1.2 成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明
〔研究課題コード〕0105SP021
〔代表者〕笹野泰弘(成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明プロジェクトグループリーダー)
〔期 間〕平成13〜17年度(2001〜2005年度)
〔目 的〕特定フロン等によるオゾン層破壊の問題に関しては,オゾン層保護条約,モントリオール議定書等を始めとする国際的な取り決めにより,種々の対策が施されてきたにもかかわらず,依然として南極オゾンホールの年々の発現,北極域の春季オゾン破壊が進んでおり,必ずしも当初の予測通りには事態は進行していない。成層圏の気象・気候や,極成層圏雲の物理・化学過程とオゾン破壊に関する科学的知見の不足が予測と現実との差異の一因であると考えられ,オゾン層破壊機構理解の一層の深化を図り,また成層圏オゾン層の状況の監視を行うことが必要とされている。このため,環境省・国立環境研究所では人工衛星搭載オゾンセンサーや地上設置遠隔計測機器によるオゾン層の観測,データ解析研究,モデル研究等を続けてきたところである。
中期計画期間は,オゾン層保護対策の効果が現れ,成層圏ではオゾン層破壊物質濃度がピークに達し,緩やかな減少傾向に転ずる時期と考えられている。とりわけ極域(高緯度域)成層圏オゾン層は,種々の要因の影響を最も顕著に受ける領域と考えられ,また中緯度域もその影響を頻繁に受けることが想定されることから,本プロジェクトでは,高緯度域を対象にした人工衛星搭載センサー(衛星観測),及び中緯度域に設置した地上遠隔計測機器等によるオゾン層の観測を行い,オゾン層変動の監視やオゾン層変動機構の解明に資するデータを国内外に提供する。さらに,データ解析,モデリング等によりオゾン層変動機構に係る科学的知見の蓄積を図り,将来のオゾン層変動の予測,検証に貢献することを目的とする。
〔内容および成果〕
平成14年11月以降に打ち上げ予定の,環境省が開発した人工衛星搭載オゾン層観測センサー「改良型大気周縁赤外分光計U型(ILAS-U)」で取得される観測データを処理し,オゾン層研究,オゾン層監視等,科学的利用のためのデータプロダクトとして,国内外に向けて提供する。さらに,平成18年度頃の打ち上げ予定の,ILAS-U後継センサーである「傾斜軌道衛星搭載太陽掩蔽法フーリエ変換分光計(SOFIS)」のデータ処理,運用に係る地上システムを開発し,SOFISの運用開始に備える。つくば(国立環境研究所)及び陸別(陸別成層圏総合観測室)における地上からのオゾン層モニタリングを継続実施し,国際的ネットワークであるNDSCデータベースにデータを提供するとともに,国内外に向けてデータの提供を行う。極域オゾン層変動に係る物理・化学的に重要な要素プロセスについて,その機構及びオゾン変動に対する寄与の解明を行う。また,オゾン層保護対策の根拠となったオゾン層変動予測,及び最新のオゾン層変動予測の検証を行い,オゾン層保護対策の有効性評価に係る知見を提供する。以上について,次のような結果を得た。
ILAS-Uデータ処理運用システムの改訂を行い,その性能試験を実施して,十分な運用性能を有することを確認した。また,ILAS-Uデータ処理運用システムと宇宙開発事業団との間にILAS-U観測データ受信用の専用回線を設置し,ファイル転送の確認試験を実施した。SOFISデータ処理運用システムの開発研究を行った。
国立環境研究所(つくば)設置のミリ波オゾン分光計について,1996年以来のデータを解析し,高度60kmにおけるオゾンの半年周期変動を見出した。また,下部成層圏から上部成層圏までの連続観測を可能にするための広帯域化を進めた。陸別成層圏総合観測室におけるミリ波オゾン分光計観測の結果と衛星センサーSAGEUによる観測結果とを5例について比較した結果,最も位置の近い場合には,高度22km以上では10%程度の範囲で一致していた。また,2001年2月に極渦到来時のオゾン減少を捉えた。国立環境研究所(つくば)におけるオゾンレーザーレーダー観測データの再解析により,オゾン,気温,エアロゾルの鉛直分布を整合性のある形で得ることができた。
改良したMatch Techniqueを用いて,人工衛星センサーILASデータから1997年春期北極域におけるオゾン破壊量の定量化を行った。また,極渦崩壊時の微量気体成分の子午面混合の可視化を行った。さらに,ILASによるトレーサーデータを用いて,1997年南半球における極渦内空気塊下降運動の等価緯度による違いの定量化を行った。
成層圏プロセスを取り入れた大気大循環モデル(AGCM)を用いて,火山噴火により大量のSO2が成層圏に注入された際の影響について数値実験を行い,ピナツボ火山噴火後のエアロゾル分布の時間変化などを比較した。その結果,硫酸エアロゾルによる光学的厚さの時間変化などで観測データが再現されたほか,火山噴火の数年以上のタイムスケールの力学場への影響を評価するには,硫酸エアロゾルの増加に伴う化学的な影響を無視できないことを明らかにした。
硫酸エアロゾル上での化学反応によるオゾン破壊にかかわる化学種の分配を見積もるために,不均一反応の反応データの整備を進めている。その中で蟻酸が,ホルムアルデヒドを介したHNO3→NOxの不均一変換過程の良い指標になることを見いだした。
AGCMと平行して開発を進めている化学輸送モデルでは臭素系の化学反応の導入を進めているほか,極域での極渦の崩壊に伴う空気塊が中緯度空気と混合する過程の再現実験への応用も試みた。その結果,N2Oが空気塊のトレーサーとして追跡できることが分かり,その解析から極渦崩壊後の北半球高緯度域での水平渦拡散係数を見積もることができた。
〔関連研究課題〕
9901BA156 オゾン層の回復を妨げる要因の解明に関する研究 70p.
0103BA163 衛星データを利用したオゾン層変動の機構解明に関する研究 73p.,251p.
0101BA286 オゾン層破壊の将来予測のためのモデル開発および検証に関する予備的研究 74p.
9903AE158 3次元モデルによる成層圏光化学-放射-力学相互作用の研究 78p.
0105SP021 成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明(再掲) 78p.,251p.
0001AE159 衛星センサー(ILAS/ILAS-II)データ処理におけるエアロゾル・非ガス成分及びガス成分の同時算出に関する研究 250p.
0002AE162 衛星観測による酸素分子Aバンドデータからの気温・気圧の高度分布導出に関する研究 250p.
0105AE259 大気衛星観測データの放射伝達解析に関する研究 251p.
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