(13) 陸域生態系の吸収源機能評価に関する研究
〔区分名〕環境-地球推進 K-1
〔研究課題コード〕9901BA258
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕
〔担当者〕山形与志樹(地球環境研究センター)・亀山康子・小熊宏之・石井 敦・Georgii
Alexandrov
〔期 間〕平成11〜13年度(1999〜2001年度)
〔目 的〕京都議定書では,3条3項および3条4項により,規定された吸収源活動による吸収量を数値目標の達成のために利用することが可能となった。大気中のCO2濃度は,化石燃料消費量の削減及びCO2の吸収源となる地球上の生態系の拡大によって減少させることができる。現時点で,本格的な温暖化対策技術は実用段階にはないが,それが完成するまでの「つなぎの技術」として,吸収源活動は重要な政策オプションである。また,共同実施(JI)およびクリーン開発メカニズム(CDM)が定義されたことは,温室効果ガスが実質的に貨幣価値(カーボンクレジット)をもち,技術移転などを行うことによって他国で生じた温室効果ガスの排出削減量または吸収量を自国の排出量から差し引くこと(カーボンオフセット)が現実的なものになったことを意味する。本研究では,このような状況のもと,これまでの知見の整理やモデル開発等により,グローバルな炭素吸収量のアカウンティング方法の評価,プロジェクトの経済性評価(排出削減量および排出削減コストに関する定量的なアカウンティング)の方法論の確立,および制度設計に関する議論の発展に資することを目的とする。
〔内容および成果〕
本研究では,IMAGEモデルによる1990年以降の20年間の土地利用変化シナリオ予測と,人工衛星画像による樹冠率を考慮して独自に開発した炭素ストック変化モデルを組み合わせて,世界レベルにおけるARD活動による吸収量を推計した。IPCCの科学アセスメントは,京都議定書の吸収源活動のポテンシャルが排出になると予測しているが,本研究では,逆に最大で0.2GtC/yr(第一約束期間中)の吸収量を見込めることが示された。吸収量の適切な値の範囲は,森林成長に関する研究から得られる可能性がある。異なる樹齢の木のバイオマス量は炭素蓄積量に転換することができ,そうすることによって,炭素蓄積量変化が分かる。しかし,このようにして導かれた吸収量はかなりの幅がある。それは,同種の木が同様の条件の下で育成された場合もそうである。本研究結果によれば,初期の育成段階において高い生産性を持つ南タイガの森林は熱帯林と同じくらいの炭素を吸収する可能性がある。換言すれば,典型値の地理的分布にもかかわらず,すべての森林の炭素吸収量は0.7〜3.5tC/ha/yrの範囲に収まる。土壌中の炭素蓄積を含めても,1-4tC/haであり,この範囲は本研究で開発されたモデルの範囲と一致する。ほかに,CDMの森林吸収源の事例解析なども行った。
本研究では,プロジェクトの経済性評価を行うために,新エネルギー・産業技術総合開発機構が平成10年度に行った,共同実施等推進基礎調査の各報告書(調査件数46件)のなかから35のプロジェクトおよび植林プロジェクト
に関するフィージビリティー・スタディーをもとに,各プロジェクトの収益性を算出した。算出に当たって,投資回収年,内部収益率(IRR),正味現在価値(NPV)の各指標を算出し,プロジェクトの種類や,カーボン・クレジットの価格設定(2005年に$10/tC,以降毎年10%の値上がりを想定したケース,2005年に$10/tC,以降毎年15%値上がりを想定したケース,および毎年$20/tC固定のケース)がプロジェクトの収益性に対して与える影響を明らかにした。大部分のエネルギー関連プロジェクトでは,カーボン・クレジットによる収入によってプロジェクト全体の収益性が向上するものの,それほど大きなものではなかった。また,植林プロジェクトにおける影響度の大きさと比較した場合,大部分のエネルギー関連プロジェクトの影響度は小さかった。従って,カーボン・クレジットにより,これまで収益性の面から実現が難しかったエネルギー関連プロジェクトが多数実現可能になるとは考えにくい。また,再生可能エネルギーなどの,高価な,しかし環境負荷低減により資する技術の普及には,カーボン・クレジット以外のインセンティブの創設が必要だと考えられる。
〔備 考〕
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