1.15 地球環境研究センター
地球環境問題は,近代科学のめざましい発展のもと,人口の増加・エネルギーと資源の大量消費などにより,過去に類のない繁栄を享受しているところに起因している。こうした状況に直面し,地球環境問題解決の国際的機運が高まっている反面,科学的理解が不十分なため,実際の対策をとる国際的・国内的合意が形成されにくいのが現状である。例えば,地球温暖化に関しては気候変動枠組み条約(UNFCCC)が1992年に締結され,地球温暖化防止京都会議(COP3)で削減目標が設定されたが,科学的根拠が不十分であることなどを理由に米国が批准を拒み,実効のある削減が危うくなっている。実際,けっして離脱を正当化するものではないが,例えば議定書で取り決められた森林の二酸化炭素吸収については科学的根拠に基づいた評価は困難であること,将来の二酸化炭素濃度安定目標も未だ科学的に十分な根拠を持って提案できていないこと,将来どこでどのような影響が出るかも不確実であるなど,研究の立ち後れは明白である。
地球温暖化や成層圏オゾン層などの研究プロジェクトは,上記のような地球環境問題のある分野で,限られた期間に目的とする課題を遂行するものである。地球環境研究センターはこれらと連携しながら,もっと長期的視点で知的基盤を整備する研究として,以下の業務を実施している。
地球環境問題は容量的な問題であり,長期の人為活動の蓄積が徐々に地球規模の問題を引き起こしている。そのため大気,海洋,生物圏のモニタリングを実施し,その長期の変動を把握するとともに,それから変動の要因を抽出しメカニズムを解明する研究にデータを提供している。将来を予測するためのモデル構築に必要な地理的情報や社会・経済的データを提供し,また,スーパーコンピュータを整備し地球環境の変動を予測するモデル研究を支援している(モニタリング,データベース,スーパーコンピュータの提供)。
地球環境問題の第二の特徴は,問題が相互に強くリンクしていることである。たとえば二酸化炭素放出源となる森林伐採は種の多様性も減少させているし,温暖化の進行は脆弱な自然を破壊し,種の多様性を減少させると予想されている。また温暖化による海面上昇は農地を奪い,更なる森林の農地転用が進むことが予想される。従って,地球環境問題の研究においては俯瞰的・総合的視点で推進することが必要であり,地球環境研究センターは地球環境研究者の相互理解を増進し,国の内外の共同研究を促進することを大きな柱としている(研究の総合化)。
地球環境問題の第三の特徴は,あらゆる年齢・階層・職業の人々が,地球環境問題の深刻さを理解し,それを解決するために努力することを必要としていることである。地球環境研究センターは研究成果を広く理解してもらうために,分かりやすい広報活動にも力を尽くしている。
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