1.2 化学環境研究領域
人間活動拡大に伴って地球的な規模で進行するいろいろな物質の循環とそれに基づく環境の変化,また複雑化,多様化する有機物質の汚染とその環境リスクを理解し,それらの課題を解決するため科学的知見を集積することが重要である。このため化学環境研究領域においては,環境における物質の計測,地球レベル或いは地域レベルでの動態の解明,及びその生物学的な意義の解明に関する研究を行っている。
基盤研究部門である化学環境領域では,以下の4研究室において,それぞれ独自の研究がなされているが,研究者の多くは地球環境関連のプロジェクトや環境ホルモン,DEP等の有害物質関連のプロジェクトにも参加して研究を行っている。
計測技術研究室は,新たな環境計測技術の開発に主眼がおかれ,環境汚染物質の高感度化等,計測技術の高度化を進めた。常温動作可能のX線検出器の開発,窒素同位体比測定方法,及び黄砂モニタリング手法について研究開発を進めた。
計測管理研究室では,ダイオキシン類の環境モニタリングについて,土壌,底質,水生生物,大気試料などの分析法の最適化,環境標準試料NIES
CRM No.22「土壌」を用いた精度管理などの研究を行った。また,有害大気汚染物質のGC/MSによる常時監視における精度とその管理,微小空気浮遊粒子の各種モニタリング法の比較などの研究を行った。
動態化学研究室では,環境中元素の存在状態と動態の解明並びに加速器質量分析法の開発研究を進めた。セレンの新たな化学形態分析法の開発,岩石の風化過程の解明,X線顕微鏡による環境変動解析のための装置開発,生態系における過去の物質循環の復元ための安定同位体と放射性炭素測定を組み合わせた手法の開発などを推進した。
生態化学研究室では,有機スズ汚染の現状とそれによる巻き貝の異常に関する研究を行い,アワビにおける雄性化現象を明らかにした。
以上の研究のほか,上席研究官,主席研究官により独自の研究展開が図られた。すなわち,Li+イオン付加を利用した新たな質量分析手法の開発,分子軌道計算によるダイオキシン類の電子構造と毒性の相関の解明,ハロゲン化メチル等地球的規模での生物起源の揮発性炭化水素の動態,バイカル湖底泥に反映される地球環境の変動解析などの研究を行った。
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