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研究成果物



 

(2) 地球温暖化対策のための京都議定書における国際制度に関する政策的・法的研究


〔区分名〕環境-地球推進 K-2
〔研究課題コード〕0002BA028
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕亀山康子(社会環境システム研究領域)・山形与志樹・横田匡紀
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕地球温暖化抑制を目的として1997年に採択された京都議定書では,先進国に2008年から2012年までの5年間における温室効果ガス排出量に関して数量目標が定められたが,排出量の算定には排出量のみならず吸収量を算定に含めることが決められた。また,排出量取引,共同実施,クリーン開発メカニズム(CDM)等新たな国際制度の設立が認められた。これらの算定方法や諸制度は,各国内の温暖化対策のみならず,2013年以降の先進国の排出量目標の設定方法や途上国の参加方法等,今後の国際的取組みの枠組みそのものを大きく変える可能性があることから,これらの諸制度に対する主要国の政策決定について十分な分析を行っておく必要がある。
 本研究課題では,地球温暖化対策のための京都議定書における国際制度に関する政策的・法的研究として,京都議定書における国際制度に関する政策決定の日・米・欧比較分析を,政策決定や国際法などの定性的分析手法と,モデルを用いたシミュレーションなどの定量的な分析手法を用いて研究を遂行する。
〔内容および成果〕
(1)京都議定書における国際制度に関する政策決定の日・米・欧比較分析:COP6再開会合のボン合意およびCOP7のマラケシュ合意に至る日・米・欧の意思決定過程について分析を進めた。米国は,2001年にブッシュ大統領が就任すると,京都議定書からの離脱を表明した。
 米国の政策決定過程を分析すると,米国では,大統領と連邦議会とがバランスを取る政治制度が採用されており,大統領が地球温暖化問題に積極的な時期には連邦政府が反対し,今回の大統領の就任で,議会の中では逆に温暖化対策法案を出そうとする動きが見られている。国際法の批准には,大統領の支持と各州代表で構成される上院議員の3分の2以上の多数による支持が必要である。このような決定システムは,京都議定書に限らず米国に対して何らかの拘束力を持つ全ての国際法に対して批准を困難にする。これと比べると,日本のように議会の多数を占める政党内で選出された人物が首相となり,強力な行政機関と連携して政策を進めていく国では,国会が首相の意向に背くことは少ない。
 さらにEUでは,加盟国各国内でそれぞれ異なった政策決定過程が取られるが,それがEUとして単一の決定に集約されるという点で日米よりさらに複雑な過程を経る。EUでは半年ごとに持ち回りで議長国がEU代表として国際交渉に参加するが,どの国が代表となるかでEU全体の意思が変わるという状態が近年ますます顕著になっている。これらのことから,国内レベルと国際レベルの他に,地域レベルの役割について分析を深める必要性が出てきた。
 また,COP6及び7における京都議定書の遵守措置について分析を行った。地球環境問題に関する国際法においては,問題の性質上,厳しい制裁措置を伴わないが,京都議定書においては「法的拘束力のある排出量目標」や「京都メカニズム」など,他の条約にはない規定や制度が定められており,それなりの遵守措置なければこれらの目標値や制度は拘束力を持たないだろうと懸念されている。今回決まった遵守措置は国際法としても画期的なものであり,それに対する日米欧の対応を踏まえつつ,国際合意に至るまでの経緯を分析した。
 さらに,前年度に開催した国連大学高等研究所との共催「気候変動レジームの国際政治と国内政策決定に関するワークショップ」の報告書作成に向けて議論をとりまとめるとともに,今年度も企画した。出席者の都合で実際の開催は次年度となった。
(2)炭素クレディットの国際市場形成に関する数理モデル分析:新たに開発したエージェントシミュレーションフレームワークを用いて国際排出権取引市場のシミュレーションを実施した。経済や国際関係といった多数のさまざまな主体が動的に相互作用するシステムを理解するために,従来の代表主体による均衡分析への批判に基づく新たなパラダイムとして,エージェントによるシミュレーションやゲーミングの手法について開発と分析をすすめた。特に,本年度は,コンピューター上のモデルを,実際の人間の挙動を考慮してより妥当なものとするために,ゲーミングシステムを,サーバー上のウェブアプリケーションとして開発した。
 エージェントによる排出権取引においては以下のようなモデルを用いた。国あるいは地域として12のエージェントを考え,それぞれ目標削減量と動的な限界削減コストを与えた。取引は2008年から2012年まで行われ,各年度ごとに均衡価格を求める。エージェントの戦略としては,決められた削減目標をどのように割り振っていくかで決定され,そうした試行を繰り返すことで,削減スケジュールの調整を行う。実験結果はこのような試行による階層構造を反映した形式で,データベースに保存する。シミュレーションの結果,削減コストが全体として減少して行く様子が見られた。
 またウェブゲーミングに関しては,エージェントとメッセージ通信を行い,また,Java言語を用いて各プレイヤーが代表する国エージェントを管理し,エージェントシステム内の国際取引に参加するシステムを開発した。これによって,プレイヤーは通常のウェブブラウザーを通じて,容易にゲーミングに参加することが可能となり,人間による実験が可能となった。
〔備 考〕


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