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研究成果物



 

(5) オゾン層破壊の将来予測のためのモデル開発および検証に関する予備的研究


〔区分名〕環境-地球推進 FS-1
〔研究課題コード〕0101BA286
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.2 成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明
〔担当者〕今村隆史(成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明プロジェクト)・中根英昭・秋吉英治・杉本伸夫
〔期 間〕平成13年度(2001年度)
〔目 的〕国内外のオゾン層保護に向けた取り組みの結果,オゾン層破壊物質である有機塩素・臭素化合物の対流圏大気中の濃度は1990年代半ばをピークに減少傾向に転じ,成層圏大気中の濃度もピークから減少傾向に移った時期にある。これに対し,現在の成層圏の温度やハロゲン化合物以外の化学物質の濃度・分布は,オゾンホール出現前の1970年代とは大きく異なっている。それ故,塩素・臭素濃度が仮にオゾン破壊が顕著化し始めた1980年代と同程度になったとしても,オゾン層破壊の程度が同じになると言えない状況にある。このような状況のもと,定性的にも定量的にも多くの問題点を含んではいるものの,ハロゲン濃度以外の因子による影響も含めたオゾン層の将来予測の試みが1990年代後半から行われ始めた。
 本研究は,このような世界的な研究の流れの中にあって,オゾン層破壊の将来予測に向け,現在使用している化学−放射−力学結合大気大循環モデルが抱えている問題点を洗い出すとともに,モデルの検証や精度向上に必要となるデータの収集や観測計画を絞り込み,その検討を通し,オゾン層破壊の将来予測の精度を向上させるための研究戦略を打ち立てることを目的とした。
〔内容および成果〕
 オゾン層変動の将来予測に向けて,成層圏プロセスを取り入れた大気大循環化学モデル(CCSR/NIES AGCM)の抱える問題点を明確にし,モデルの改良の方針,更にはモデルの改良や検証に必要なデータの評価・整備と,モデル改良に必要なプロセスの解明に向けた観測戦略について,モデル・データ解析・実験室実験・観測研究者がその枠を超えた共通の問題意識のもとに検討を行った。
 得られた成果は次のとおり。
 大気大循環モデルにおけるオゾンならびに他の微量気体の成層圏濃度・分布:AGCMを用いたモデル計算では,対流圏で十分な量の水蒸気量が存在しても成層圏水蒸気量が過小評価される傾向にあることが分かった。この点を改善するためには,モデルの水蒸気量を実測の成層圏水蒸気量にナッジングさせることが当面の解決策と考えられる。根本的には,後述の水蒸気の成層圏への流入プロセスの理解が不可欠である。
 オゾン全量の季節変化に関して,北極域でその減少量が実測に比べ少ない傾向にある点が指摘された。この点に関しては,光分解のパラメタリゼーションの改良を試みる必要があることが分かった。
 成層圏水蒸気量の変動の検出とその機構:最近の報告から,中緯度成層圏において,水蒸気に増加傾向が認められることが分かってきた。水蒸気は赤道上の対流圏界面を通して成層圏に流入すると考えられているがその機構が十分に分かっていないこと,低緯度域でも水蒸気に増加傾向があるのか,増加の割合は中緯度に比べて大きいのか,についても全く分かっていないことから,赤道域での水蒸気の測定が不可欠であること,日本の研究チームが赤道域でのオゾンゾンデ観測を含め赤道域での観測に優位性を有していることが分かった。
 今後のオゾン分解速度の変動に及ぼす大気化学組成変動の影響:今後の成層圏での有機ハロゲン濃度の変動は,トリクロロエタンなど大気寿命の短いハロゲン化合物の減少による,減少の後は,フロン・ハロンなど大気寿命の長い物質の減少が主となり,その減少傾向はゆっくりしたものになることが指摘された。その減少率は,数%以下であることから,1%程度の増加傾向を有するいかなる大気組成変動も,フロン類の減少効果を打ち消す可能性があることが分かった。上記の水蒸気変動も,年1%程度と予測され,HOxラジカルの増加を通して,オゾン分解反応を加速しうることが予想されるが,その評価のための反応データは必ずしも十分とは言えない状況にあり,早急にその整備が必要であることがわかった。
〔備 考〕
研究代表者:高橋正明(東京大学気候システム研究センター)


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