(10) 複合リモートセンシングによる鉛直物質輸送に関する解析方法の開発
〔区分名〕奨励
〔研究課題コード〕0101AF095
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕清水 厚(大気圏環境研究領域)
〔期 間〕平成13年度(2001年度)
〔目 的〕大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)は,人間に対する健康影響,酸性雨などに関連した地域環境への影響,大気の放射バランスへの寄与からもたらされる地球温暖化への影響など,さまざまな形で環境とかかわりを持つ。エアロゾルの3次元的分布を把握するためには,主に地表付近に存在する発生源を把握するとともに,大気中での動態(輸送や変成など)を詳しく知る必要がある。エアロゾルの鉛直輸送に関しては,移流による輸送と渦による拡散を考慮する必要があるが,これらに関連するパラメータは直接測定が困難なため,これまでに大気境界層における輸送理論が発達した。ところが近年,大気の運動を把握するウインドプロファイラーおよびエアロゾルの分布を計測するライダーという2種類のリモートセンシング手法が発達し,エアロゾルの鉛直輸送にかかわるパラメータが連続的に計測できるようになってきた。本研究ではこれらリモートセンシングによるパラメータを組み合わせてエアロゾルの鉛直輸送量を直接導出し,大気境界層内におけるエアロゾル分布や,境界層から自由対流圏への物質輸送を把握するための解析方法を開発する。
〔内容および成果〕
本研究ではウインドプロファイラー(京都大学他による)とライダー(国立環境研究所他による)が近接地点で連続運転されたインドネシア・ジャカルタでの観測データを用いた。エアロゾルの鉛直輸送は移流(鉛直風速と濃度の積)と拡散(鉛直渦拡散係数と濃度勾配の積)からなる。ミー散乱ライダー(波長532nm)による後方散乱強度からFernald法によって後方散乱係数を求め,さらに光学モデルOPACによる変換係数を利用してこれを質量濃度に変換して更に鉛直勾配を求める。これとは独立にウインドプロファイラー(周波数1357.5MHz)からは鉛直風速(ドップラーシフトの量)とスペクトル幅(エコーの拡がり)が得られ,さらにスペクトル幅と大気安定度から鉛直渦拡散係数を決定した。これらパラメータを同一時刻・高度で定義して演算を行い,エアロゾルの鉛直輸送量を移流分・拡散分のそれぞれについて見積もった。
1998年7月上旬の観測結果では,日中地上1.5km付近に大気境界層のトップが存在し,境界層内部ではエアロゾルは鉛直濃度変化が小さく,渦拡散係数が大きいという典型的なパターンが見られた。このときのエアロゾル鉛直輸送は,境界層トップ付近で拡散の寄与が大きかったほかは全領域で移流の寄与が卓越していた。鉛直輸送の全日平均では,境界層の最高高度より上で拡散による緩やかな上方への輸送が見られ,自由対流圏へのエアロゾル輸送が行われている。また,鉛直輸送の収束とエアロゾル濃度の時間変化を比較した。両者は,エアロゾルの生成・消滅や水平移流がなければ一致する量である。日中はこれらに大きな差があるが,日没後は時空間パターンが一致しており,下層大気のエアロゾル変動が2種類のリモートセンシング手法によって1次元近似で観測結果から説明できる場合があることが明らかになった。
〔備 考〕
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