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研究成果物


2.9 革新的環境監視計測技術先導研究


1.大気汚染・温暖化関連物質監視のためのフーリエ変換赤外分光計技術の開発に関する研究(初年度)


〔担当者〕
大気圏環境部 中根英昭・畠山史郎・杉本伸夫
地球環境研究センター 井上 元
     下線は研究代表者を示す


〔期 間〕
平成12〜14年度(2000〜2002年度)


〔目 的〕
 地域規模の大気汚染の深刻化と地球規模の大気汚染への寄与の増大という二つの側面から,大気汚染・温暖化関連物質の実態把握と対策の重要性はますます大きくなっている。多様な大気汚染物質の動態を把握するためには,これらを同時に観測することが重要である。温室効果ガスについては,ソース・シンクの情報を含む鉛直分布の連続測定が重要である。
 上の要求を満たす測定手法として,フーリエ変換赤外分光(FTIR)計測が有力な候補である。特に最近操作性が良好になった高分解能FTIR装置の持つ大きな情報量を活用するならば,多成分の大気汚染物質の同時観測をオープンパスで行うこと,温暖化関連物質の高度分布の観測を行うことの可能性が開ける。本研究では,上の可能性を現実化する測定手法を提案し,これについて実際に高分解能FTIR装置を用いた実験を行い,測定手法の有効性を実証することを目的とする。


〔内 容〕
 本研究では,オープンパスの長光路吸収測定による大気汚染物質の多成分同時観測について,水蒸気等の干渉等の問題を排除するためのハードウェア的,ソフトウェア的技術を開発する。また,赤外吸収スペクトルの幅が気圧(高度)によって変化すること等を利用して,大気汚染物質や温室効果ガスの鉛直分布を求める技術を開発する。具体的には,(1)長光路吸収法による大気汚染物質の同時多成分計測技術の開発,及び(2)太陽光源赤外吸収スペクトルを用いた温暖化関連物質の鉛直分布計測技術の開発の二つのサブテーマによって研究を行う。
(1)長光路吸収法による大気汚染物質の同時多成分計測技術の開発
 本サブテーマでは,赤外光源から放出された赤外光を水平に大気中に放出した後にリトロリフレクターによって折り返し,光路中の大気中の汚染物質によって吸収させた後にFTIR装置に導入して吸収スペクトルを観測する。観測された多成分の気体の吸収スペクトルを個々の吸収スペクトルを用いて分離し,個々の気体の濃度を導出する。個々の気体の濃度を導出するプログラムの開発,水蒸気等による干渉が分解能によってどのように変化するか等に関して検討する。
(2)太陽光源赤外吸収スペクトルを用いた温暖化関連物質の鉛直分布計測技術の開発
 本サブテーマでは,太陽を追尾して太陽光をFTIR装置に取り込み,太陽と地上の間の大気による吸収スペクトルを観測する。気体濃度の鉛直分布を導出する。測定対象とする気体は,二酸化炭素,一酸化炭素等である。


〔成 果〕

 サブテーマ(1)長光路吸収法による大気汚染物質の同時多成分計測技術の開発,においては,小型FTIRの導入と,送受信光学系の試作を行った。FTIR装置は最高分解能0.2cm-1のフィールド観測用の分光計である。図1に長光路吸収実験のブロック図を示す。実験システムはFTIR分光計,送受信望遠鏡,リトロリフレクターからなる。光源から放出された赤外光の50%は,ハーフミラーで副鏡側に反射され,15cm凹面鏡によって平行になり,平面反射鏡からリトロリフレクターに向けて送信される。リトロリフレクターはどの方向から来た光でももと来た方向に反射する鏡である。赤外光は送受信望遠鏡とリトロリフレクターの間にある大気汚染物質や温室効果ガスによって吸収される。リトロリフレクターに反射されて戻ってきた光を平面鏡で凹面鏡に向けて反射し,副鏡,ハーフミラーへと導く。受信光の50%がハーフミラーを通り抜けて楕円面鏡によってFTIR分光計に入射し,分光される。本年度は,FTIR分光計及び送受信望遠鏡を整備した。送受信望遠鏡は,鉛直方向の回転軸によって方位角を,水平方向の回転軸によって仰角を変化させて掃引できるように設計されている。掃引しても,副鏡からFTIR及び光源に至る光路に変化はない。また,送受信光が同一の光路を通るため,大気の揺らぎの影響を受けないようになっている。
(2)太陽光源赤外吸収スペクトルを用いた温暖化関連物質の鉛直分布計測技術の開発,においては,高分解能赤外吸収スペクトルから大気微量成分の鉛直分布を導くための解析ソフトウェアSEASCRAPEを導入した。本ソフトウェアはこの他,地上長光路吸収実験の解析や大気微量成分からの赤外放射スペクトルの解析も可能な高機能ソフトウェアであるが操作のための設定が複雑で,実際の実験条件に対応する計算を行うための設定等に困難な点がある。本年度は,大気微量成分の高度分布を与えて,太陽光源吸収スペクトルのシミュレーションを行うフォーワード計算を実施して,良好な結果を得た。


〔発 表〕f-84


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