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研究成果物



(5) 大気中の酸素濃度及び炭素同位体比を指標にしたグローバルな海洋・陸域CO2吸収量の変動解析に関する研究

 
〔区分名〕環境-地球一括
〔研究課題コード〕0103BB151
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.1.1 炭素循環と吸収源変動要因の解明
〔担当者〕向井人史(地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクトグループ)・遠嶋康徳・野尻幸宏・町田敏暢・高橋善幸・柴田康行・米田 譲
〔期 間〕平成13〜15年度(2001〜2003年度)
〔目 的〕人為的に放出された二酸化炭素は地球規模での二酸化炭素の濃度上昇を引き起こしているが,地球上の生物や海洋はその約半分を吸収し大気中の濃度増加を引きとめる役割をしている。一方,海洋や陸域での吸収量は年々変化することが認められている。本研究では,特に船舶,地上観測拠点などを利用しながら大気中の酸素濃度や二酸化炭素の炭素同位体比を緯度的に広範囲に観測することによって二酸化炭素の地球規模の収支について検討する。これにより,どのような気候変動や海洋変動が二酸化炭素濃度増加を加速するのかを検討し,今後の濃度上昇予測に役立てる。
〔内容および成果〕
(1)船舶における酸素濃度測定のための大気のサンプリング装置の製作
 船舶は,地球環境研究センターが運営している日本-カナダ路線と日本-オーストラリア路線の定期貨物船と自動車運搬船に使用に耐えるようなガラスボトルでのサンプリング装置を開発した。酸素濃度を測定するためには比較的低い圧力でのサンプリングが必要であった。しかし,試料量はなるべく大きくしなければならないので,ガラスボトルの容量を従来の2リットルから2.5リットルに増加させた。船での運搬の際の衝撃によるガラス瓶の破損に考慮し,バルブの素材を軽いプラスチックを用いた。またケースの中でのガラス瓶の固定方法を改良し,折れやすい部分を空中に浮かせた。ガラス瓶は7本を組としてケースに入れ,圧力制御装置などを中に固定した。試験的に行った衝撃実験では,ガラス瓶の破損は起こらなかった。
 このガラスボトルシステムを用いて,従来のステンレスボトルサンプリングシステムと同等のサンプリング用コントローラーを用いて,日本−オーストラリア間を運行するゴールデンワトル(大阪商船三井MOL)の協力を得てサンプラーを配備することができた。これにより,サンプリングを開始した。
 サンプリングに関しては13年11月から行っているが,水分トラップなどの問題点を解決しながら少しずつデータが採れるようになった。最初のデータによると,酸素濃度と二酸化炭素濃度は緯度別に見ても逆相関があることがわかったが,今後波照間や落石のステーションで観測中のデータと比較しながら,サンプリングが成功しているのかなど検討していく予定である。
(2)地上ステーションにおける二酸化炭素の同位体比及び酸素濃度測定
 波照間(沖縄県)及び落石岬(北海道)の大気のモニタリングステーションで,1週間に2回程度の割合で自動的にガラスボトルに大気をサンプリングした。これを,研究所に1ヵ月ごとに送り返し分析を行った。ボトルに採られた大気中の二酸化炭素濃度は現地での連続測定計との測定値0.1ppm程度の差で良く一致しており,濃度分析が適正に行われていることが確かめられた。炭素の同位体比は,短期的には濃度の動きと逆相関を示し,光合成や呼吸による二酸化炭素の変動を良く表していた。2年の間のデータをみるとここ2年の濃度の変動は小さく,これに連動するように同位体比の変化量もほとんどゼロに近くなっていた。このことは,近年,植物が二酸化炭素を通常以上に吸収していることを示している。
 酸素同位体比は炭素同位体比とは異なる動きをしており,二酸化炭素濃度が大きく減少していく6月ごろをピークにして減少した。これは,光合成が大きくなるとともに呼吸の作用による二酸化炭素の放出も増加して行くことと同期していた。
(3)同位体比測定を含む測定の国際的相互比較
 二酸化炭素同位体比の世界的な比較実験を行うべく,大気組成に近い二酸化炭素を製作し,ガラスアンプルにして,世界の20機関に配布した。現在15機関からの回答を得,そのデータの解析を開始した。炭素同位体比の場合は,国際的に必要とされている精度の0.01パーミルに対し,収集されたデータのばらつき(1シグマ)はその3倍以上であった。一方,精度が悪いとされる酸素同位体比の場合は,必要精度0.05パーミルに対し約2倍程度であり,比較的良い一致が観測された。これは,同位体比の一次標準であるVPDBの炭酸塩の炭素の同位体比と大気の二酸化炭素の同位体比の値の差が,酸素同位体比での差に比べ大きいことが関係していると考えられた。差が大きいと大きいほど,質量分析計での測定の誤差要因が大きくなることが知られており,そのことが全体的なバラツキを作っていると考えられた。
 大気を濃縮する際の同位体比の変化が起こることがまた一方では問題となっているために,既知の同位体比の純粋な二酸化炭素とベースとなる空気をまぜて,模擬的な大気を製作し,二酸化炭素抽出時の同位体比の変化の大きさを調べた。それによると,炭素の同位体比の変化は0.01パーミル程度あり,大きな問題にならないことがわかった。一方酸素同位体比は,ラインによって異なるが,悪い例では0.05パーミル程度のずれが観測された。これは,真空ラインでのどこかで,二酸化炭素の酸素の同位体交換反応がおこっていることを示していた。
オーストラリアの科学工業研究機構(CSIRO)の大気研究部に依頼し,南半球の大気をベースとした参照空気を製作した。二酸化炭素,メタン,一酸化炭素などの温室効果気体を微量人為的に添加し,濃度の異なるものを作った。これを,測定し安定であるかどうかのチェックを行った結果良好な結果を得た。
〔備 考〕
共同研究者:Roger Francey, Colin Allison
共同研究機関:オーストラリアCSIRO


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