(3) 炭素吸収量の認証と排出量取引に向けた高精度リモートセンシング手法の開発に関する研究
〔区分名〕環境-地球一括
〔研究課題コード〕0105BB257
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕山形与志樹(地球環境研究センター)・小熊宏之・石井 敦
〔期 間〕平成13〜17年(2001〜2005年度)
〔目 的〕京都議定書の第1約束期間(2008〜2012)において,排出削減目標を達成するためには,実質的な温暖化対策を早急に実施する必要がある。このためコスト効率的な温暖化対策の実施を目的として,現在,世界各地に各種の排出権取引市場が創設されつつある。また京都議定書では,植林等の吸収源活動を用いた温暖化対策も認められた。そのため吸収源による温暖化対策が,排出量取引等のいわゆる京都メカニズムを利用して,世界各地で実施される見通しである。しかしながら,吸収源による吸収量に関する科学的知見は十分ではなく,吸収量推定の不確実性が大きいのが実情である。今後の国際的な制度作りの中で,不確実性に関する取り扱いが焦点となる中,リモートセンシング技術を活用した吸収量モニタリング手法を確立することが国際的な急務となっている。欧米の先進的な諸国においては,吸収量のモニタリング・認証手法の確立を目的とする最先端のセンサ・情報技術を駆使したリモートセンシング手法の開発が展開しつつある。特に,COP6における吸収源関連条項の解釈に関する政治的な意志決定を受けて,具体的に国内・海外における吸収源活動をいかに計測するかが,今後の国際交渉の中でも重要なポイントとなっており高精度の吸収量計測手法の開発によって,認証に関するシステム作りに貢献し,国際標準手法に関する議論をリードすることが可能となる。本研究は,京都議定書の実施に向けて展開する最新の国際動向に即しつつ,最新のセンサ・情報技術を駆使し,国立環境研究所が整備を進めている苫小牧フラックスリサーチサイトを中心とした観測実験を通じて,炭素吸収量を高精度に計測するリモートセンシング手法開発を目的とする研究である。
〔内容および成果〕
(1)森林樹冠の方向性反射特性の計測を目的として,マルチアングルセンサの開発を行い航空機により森林樹冠の観測を試みた。マルチアングルセンサとは,魚眼レンズを用い,半球状の視野を持ち,干渉フィルターの差し替えにより任意の複数波長を観測可能なセンサである。本年度は植生の光合成色素による吸収極大の671nmと反射の極大である855nm付近の二波長について,平成13年9月16日14:00前後の完全快晴時に,苫小牧フラックスリサーチサイト上空高度500mから森林樹冠の連続データ取得を行った。観測実験後,センサの各種光学特性を明らかにするため,絶対輝度,CCDのリニアリティ特性,偏光感度特性,点像分布関数特性の項目について校正・検証作業を実施した。この結果に基づき,取得データのうちフラックスタワー近傍の147シーンを選出し,補正処理を施した。次に観測時に地上に設置したレファレンスターゲットの分光反射特性を基準に,取得画像の反射率変換を行い,波長別の森林樹冠上の方向性反射特性を求め,さらに植生指数として一般的であるNDVI値(正規化差分植生指数)を算出し,一様な森林上におけるNDVI値の角度依存性を求めた。NDVIには明らかに角度依存性が認められた。(2)超多波長連続分光による森林観測手法確立の目的で,苫小牧フラックスリサーチサイトにおける25mタワー上に試験的に設置されているハイパースペクトルカメラによって得られた森林樹冠上の連続分光データを入手し,マルチアングルセンサ同様に行われた校正・検証データを元に,2001年9〜11月までに取得されたデータの画像化処理を行った。さらに1画素内に格納される128バンド分の分光値の中心波長・波長半値幅を求めた。これを用いてタワー上から2時間おきに取得されるスペクトルの日変化と季節変化を時系列的に解析することが可能となり,別途取得されるフラックスデータ等との比較解析が可能となる。第一段階として植生に関連したパラメータを説明するとして提案されている各種のバンド間指数を計算し,タワーから得られたフラックスとの比較を実施した。(1)でも算出したNDVI値の季節変動では,フラックスの低下が始まる9月中〜下旬よりも約1ヶ月遅れてNDVI値の低下が認められた。また,タワーからの周囲340度分の画像により,(1)同様に森林樹冠上の方向性反射特性を詳細に求めた。(3)森林の吸収源活動を評価し,対象森林の温室効果ガスの吸収量算定を行うためには,森林地上部のバイオマス,生化学成分情報などさまざまなセンサや地上計測などの値を統合して算定する必要がある。これら必要情報を統一的に管理し,統合解析を行うための情報インフラの整備を行い,地理情報システム上に各実験で得られたデータを始め,衛星画像,地上現地計測データなどを集約する吸収源関連情報システムの試作を行った。今年度は,苫小牧を始め北海道の森林を対象として,現地作業による樹種,胸高直径,水平位置,レーザ樹高計による樹高,樹冠形状,衛星画像,周辺の林班情報などを統合した。
〔備 考〕
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