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研究成果物



 

(17) アジア太平洋地域統合モデル(AIM)を基礎とした気候・経済発展統合政策の評価手法に関する途上国等共同研究


〔区分名〕環境-地球推進 B-54
〔研究課題コード〕0002BA035
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕甲斐沼美紀子(社会環境システム研究領域)・森田恒幸・増井利彦・藤野純一・原沢英夫・高橋 潔・肱岡靖明・日引 聡・亀山康子
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕地球温暖化対策は1997年の京都会議を契機に大きな進展が図られようとしているが,気候変動枠組条約の目標である気候安定化を達成するには,先進国のみならず発展途上国を含めて,今後一世紀にわたって温室効果ガスの一層の削減対策が求められている。特に,アジア地域の発展途上国は,高い経済成長のポテンシャルとともに公害などの深刻な国内問題を抱えており,気候政策だけでなく,気候政策と地域環境政策等の国内政策,あるいは気候政策と経済政策を同時に有機的に実施していくことが不可欠である。このような政策ニーズに対応するために,新たな政策評価の枠組みと方法論を開発し,これらを発展途上国に移転することを目的とする。
〔内容および成果〕
 本研究は,アジア地域の研究者と共同して地球温暖化対策とこの地域での経済発展との統合政策を評価するモデルを開発するものである。本年度の主な成果は以下のとおりである。
(1)AIMエンドユースモデルによるわが国の温暖化対策のシナリオ分析
 将来の社会や経済の発展の方向には多くの不確実性が含まれている。IPCCでは世界全体の温室効果ガス排出量を示す4つのシナリオを作成したが,このIPCCのシナリオを参考に日本のシナリオを作成し,二酸化炭素排出量の削減可能性について分析した。作成したシナリオはA1(市場のグローバル化),A2(地域プロック化),B1(脱マテリアル化),B2(地域共存型)の4つである。予測結果を図1に示す。
 AIMエンドユースモデルによるシミュレーションによって,限界費用3万円までの技術のスムーズな導入による二酸化炭素排出削減効果を分析した。排出量の削減効果はどの部門においても非常に大きいものであるが,特に民生部門が大きいという結果が示された。また,炭素税が低くとも,その税収を二酸化炭素排出削減技術の導入のための補助金として最適に還流することができれば,より高額な炭素税(炭素トン当たり3万円)と同等の二酸化炭素排出削減技術の導入インセンティブ効果を発揮することができることも示された。
 その一方で,今後,普及が進むことによって価格の低下が予想される技術,例えば,太陽光発電,ハイブリッド自動車,燃料電池などは,現状の価格を用いてシミュレーションを行っているため,炭素トン当たり3万円の炭素税では市場性を持たず,排出の削減に寄与していない。したがって,このような技術の将来価格の動向次第では,さらなる排出量の削減が期待できる。
(2)アジア地域における統合評価モデルの開発
 アジア地域を対象としてAIM統合評価モデルを開発した。中国,インド,韓国を対象として,省エネ機器の普及が二酸化炭素排出量の削減のみならず,二酸化硫黄,窒素酸化物排出量の削減に及ぼす影響を推計できるAIM/ローカルモデルを開発し,エネルギー技術および環境負荷除去技術に関するデータベースを利用して,二酸化炭素削減施策の波及効果を分析した。また,タイ,インドネシア,マレーシアなどアジア20カ国のエンドユースモデルの開発に着手した。
 中国においては,約2400の県,633の市,31の省別にGDPや人口などの温室効果ガス発生に影響を及ぼす指標を集計するとともに,70の鉄鋼プラント,251の発電プラントについて個別の技術データを収集した。70の大規模プラントの生産量は2000年の鉄鋼生産量の91.7%を,251の発電プラントは2000年の総発電量の67%を占める。各プラントについて,エネルギー技術,大気汚染負荷除去技術の更新あるいは改良について,経済性,二酸化炭素削減量,二酸化硫黄除去率について検討した。鉄鋼生産に関しては直流電気炉,熱回収装置などの導入により,二酸化炭素排出量が8〜20%削減できることが分かった。それ以上削減するには削減費用が飛躍的に増大する。
 インドについてもAIM/Localモデルを適用した。383の大規模プラント(発電,鉄鋼,セメントプロセスなど)と466の州別の発生量について検討した。大規模発生源については,2000年において,二酸化炭素発生量,二酸化硫黄発生量とも65%以上をカバーしている。
 インドにおいては,1990年から2000年にかけて二酸化炭素,二酸化硫黄,窒素酸化物は年率約5%で増加している。今後30年間にかけて,二酸化炭素排出量は年率3.4%,窒素酸化物については年率3%で増加すると推計された。二酸化硫黄については脱硫装置の設置により,年率1.4%程度の伸びとなることが推計された。70の大規模プラント(50の発電施設,5つの鉄鋼プラント,15のセメントプラント)が主な発生源であり,今後,燃料転換,送電ロスの削減に加えて,これらの施設での熱回収,燃焼効率改善,維持管理の効率化等の対策の効果を検討する。
 また,AIM日本モデルとして開発された応用一般均衡モデルに,二酸化炭素発生量を評価するモジュール及び廃棄物の排出とその処理をするモジュールを組み合わせたAIM/物質循環モデルのインドモデルの開発に着手し,二酸化炭素排出量,廃棄物排出量に制約が生じた場合の経済的影響を検討した。
(3)京都議定書の経済影響分析
 京都議定書が発効した場合の経済影響について,AIMモデルを使って分析した。
 まず,米国も参加して京都議定書を達成する場合,2010年時点のGDPは,日本が0.28%,米国が0.47%,EUが0.41%,ロシアが0.23%下がると推定された。これに対して,米国が不参加の場合,日本,EUへのGDP損失が大きくなり,それぞれ0.33%,0.43%に下がると推定される。逆に米国のGDPは0.01%に増加する。
 GDPへの影響を緩和するため,京都議定書で認められている国際排出量取引を導入した場合,米国が参加しない場合は,排出枠の需要が減って取引価格が下がり,日欧は安い排出枠を購入することができる。これにより,日本および欧州のGDP損失は0.04〜0.06%にまで軽減される。ただし,取引価格が下がることによる,途上国のCDMへの影響が懸念される。
(4)アジアの温室効果ガス排出量シナリオ分析
 これまで,AIMモデルを用いて,IPCCの排出シナリオをベースに世界全域における対策シナリオを検討してきたが,アジア太平洋地域を中心にシナリオ分析を実施し,UNEP/GEO3に提供した。
 市場経済シナリオ,対策シナリオ,破局シナリオ,革新シナリオを想定して,人口,GDPなどの推進力や,エネルギー消費量,経済影響などをアジア太平洋42カ国について推計した。図2に今後30年間の二酸化炭素排出量の変化率の予測を南アジア,東南アジア,東アジア,中央アジア,オセアニアの地域別に示す。国別の値は地域別の変化率に占める割合を示す。
 市場経済シナリオでは,高成長の仮定により,二酸化炭素排出量が増加するが,対策シナリオでは,省エネ技術の導入により二酸化炭素排出量の削減が進むと推定される。一方,破局シナリオでは,省エネ技術への転換が進まないまま,人口が増えると予想されるため,二酸化炭素排出量が大幅に増える。経済発展と環境保全の両立を目指した革新シナリオでは,二酸化炭素排出量は対策シナリオよりは増えるが,ある程度抑制できると期待される。
 また,世界の温室効果ガス排出シナリオについては,対策シナリオ等を含めて2300年までの排出予測を行い,IPCCの気候,影響グループに提供した。
〔備 考〕
共同研究者:松岡 譲(京都大学大学院)・Yang Hongwei(中国エネルギー研究所)


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