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研究成果物



 

(15) 地球温暖化による生物圏の脆弱性の評価に関する研究


〔区分名〕環境-地球推進 B-11
〔研究課題コード〕9901BA022
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.1.2 統合評価モデルを用いた地球温暖化のシナリオ分析とアジアを中心とした総合対策研究
〔担当者〕原沢英夫(社会環境システム研究領域)・名取俊樹・高橋 潔・肱岡靖明
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕陸域生態系の脆弱性評価は温暖化の影響予測やCOP3の森林シンクの問題とも関連する重要な課題である。本研究は,生物圏,特に,高山生態系,自然林・人工林生態系,農業生態系,及び関連する水資源システムを対象として,地域レベルでの脆弱性評価を行うことの脆弱性を指標とした温暖化モニタリングの可能性を検討することを目的とする。
〔内容および成果〕
 我が国をはじめとするアジア地域では地域レベルに適用しうる感受性や適応性の評価手法の開発と総合的な脆弱性評価,特に,陸域生態系の脆弱性評価の問題は森林シンクの問題とも関連する重要な課題である。また,水資源の問題は,生態系の脆弱性や農林業を含む人間の経済活動とも密接に関連しており,生物圏の存続に悪影響を及ぼす可能性が高い問題である。本年度は,本研究所で担当している高山生態系及び水資源システムを対象に気候シナリオ・データベースの充実,影響評価手法の開発と適用,および現地調査と実験研究によるモデルパラメータの整理を行った。
 高山生態系の脆弱性評価と指標化については,我が国高山帯の特徴の一つである冬季の豪雪と高山帯の地域特性を考慮し,北海道の高山帯植生と亜高山帯植生さらに高山帯植生を構成する各植物群落の分布について,気候条件との統計的関係をまとめ,さらに,これらの結果を基に,本プロジェクトの温暖化共通シナリオを用いて,2100年までの温暖化影響予測を行った。その結果,2030年から2050年の間に高山帯植生が消滅し亜高山帯に置き換わるとの予測結果が得られ,温暖化に対して北海道の高山帯は極めて脆弱であることが示された。
 また,地域別研究として,ここ数十年の間に森林帯が上昇しヒダカソウなどの希少植物種が生育する高山草原の減少が指摘されていたアポイ岳(北海道)において,上昇したハイマツの樹齢を推定した結果,1970年頃からハイマツの上昇が顕著となり,それ以前に比べて上昇速度が大きくなっていることが分かった。また,北岳(山梨県)周辺のみに生育するキタダケソウについて温暖化共通シナリオに基づいて2100年までの満開日を予測した。その結果,用いたシナリオにより多少異なるものの2090年代には現在より満開日がおおよそ40日程度早まることが予測された。また,周氷河地形や雪田植生が発達し高山性動物も豊富な白山(石川県)において,周氷河地形あるいは雪田植生の分布について温度環境ばかりでなく雪環境も考慮して統計的関連性を整理した。その結果,白山の周氷河地形及び雪田植生の分布は,温度環境に加えて多雪環境に大きく影響されることが分かった。高山性動物については,オコジョ,ヒメネズミ,ヤチネスミ等の生息数を調査した結果,オコジョ等の高山性動物の割合が減少していることが分かった。
 水資源,水環境についての影響では,地理情報システムを活用した気象,河川(流量,水質),流域・行政境界データベースの充実を図るとともに,@温暖化の河川流量へ及ぼす影響を評価するモデルの構築と試算,A温暖化の積雪への影響の一環としてスキー場への影響の評価モデルを構築し,適用した。気温が1〜5℃上昇する増分シナリオを用いた予測では,冬場の積雪減少による流出量増加,春季の流出量減少の可能性が示唆された。また,平均気温が3℃上昇した場合,積雪減少のスキー場への影響として客数,収益ともに3割程度と予測された。
〔備 考〕


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