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研究成果物



 

(10) CH4,N2Oのインベントリーの精緻化と開発中核技術の内外への普及

 
〔区分名〕環境-地球推進 B-51
〔研究課題コード〕0002BA228
〔重点特別研究プロジェクト名,政策対応型調査・研究名〕

〔担当者〕稲森悠平(循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)・水落元之・山田正人
〔期 間〕平成12〜14年度(2000〜2002年度)
〔目 的〕バスケットアプローチによる削減目標が設定されたことから各排出源からの排出量を示すインベントリーの充実化が極めて重要視されることとなり,IPCCではインベントリータスクフォースおよびその技術支援ユニット(TSU)を設置した。これらに対して科学技術的裏付けを与える極めて緊急かつ重要な位置づけにあるのが,排出量推計精度の極めて低いCH4,N2Oである。CH4,N2Oは人間活動の幅広い分野から排出されており,各分野における対策技術とCH4,N2O排出の関係から管理条件,運転操作条件等の変化と連動して大量に排出されたり,排出量が抑制されたりする可能性の極めて高いことが指摘されている。本研究では特に,これらの排出ポテンシャルが大きい生活系・事業場系排水処理および固形廃棄物処理の廃棄物分野についてアジア地域の開発途上国を視野に入れ,インベントリーの充実化と普及可能な対策技術の開発を行う。さらに導入効果の評価を踏まえ,対費用効果の優れた技術の普及と連動した各人為排出源におけるインベントリーの精緻化と充実化を図る研究を推進することとする。
〔内容および成果〕
(1)生活系・事業場系排水処理および固形廃棄物処理におけるインベントリーと排出抑制対策技術に関する検討
 生活排水処理のモデルとして,今後,閉鎖性水域の保全に重要な循環式硝化脱窒法に注目して運転操作条件として重要な好気槽内のDO濃度のN2O排出特性に対する影響およびこれらに密接に関連する亜酸化窒素還元酵素(NosZ)に基づく槽内汚泥中の微生物群集構造解析を行った。
 好気槽のDOの増加に伴って,硝化率も増加し,それに伴って窒素除去率も増大する傾向が認められ,DO2mg/L以上の条件では硝化率は95%以上,窒素除去率70〜80%と非常に良好な処理能が示された。一方,N2O排出は硝化の進行と共に増大する傾向が見られ,DO2mg/L付近で極大となり,その後は暫減したが,4mg/Lでは再び増加した。ここで,2mg/L付近でのピークはアンモニア酸化のDO不足によるアンモニア酸化速度不足の影響を示しており,4mg/Lでは嫌気槽へのDOの持ち込みが増加することによりORPが上昇し,脱窒の最終ステップであるN2OからN2への反応の阻害に因る増加が予想され,また,NosZ遺伝子に基づく群集構造解析からは好気槽内DO濃度が微生物群集構造に変化を与え,その結果,N2O還元能に違いが生じたものと示唆された。いずれにしろ,更なるDOの持ち込みは脱窒そのものに影響を及ぼすものと考えられる。
 さらに,脱窒プロセスにおいては,NO2からN2へ変換する中間体として溶存態のN2O増減が観察された。硝化プロセスにおいては,NO2濃度がピークを迎えるより先にN2O生成のピークを迎えることから,N2Oのアンモニア酸化過程での発生が重要であることが推察された.このように,処理の本来目的である窒素除去とN2O排出が抑制される運転操作条件は基本的に一致し,N2O排出が処理の最適化の指標となりうることが強く示唆された。
 この結果を基に脱窒プロセスでは還元過程でのN2Oの項を組み込み,硝化プロセスでは硝化量に対するN2O転換率がアンモニア酸化速度に比例し,硝酸濃度に反比例するものとしてIAWQ活性汚泥モデルを改良し,N2Oの発生・放出を予測するシミュレーションモデルを開発した。基本的にN2O生成過程を数値解析可能なことが示されたが,今後データをかさねてモデルの精度を高める必要がある。
 これまでの実験室レベルの検討で,窒素除去の効率化とN2O排出抑制効果が認められていた有用微生物としてのAlcaligenes faecalisの導入効果を実証するために実際の生活排水を用いた実規模浄化槽での検討の結果,排出量が増加する低水温下において効果が確認された。
 開発途上国で一般的な生態工学的排水処理手法のうち,人工湿地法に注目して排出量と抑制手法について人工湿地として代表的な自由水面方式と浸透方式を比較解析した結果,浸透方式の方が処理性能に優れ,かつCH4,N2O排出量も低いことが明らかになった。ここでCH4排出量は湿地表面に形成される酸化層により湿地内部からの排出量の1/3程度に削減されることが明らかになった。また,植栽される抽水植物の違いによる排出量の差異も認められ,抑制手法開発のための基盤的知見が得られた。ラグーン法についてはタイにおける現地調査を含めて排出量の検討を行い,これまで排出量の明らかにされてなかったN2Oについて流入窒素に対する変換率が2〜3%と比較的大きくなることが示された。
(2)対策技術およびインベントリーの総合評価に関する検討
 CH4,N2Oに係る温室効果ガスの排出抑制対策技術と,温室効果ガスの排出・吸収目録(インベントリー)の精緻化・充実化に係る研究の評価手法を開発した。対策技術の評価においては,その適用が及ぼす影響について排出抑制効果のほか,本来目的への影響やその他波及効果を含む幅広い視点から評価項目とそれぞれの評価基準を設定し,各項目における評価結果をポイント化するための枠組みを開発した。
 また対策技術が適用される地域の特性を反映するため,ポイントに重み付けを行う枠組みを開発した。これにより,対策技術と受入地域の特性を考慮しつつ,総合評価を行うことが可能となり,各サブテーマで開発されつつある対策技術に対して,単にCH4,N2O削減量あるいは削減に係るコストだけではなく,当該対策技術の適用における社会経済的影響など国内外への適用に関する指標を数値化して示すことが可能となった。その結果,生活排水処理における対策などインフラ整備に関連する対策技術の対策効果が高いことが示され,これらの分野での対策技術開発をCDMを視野に入れ重点化する必要性が示された。
 インベントリーの精緻化・充実化に係る研究の評価においては,IPCC Good Practice報告書に示されたインベントリーと排出源の不確実性評価との一貫性を保ちつつ,研究成果を評価する手法を検討したが,この評価手法では,新規排出源の推計や排出モデルの改善に対する評価において課題を抱えていることから,本年度は次年度以降の重点化の方向性を明らかにすることを目的として研究を類型化した上で,新たな評価の視点とその評価手法の枠組みを提案した。
〔備 考〕
共同研究者:西村 修(東北大学)・松村正利(筑波大学)・遠藤銀朗(東北学院大学)・常田 聡(早稲田大学)
共同研究機関:中国環境科学研究院・瀋陽応用生態研究所・上海交通大学・中国清華大学・タイアジア工科大学・タイカセサート大学・インドヴィクラム大学・ソウル市立大学


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