(9) 南北両半球におけるVOC(揮発性有機化合物)のベースラインモニタリング
〔区分名〕奨励
〔研究課題コード〕0105AF045
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕横内陽子(化学環境研究領域)
〔期 間〕平成13〜17年度(2001〜2005年度)
〔目 的〕自然生態系から放出される微量有機物質には,成層圏オゾン破壊物質(塩化メチル・臭化メチル)や雲凝結核の前駆物質(DMS)などが含まれるため,気候変動による生態系の変化はこのようなVOCの増減を介して地球環境にフィードバックをもたらす可能性が高い。しかしながら,人為起源物質であるフロン,代替フロン類を除くとVOCのバックグラウンド濃度の観測例は極めて少ない。本研究では,南北両半球の代表的バックグラウンドステーションであるカナダ・アラート(北緯82度,西経62度)とオーストラリア・ケープグリム(南緯41度,東経45度)において塩化メチルを始めとする自然起源VOCの定期観測を行い,それらの季節変動・長期トレンドを把握する。これによって各VOC濃度の今後の変動予測を可能にするとともに,将来的には大気観測からVOC発生源である自然生態系の変動を検出することを目指す。
〔内容および成果〕
(1)アラートとケープ・グリムにおいて2週間に1回の大気サンプリングを現地共同研究機関の協力を得て実施し,ガスクロマトグラフ/質量分析計により塩化メチル,臭化メチル,ヨウ化メチル,クロロホルム,アセトン,硫化カルボニル,四塩化炭素,ジクロロメタン,ブロモホルム,ジブロモメタン,ヨウ化エチル,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,ジブロモクロロメタン,特定フロン類(CFC11,CFC12),代替フロン類(HCFC22,HCFC142b,HCFC141b,HFC134a,HCFC124,HCFC123)の測定を行った。自然起源および人為起源の各化合物について南北両半球における濃度変動の特徴を解析した。
(2)標準ガスインターキャリブレーションの一環として塩化メチル,臭化メチル,テトラクロロエチレン,HCFC142bを対象にAGAGE(Advanced
Global Atmospheric Gases Experiment)によるケープ・グリムの同時観測データと相互比較を行い,良好な結果を得た。
(3)グローバルなVOC発生量収支に関わる研究の一環として塩化メチルの発生源調査を筑波実験植物園の熱帯雨林温室および沖縄本島の亜熱帯林において実施した。その結果,東南アジアの熱帯林に繁茂するフタバガキ科の植物やヘゴなどのシダ植物が大量(〜19μ
g・dry leaf g−1・ h−1)の塩化メチルを放出することが明らかとなった。このことは将来(熱帯林破壊が塩化メチル発生量を左右するかもしれない)および過去(石炭紀には大型シダ類が繁茂して大量の塩化メチルを放出していたかもしれない)における大気中塩素量の動向を考える上で重要な意味を持つと考えられる。
〔備 考〕
共同研究機関:カナダ/Environment Canada,オーストラリア/CSIRO
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