の問題を克服する手法として,特に,現在急速に発達しているアプローチとして,構造推定アプローチがある。このアプローチは,推定をする際にまず個人の動学的な最適行動をモデル化し,そのモデルをもとに推定を行うものであり,これにより,従来分析できなかった離散選択の動学的な意思決定の構造をモデル化することが可能になった。(Hansen & Singleton(1985),Rust(1987),Keane and Wolpin(1994),Rust(1997),Pakes and McGuire(2000))第二の問題点を克服する手法として,Lee & Pitt(1986)によって提案された計量経済学的手法がある。
 ただし,これらの手法を適用するためには,推計に当り,多量かつ複雑な計算処理が必要であり,通常の統計ソフトではこのような手法が提供されず,プログラミング技術を要することから,これらの手法は環境経済学の分野では利用されてこなかった。したがって,今後,この手法を利用した研究を進めていくことにより,環境政策が企業行動に及ぼす影響をより厳密に分析することができるものと思われる。
 最後に,データの利用可能性,国際的研究体制について簡単に触れておきたい。本フィージビリティスタディに基づいて,データの利用可能性,国際的な共同研究の可能性を検討し,それに基づいて研究計画の見直した。その結果,本格的研究実施する場合に,日本を対象にした環境政策の研究,アメリカのSO2排出権取引の研究,アメリカの自主協定プログラムの研究,先進7カ国についての企業の環境マネジメントに関する研究に関して,外国との共同研究(イリノイ大学,ペンシルバニア州立大学,OECD)が可能となり,研究遂行のためのデータの利用可能性も明らかとなった。
〔備 考〕
共同研究者:有村俊秀(上智大学)・Eric Welch(イリノイ大学)


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