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研究成果物



2.7 開発途上国環境技術共同研究


2.環境低負荷・資源循環型の水環境改善システムに関する調査研究(初年度)

−バイオ・エコエンジニアリングを活用した富栄養化抑制型適正水環境改善技術の共同開発に関する研究−

〔担当者〕
地域環境研究グループ 稲森悠平・水落元之
中国環境科学研究院 陳  復・金 相山・呉  卓
清華大学 黄  霞・桂  泙
東南大学 呂 錫武
上海交通大学 孔 海南・朱 南文
江蘇省環境科学研究所 菊  華
タイ環境研究研修センター Pornthip Puncharoen・Piya Sansanayuth
アジア工科大学 Chongrak Polprasert・Preeda Parkpian・Kensuke Fukushi
ベトナム国立ハノイ大学 Nguyen Thi Loan
客員研究員 7名
     下線は研究代表者を示す


〔期 間〕
平成12〜13年度(2000〜2001年度)


〔目 的〕
 産業活動の活性化,人口増加により各種排水による水域の汚濁が顕在化してきている。特に,我が国のみでなく中国,タイ王国の富栄養化湖沼での水源において,従来の水質汚濁のみではなく,WHOの飲料水質ガイドラインに位置づけられる強い毒性を示すミクロキスチンを含有するアオコの異常増殖がみられるようになってきており,その緊急対策が重要と考えられる。それゆえ,水資源の保全のための有毒アオコの実態解明,対策の確立・強化はこれらの国の水環境を修復していく上で極めて重要な位置づけにある共通課題である。しかし,国情に適した富栄養化対策は発生源対策・直接浄化対策ともにその対策技術の確立は緊急を要している。このような状況を鑑み,本研究では微生物,水生植物などの有用生物の機能を最大限活用した生活排水等の小規模分散型の生物処理システムとしてのバイオエンジニアリングと自然生態系に工学の技術を導入した浄化システムとしてのエコエンジニアリングの組み合わせの最適化を図ることにより,亜熱帯地域および温帯地域における最適な水質改善システムの技術開発と,開発した技術を普及させる上で必要な制度づくりの支援化技術を確立することを目的とすると同時に,水環境の悪化を累進的に加速している生活系,事業場系汚水等に由来する富栄養化の対策のあり方に対し,従来のエネルギー多消費型の発想を脱却した環境低負荷型社会システムを構築するための窒素,リンの発生負荷,効果的対策等について循環型社会づくりに貢献する産業の活性化にも資する技術の活用方策の確立を図ることを達成目標として研究を推進する。


〔内 容〕
(1)水質浄化,有毒藻類分解に貢献する微小動物をスクリーニング・分離・同定し,環境条件と捕食速度および有毒物質の分解速度との関係を調べ,分解技術確立の上での基礎的知見を得るとともに,保存と分解能の強化につながる検討を行う。
(2)再資源化可能な水耕栽培植物の探索と分離を行い,窒素・リンの吸収速度等の評価を行うとともに,浄化の重要な因子である水耕栽培植物の根圏の発達の度合いを考慮に入れた導入手法の最適操作条件の確立を行う。
(3)水生植物と水耕栽培植物の最適組み合わせににより,資源化可能な水耕栽培植物を活用した汚水処理システムおよび湖沼水の直接浄化技術の開発を行うために,前段の水生植物における浄化能力と後段の水耕栽培における生産効率を最適化させるための検討を行う。
(4)高度簡易分散型生活排水・汚泥処理システムとしてラグーン処理等の現地で広く用いられている処理手法に注目し,栄養塩類除去を可能とするために嫌気・好気条件等の組み込みの評価を行うと同時に,適切な設計操作条件等を確立するためのパラメーター解析を行い,適正改善手法の確立を図る。
(5)環境低負荷・資源循環社会に資する環境計画・管理情報システムの構築に関して,環境計画・管理に必要な水循環・物質循環機構からみたデータベースの構築手法とこれらの行政施策への反映方策のあり方を明らかにする。
(6)バイオ・エコエンジニアリングを導入した環境低負荷・資源循環型の環境改善技術の適用に関して,必要な要素技術の処理性能,建設コスト,維持管理性,適用に係る制度等について総合的に検証する。
(7)窒素,リン対策の効果と経済性を踏まえた最適削減,資源循環,生産の適正化の評価に関して,上記(1)〜(7)の検討結果を基に対費用効果を踏まえた最適面整備のあり方を効果的負荷削減の達成のための国情に適した行政施策のあり方を含めて検討する。


〔成 果〕

 本研究では前年度実施したFSにより基盤整備が成されたバイオ・エコエンジニアリングを活用した富栄養化抑制型適正水環境改善技術を開発する上でのタイ王国,中国の大学や公的研究機関との共同研究体制による現地調査および関連する調査研究により以下の結果を得た。

(1)アオコ産生毒の質と量および有用微生物による分解特性の評価・解析
 タイ王国のバンプラ貯水池では個体数は低いもののMicrocystis aeruginosaが優占していることが明らかとなった。なお,バンプラ貯水池の採水を行った5地点の全ミクロキスチン(ミクロキスチン-RR,-YR,-LR体の合計値)の平均値は0.015μg・l -1であり,WHOのガイドライン値に比べて低い値であるが,雨季において雨量が多く水位が上昇していたため,藍藻類の増殖が遅れていることが原因として推察された。窒素・リン比は平均で24と高く,ミクロキスチンの発生を抑制するには窒素の削減が極めて重要であることが示唆された。
 ミクロキスチンの産生特性を解析した結果,Microcystis属の細胞あたりのミクロキスチン産生能に対する水温の影響が著しく,水温上昇に伴って産生量が増大する傾向が見られた。また,細胞内のミクロキスチン含有量はMicrocystis属の細胞の対数増殖初期において最も多く,増殖と共に減少することが明らかになった。
 ミクロキスチン分解能を有する霞ヶ浦から単離されたSphingomonas sp. はミクロキスチンRR,YR,LRともに分解能を有し,LRにより誘導された分解活性によりRR,YRの分解能も誘導されるため,いずれも同一の酵素により分解されるものと考えられた。また,LR分解時にRRによる競合阻害が見られることからLRとRRは構造は異なるものの同一の酵素反応により分解されているものと推測された。ここでミクロキスチンは既知の蛋白質分解酵素群には安定であることからSphingomonas sp.などによる特異的な酵素が分解に大きく寄与していると考えられた。

(2)再資源化可能な水耕栽培手法に関する評価・解析
 水耕栽培浄化手法における物質収支と経済性について検討した結果,クレソンを用いた場合,窒素収支は底泥沈殿量45%,植物吸収量25%,脱窒量および水中昆虫・小動物捕食量と推定される部分が30%と算出された。また,リン収支はそれぞれ77%,18%および5%であり,水路前半部でのリン除去量が卓越したことからSS中に含まれるリンが底泥として沈殿するものと考えられた。いずれにしろクレソンの場合,窒素・リンの除去は沈殿および植物吸収により行われることが示唆された。 タイ王国アジア工科大学の共同施設において実施しているクウシンサイ,クレソン等10種以上の植物を活用した水耕栽培浄化システムにおいて,これらの種は排水の特性や目的に応じて栽培できることを明らかにしてきたが,植栽面積を100m2 以上とすることにより鳥が飛来し害虫等を捕食するため高次の食物連鎖系が形成され,汚濁物質の系外排除と処理の安定化が同時に達成できることが新たに示された。タイ王国においては100m2の水耕栽培浄化システムを建設するのに必要な費用はクレソンの283kgの小売価格に相当することが明らかとなり,このシステムが年間最低1,000kgの収穫は期待できるので生産者価格が1/3でも水を浄化しながら利益を上げる可能性の高いことが明らかとなった。

(3)高度簡易型生活系排水処理手法に関する解析・評価
 タイ王国,中国などではラグーン処理が多く用いられており,これまで輪虫類,貧毛類等の微小動物による食物連鎖の安定化や有機物除去の効率化を明らかにしてきたが,より高次の捕食者である魚類の存在の影響についてグッピーを用いて検討した結果,バイオマスから見た物質収支のうち約20%が魚類に移行するものと試算され,汚泥減量化における魚類存在の有用性が示された。
 嫌気槽−土壌トレンチを一組とした土壌処理システムを2段に組み合わせることによる省エネルギー・省コスト型の処理システムを提案してきたが,更なる効率化を目指して3段に組み合わせたシステムについて検討した結果,BOD,COD,SS,T-NおよびT-Pがそれぞれ2,5,2,4,0.2mg・l-1以下といった極めて良好な処理システムが構築された。

(4)バイオ・エコエンジニアリングを導入した環境低負荷・資源循環型の環境改善技術の適用の総合化に関する検討
 霞ヶ浦を対象流域とした汚濁負荷量,水質データ及び既存汚水処理要素技術の処理性能,建設コストに関する調査を実施しつつ,データベース化を進めた。また,特に「窒素・リンの循環型回収技術」に関連して,生活系汚水に対する窒素除去・リン回収型浄化槽普及のためのモデル事業を通じて,流域自治体と共同で技術上,制度上の検討を行った。さらに「生ごみ等の廃棄物の効率的堆肥化技術」に関連して,ディスポーザー使用に対する汚水処理施設での受入も含め,堆肥化システム等の技術的検討を行い,費用対効果を踏まえた流域内の水環境改善技術の適切な導入・整備のあり方を明らかにするモデル構築のための基盤的な検討を実施した。


〔発 表〕B-11〜13,16,17,19,21,22,b-12,15,16,18,20〜22,28,29,34,35,42,48,49,52〜57,60,61,67〜70,77〜81,91〜94,98,101,103


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