2.6 特別研究
1.廃棄物埋立処分における有害物質の挙動解明に関する研究(最終年度)
〔担当者〕
| 地域環境研究グループ |
: |
森田昌敏・安原昭夫・橋本俊次・山本貴士・西川雅高 |
| 化学環境部 |
: |
中杉修身・白石寛明・白石不二雄 |
| 客員研究員 24名 |
| 下線は研究代表者を示す |
〔期 間〕
平成10〜12年度(1998〜2000年度)
〔目 的〕
廃棄物は人間活動の増大・物質文明の発達に伴い,発生量が増大するとともにそこに含まれている化学物質についても多様な広がりを見せており,今後の人間活動の根幹に係る緊急かつ重大な環境問題となっている。廃棄物の焼却処理については,対策技術の進歩により解決の糸口が見えつつある。一方,廃棄物の埋立処分については浸出水中に含まれる化学物質や大気中に揮散していく化学物質についての実態は明らかにされたが,それらの化学物質がどのような機構で溶出あるいは生成しているのか,生物への影響がどの程度であるのか,という点についてはほとんど不明である。本特別研究では埋立処分に的を絞り,埋立廃棄物に含有される化学物質と浸出水に溶出してくる化学物質を調べて,埋立地での化学物質の挙動を解明するとともに,埋立地からの浸出水が生物に与える影響を明らかにするための手法を開発する。
〔内 容〕
生態系に影響を与える可能性の高い有害化学物質が廃棄物中にもともと含まれていたものか,化学的あるいは生物的作用で新たに生成したのかを明らかにし,今後の廃棄物処分のあり方を検討するために,以下の3課題で研究を実施した。
課題1 埋立廃棄物中の有害化学物質の簡易モニタリング法の開発
環境汚染につながる恐れのある有機成分を対象として,1)廃棄物中に含まれる揮発性物質をGC/MSで分析し,同定・簡易定量できるシステムを開発する。2)マイクロ波加熱による迅速抽出法およびGC/MSによる簡易分析法を用いて廃棄物中に含有される有害化学物質の存在の有無と濃度レベルの把握を行う。
課題2 埋立地における有害化学物質の挙動解明に関する研究
廃棄物埋立地浸出水から高濃度あるいは高頻度で検出される化学物質を中心に研究を進める。1)廃棄物埋立地からの1,4-ジオキサンの排出実態を把握し,その起源について推測する。2)モデル埋立実験での観測結果を解析し,埋立地内で起こっている化学反応について考察を行う。3)焼却灰からのダイオキシン類の溶出挙動について,前年度からの測定を継続し,溶出パターンの変化を調べる。
課題3 埋立処分に起因する有害化学物質の生物影響評価に関する研究
廃棄物埋立処分場の浸出水を試料として過去2年間行ってきた細胞毒性や遺伝毒性と浸出水の化学性状との関係について,総合的な解析を行う。
〔成 果〕
(1)埋立廃棄物中の有害化学物質に係る簡易モニタリング法の開発
焼却灰に含有されるクロロフェノール類と多環芳香族炭化水素類(PAH)をマイクロ波加速抽出法で迅速に抽出するための基礎的研究を行った。クロロフェノール類の混合物を焼却灰に添加して,アセトン/ヘキサン溶媒でマイクロ波加速抽出を行った。クロロベンゼン類とは違って,クロロフェノール類は塩素数の増加につれて抽出率(回収率)が低下する傾向が観察された。抽出溶媒についても検討を行ったが,改善されなかった。また,抽出温度を高くすると,抽出率は低下した。原因はまだ解明できていないが,クロロフェノール類がマイクロ波加熱で何らかの反応を起こしている可能性がある。PAH16種類を焼却灰に添加し,回収実験を行った。ソックスレー抽出法との比較では,分子量の小さいPAHではソックスレー抽出法の抽出率がやや低く,分子量の大きいPAHではマイクロ波加速抽出が低いという結果になった。PAHについては溶媒系の変更やサロゲートの使用などにより,実分析に適用可能と判断した。
新しい方法として,廃棄物を蒸留水と混合して,精油定量器で1時間半,蒸留抽出する方法を検討した結果,55物質についてほぼ80%以上の回収率で抽出できることがわかった。再現性も十分に高く,実用に供することが可能である。
(2)廃棄物に含まれる揮発性有機化合物類の分析法の開発
埋立廃棄物に含まれる揮発性有機成分を迅速にスクリーニングする方法として,前年度開発した固相マイクロ抽出における定量性と再現性を調べた。対象物質は,揮発性有機化合物18種類,安定剤1種類,可塑剤15種類,炭化水素44種類,多環芳香族炭化水素類26種類の計104種類を使用した。これらのうち,回収率が80〜140%,相対標準偏差が20%以下の物質は25物質のみ(1,4-ジオキサン,アジピン酸エステル類,スチレン2量体及び3量体,ナフタレンなど)であった。フタル酸エステル類は検量線が直線から外れる傾向を示したが,これは吸着が原因と考えられる。定量性,再現性が認められた物質について,実試料での測定を試み,実用性の検証を行った。
(3)モデル埋立実験槽における化学物質の挙動
一般廃棄物焼却場3カ所で採取した焼却主灰とA県の産業廃棄物処分場で採取した廃プラスチックを細断したものを混合し,ガラス製円筒に充てんした。コントロールとして,同じ焼却灰とテフロンチップを混合したものを同じサイズのガラス円筒に充てんした。週2回,ガラス円筒の上部から蒸留水を注ぎ,円筒下部から流出してくる浸出水を採取し,各種測定を行った。測定項目はpH,不揮発性有機炭素,化学的酸素要求量,電気伝導度,懸濁物量,無機陰イオン,無機元素,有機成分である。測定結果については現在解析中であり,最終的な結論は得られていない。不揮発性有機炭素は廃プラスチックを埋め立てたガラス円筒からの浸出水が高い値を示した。pHについてはコントロール埋立では11〜12であったが,廃プラスチック埋立では10〜11と低い値を示した。これは予備埋立実験の時と同じ状況であり,廃プラスチックから溶出した成分が焼却灰のアルカリと反応したことを示している。モデル実験では有機リン酸エステル類やフタル酸エステル類の加水分解が確認されており,同様の反応が生じた可能性がある。リン酸エステル類やフェノール類の溶出挙動は漸次的な減少傾向をたどっている。
(4)廃棄物埋立地浸出水中の1,4-ジオキサンの挙動
B県とC県の埋立地浸出水と処理水を毎月サンプリングし,そこに含まれる1,4-ジオキサンを分析した。B県の処分場はすでに閉鎖されている。すべての試料からジオキサンが検出されたが,濃度は低かった。一方,C県の処分場は廃プラスチック専用の処分場で,現在も運転中である。こちらも全試料からジオキサンが検出され,濃度は数ppbのレベルであった。埋立物である廃プラスチック破砕物を採取して,溶出試験をした結果,すべてから高濃度のジオキサンが検出された。また,焼却灰の水溶出液すべてからジオキサンが検出された。一方,産業廃棄物処理場で採取した未処理の廃プラスチックの水溶出液からはジオキサンが検出されなかった。これらのことから,埋立用に廃プラスチックを加熱圧縮する工程や焼却の際の熱分解でジオキサンが生成している可能性が高いと思われる。また今回の調査で,水処理によってもジオキサンは分解されにくいことが再確認された。
(5)焼却灰中のダイオキシン類の浸出水への溶出
前年度からの継続実験で,主灰および飛灰からの溶出濃度を測定した。両方の濃度はほぼ同レベルで推移しているが,異性体パターンにはかなりの差が観察された。現在,パターンの解析を実施中である。
(6)埋立地浸出水の生物影響評価に関する研究
過去2年間にわたって採取し,各種のバイオアッセイを試みた結果を総合的に解析している段階である。
〔発 表〕B-109,111,115,b-285,287,290,291,295
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