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研究成果物



 

(14) 大気境界層観測による森林から亜大陸規模の二酸化炭素吸収推定


〔区分名〕環境-地球一括
〔研究課題コード〕0103BB105
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
V.1.1.1 炭素循環と吸収源変動要因の解明
〔担当者〕町田敏暢(大気圏環境研究領域)・井上 元・遠嶋康徳・高橋善幸
〔期 間〕平成13〜15年度(2001〜2003年度)
〔目 的〕京都議定書で決められた人為的な森林活動の評価は,植林や伐採の規模が10kmのオーダーなので,二酸化炭素の吸収量を評価するためにはフラックス法,森林統計,遠隔計測などの方法が適している。しかしながら,今後の国際交渉の場では,直接の人為活動である植林や伐採だけではなく,森林保全,営林,農牧畜などを含む全炭素の排出・蓄積を評価する方向で検討が進められると予想される。これに対応するために森林(1km)から亜大陸規模(1000km)の炭素収支を評価する方法を開発する事が重要な研究課題となる。本研究では,陸域の炭素収支を直接反映する大気境界層内部とその直上の自由対流圏における二酸化炭素濃度や他の関連気体の観測を通して,森林規模から亜大陸規模にかけての炭素収支を評価するための観測手法や解析手法の確立を目的とする。
〔内容および成果〕
 本研究は地表付近の二酸化炭素濃度および関連気体の連続観測および連続観測地点上空における二酸化炭素濃度の航空機観測により,観測手法の検討を行うものである。本年度は,観測地点の選定,観測装置の開発,観測装置の設置,および予備的観測を行った。以下にその詳細を記す。
 1)観測地点の選定
 二酸化炭素の吸収過程をより正確に定量化するために,1)地形が平坦あること 2)植生ができるだけ均一であること 3)人間活動の影響が少ないが,研究者の定期的なアクセスが可能なことおよび 4)森林キャノピーより十分に高いタワーを有することを条件に,観測地点を地図およびチャーター機を使った上空からの視察により検討した。その結果,ロシア共和国西シベリアのトムスク市南西に位置するベレゾレーチカ村(56<CODE NUM=00DF>10’N,84<CODE NUM=00DF>20’E)のガスプロム社通信中継タワーの周辺の森林地帯を観測地点として選定した。
 2)観測装置の開発
 タワーを使った境界層内の二酸化炭素濃度の連続観測結果を定量的に解釈するために,大気構造や地表付近の影響の指標として,ラドン濃度,オゾン濃度および,気温,湿度,風向,風速,気圧,日射量,降水量の気象要素を観測することとした。また,航空機観測では二酸化炭素濃度のほかに気温,および気圧を測定する。
 タワー用二酸化炭素連続測定装置は測定精度を維持しながらも標準ガスの消費量を極めて少なくしたシステムを新たに開発した。性能評価試験の結果,開発した装置は森林上空の二酸化炭素濃度の日変動,季節変動を観測するために十分な精度を有し,1セットの標準ガスで5年以上の観測が可能であることが確かめられた。
 タワー用ラドン濃度測定装置は静電捕集式ラドン濃度測定器を保守作業が困難な遠隔地での連続運転のために改良したものである。無人運転時の停電対策,消費電力対策,データ出力・保存方法の改良,除湿方法の改良を行い,最長で約3ヵ月の連続運転が可能なシステムを構築した。
 二酸化炭素,ラドン,オゾン測定装置と気象測器の記録部は大容量の無停電電源と共に厚さ100mmの断熱材を施した標準コンテナに設置し,外気温の変動に耐えるシステムとした。
 航空機用二酸化炭素濃度観測装置は,経験の少ないオペレータが簡易に確実に扱えるために開発した小型軽量の自動測定システムである。二酸化炭素計はシングルセルのNDIRを使用し,小型の流量制御装置と圧力制御装置を付加して航空機の高度変化に伴う圧力変動の影響を除去した。シングルセルによる出力のドリフトは標準ガス導入頻度の増加で対応できることを確認した。
 3)観測装置の設置
 各観測装置は2001年10月にベレゾレーチカのタワーに設置した。
 ベレゾレーチカタワーは高さ90mの通信中継用タワーである。このタワーの80m,40m,20m,5mの4高度に約5mのアームを取り付け,アームの先に空気採取口や気象測器を設置した。各高度における観測項目は以下の通りである。
80m:二酸化炭素濃度,気温,湿度
40m:二酸化炭素濃度,ラドン濃度,オゾン濃度,風向,風速,気温,湿度
20m:二酸化炭素濃度
5m:二酸化炭素濃度,ラドン濃度,オゾン濃度,気温,湿度
 日射,降水量計はコンテナの屋上に,気圧計はコンテナ内部に設置した。
 航空機用二酸化炭素濃度観測装置は小型航空機AN-2機に搭載した。AN-2機はプロペラ1機の航空機でエンジンの排気を機体右方に排出しているので,空気採取口と気温センサーを左翼の中ほどに固定した。AN-2機のキャビンは与圧を行っていないので,気圧センサーは二酸化炭素濃度観測装置とともにキャビン内に設置した。
 4)予備的観測
 2001年10月の設置作業以降にベレゾレーチカタワーにおいて各観測装置の試験運転を開始した。開始直後は,電源供給装置,除湿装置,空気採取ポンプ,データ記録装置に不具合が発生し,一部の観測項目に欠測がみられた。現地作業者との度重なる復旧作業の結果,2002年2月からはすべての観測装置が正常に機能し,データが取得できるようになった。
 図1は2002年2月13日から14日にかけての二酸化炭素濃度と気温の時間変動を表したものである。二酸化炭素濃度は地表付近の高度5mにおける濃度が常に高度80mにおける濃度を上回っていることがわかる。冬季は地表面は二酸化炭素の放出源になっていることから,この観測結果は妥当である。2月13日の23時過ぎから二酸化炭素濃度が急激に増加している。地表付近の気温が13日の明け方に比べて14日の明け方がより低いことから,逆転層内に二酸化炭素が蓄積した結果,高濃度になった可能性が考えられる。
 航空機による二酸化炭素濃度の観測は2001年10月より月に1回から2回の頻度で,ベレゾレーチカタワーの上空2000mから200mの範囲で実施した。初期に装置のトラブルや天候の不具合から欠測があったが,2002年2月からは順調にデータが取得できた。最下層の二酸化炭素濃度は378ppmから391ppmを示しており,タワー観測の結果と整合している。
〔備 考〕


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